そもそもなぜアメリカ・ドルが世界の基軸通貨なのか?
そもそもなぜ、借金だらけのアメリカの通貨であるドルが、世界経済の基軸通貨になっているのでしょうか?それは、第二次世界大戦後の世界経済レジームがアメリカを中心につくられたからです。
アメリカは、第一次世界大戦、第二次世界大戦ともに国土が戦災を受けませんでした。そして、第一次世界大戦、第二次世界大戦ともに、連合国側に大量に軍需物資を売りつけ、世界の金の7割を保持するまでになったのです。
アメリカはそういう我が世の春を謳歌する一方で、世界大恐慌から第二次世界大戦に至る世界経済の混乱では痛い思いもしました。世界大恐慌の後、イギリス、フランスなどがブロック経済を敷いたため、世界市場の大半が閉ざされたのです。
アメリカの大量の農産物や工業製品は行き場を失うことになり、アメリカ経済は大きなダメージを受けました。そのためアメリカは戦後世界の経済覇権を握り、アメリカを中心とした自由貿易圏を世界中に広げようとしたのです。
第二次世界大戦の終盤の1944年、アメリカのブレトン・ウッズで戦後の国際経済の新しい枠組みが作られる会議が開催されました。かの有名なブレトン・ウッズ会議です。
アメリカが、世界金融の中心になったのは、このブレトン・ウッズ会議からだといえます。アメリカはこの会議において、「ドルを金と兌換させドルを世界の基軸通貨とする」ということを強行に主張しました。
「アメリカは保有している大量の金を背景にドルと金の兌換に応じる」「ドルはその信用を背景にして、世界貿易の基軸通貨となる」ということです。
第二次世界大戦前、欧米諸国は、通貨の価値と金の保有量を連動させる「金本位制」をとっていました。金本位制では、通貨と金の交換価値が定められており、各国の中央銀行は、求められれば通貨と金を交換していました。そうすることで、通貨の価値を保証したのです。
しかし、世界大恐慌などで金の流出が続いたため、各国は相次いで金の兌換を停止させます。金本位制のルールが壊れ、世界貿易は大混乱をきたしたのです。
その問題を解消するため、アメリカは、世界中の国に対し、「ドルと金の兌換を保障するから、今後の世界貿易はドルを基軸通貨として使うべし」と主張したのです。
しかし、ドルを世界貿易の基軸通貨とするならば、世界中の国が、貿易に際してドルを調達しなければならず、必然的にアメリカは「世界の銀行」としての地位に君臨することになります。
それまでの世界の基軸通貨はイギリスのポンドであり、イギリスとしてはアメリカの主張は簡単に受け入れられるものではありませんでした。
が、第二次大戦後のアメリカとイギリスの経済力の差は歴然であり、というよりイギリスは戦後復興をアメリカの支援に頼らざるを得なかったため、最終的にアメリカの主張が通ったのです。
こうして「ドル金本位制」とも呼べる、戦後の世界金融の仕組みが出来上がったのです。
戦後の世界金融レジームでは、アメリカ以外の国々の紙幣は金との交換はしません。しかし、各国の紙幣とドルとの交換レートが決まっており、ドルが金との交換を保証しています。つまり、ドルとの交換レートが定まっている国は、間接的に金の交換を保証しているということです。そうすることで、自国の通貨の安定を保っていたのです。
つまり、世界中の国々は、自国の金保有量が少ないので、金本位制を採ることはできませんが、アメリカ・ドルを頼ることで間接的に金本位制を採るということです。
しかし、この「ドル金本位制」はそう長くは続きませんでした。ブレトン・ウッズ会議から、わずか二十数年後に崩壊してしまうのです。
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