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「金・ドル本位制」は長くは続かなかった

なぜ「ドル金本位制」が、長く続かなかったかというと、第二次世界大戦後、アメリカ経済が急速に落ち目になったからです。

第二次世界大戦終結時まで、アメリカが世界経済の中で圧倒的な強さを誇っていました。だからこそ、世界の金の7割を保持するまでになっていたのです。

アメリカは、資源もあり、豊穣な農地もあり、しかも世界最先端の工業国でした。世界貿易においてこれ以上ないというほどの強みを持っていたのです。

しかし、絶対的勝者に見えたアメリカ経済は、第二次世界大戦後、あっけなく落ちていくのです。1950年代後半から西側のヨーロッパ諸国(特に西ドイツ)や、日本が経済復興してきて、アメリカ製品のシェアを奪うようになりました。

アメリカは、その経済的繁栄により人件費が高くなっており、また奢りにより技術革新も怠るようになっていました。これまで無敵の強さを持っていたアメリカの輸出力は大きく鈍り、1971年には貿易収支で赤字に転落することが確実の状況になってしまったのです。

輸出力が鈍るとともに、アメリカの金は急激に流出するようになります。しかも、アメリカは第二次大戦後、東西冷戦の影響で、世界中に軍事支援、経済支援をしたり、いくども軍事行動をしていました。それも金の流出を加速させたのです。

アメリカが世界中にばら撒いたドルが金と兌換され、アメリカの金が急激に流出し始めたのです。いったんアメリカの金が流出しはじめると、ドルを保有している誰もが危機感を抱き、金との兌換を急ぐことになります。金の兌換が停止される前に、ドルを金に換えておこうということです。

アメリカの金流出は、1950年代からすでに始まっており、1958年の一年間だけで、約2,000トンが国外に流出しています。60年代に入ると、アメリカの輸出の不振などで、さらに流出が加速しました。1970年ごろにはアメリカの金の保有量は8,000トン程度になってしまっていました。第二次大戦終結時のアメリカの金保有量は、約2万2,000トンだったので、25年程度で60%が流出したことになります。

このままの勢いで流出が続けば、アメリカの金が枯渇してしまいます。前述したように、1944年のブレトン・ウッズ会議では、ドルが金との兌換に応じるということで、世界金融のシステムが保たれるようになっていました。当時のアメリカは世界の7割の金を保有していたので、金兌換を続けることができたのです。

「ドル=基軸通貨」というのが、戦後の国際金融のレジームです。もし、このまま金の流出が続けば、このレジームが根本から崩れることになります。そのため、1971年、アメリカのニクソン大統領は、ついにアメリカ・ドルと金の一時的な交換停止を発表しました。これがいわゆるニクソン・ショックです。

このニクソン・ショックの「ドルと金との兌換一時停止」は、「一時停止」にとどまりませんでした。ドルと金の兌換は、その後、現在に至るまで再開されておらず、事実上のドル・金の兌換は行わないことになったのです。

戦後の世界金融レジームは、アメリカ・ドルと金が交換されることによって、成り立っていたものです。だから、アメリカの金兌換停止により、このレジームは根本が崩壊したといえるのです。いわば、アメリカという世界の中央銀行は、不渡りを出してしまったようなものなのです。

しかし、この不渡りを出してしまった世界の中央銀行は、未だに営業を続けているのです。しかも、不渡りを出した1971年よりもはるかに経営状態は悪化しているにも関わらず、です。

なぜ、不渡りを出したアメリカ・ドルが未だに世界の基軸通貨なのか?この矛盾は、今後の世界経済にどんな影響を与えるのか?ということを次回、追及したいと思います。

(本記事はメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2025年7月16日号の一部抜粋です。「税金はほんのちょっとの知識で簡単に安くなる」「節税はポイ活よりはるかに効率的」「節税は一度やったらやめられない」を含む全文はご登録の上ご覧ください。初月無料です)

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