翻訳サービスDeepLは日本を中隔市場と明言し、本気で日本市場を取りに来ていることを明らかにしています。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんは驚きをあらわにしています。石川さんは自身のメルマガの中で、DeepLが描いている未来像と、差別化の要であるスマートフォンと翻訳機能の関係などに焦点を向け、次にタッグを組むメーカーに期待を寄せています。
DeepLが日本を中核市場として企業向け機能を強化―-翻訳はオンデバイスか、それともクラウドか
DeepLは2025年7月23日、最新テクノロジーと日本市場戦略に関する説明会を開催。DeepLは日本市場をグローバルのなかでも中核市場と位置づけ、企業向け機能やパートナー連携を強化してきた。
2024年11月に発表された「DeepL Voice」ではテキスト翻訳に加えて、リモート会議や対面での対話に対応したリアルタイム音声翻訳に対応。「DeepL Voice for Meeting」では現在、Microsoft Teamsと連携するが、今後はZoomにも機能提供されるという。
説明会で興味深かったのが「どこで処理しているか」という点だ。CTOのセバスチャン・エンダーライン氏によれば「主に北欧」なのだという。
実際にDeepL Voice for Meetingのデモを見せてもらったが、比較的、サクサクと翻訳してくれた。これが北欧にあるクラウドで処理しているとは思えないほどであった。しかし、北欧ではなく日本国内で処理すれば、さらに遅延は短くなるのではないか。
セバスチャン・エンダーライン氏は「各市場の需要に合わせて世界的に分散させていく計画はある」とし、日本からの需要が高くなれば、北欧以外の場所にサーバーを置く可能性もあるという。
個人的に気になったのが「オンデバイスAIをどう見ているか」という点だ。最近ではグーグルやサムスン電子などがオンデバイスAIによる翻訳に注力しつつある。オンデバイスであれば、セキュリティが高く、瞬時に処理してくれることが強みになる。
セバスチャン・エンダーライン氏は「DeepLが望むレベルの翻訳も将来的にはオンデバイスで処理できる可能性はあるが、今のところは多大な処理能力が必要で、早くても数年後になるのではないか」と語っていた。
DeepLは「言語の優位性を最大限に特化したプロフェッショナルなツールであり、網羅的な機能を提供するChatGPTのような一般的なAIモデルとは異なる」というのだ。
もちろん、将来的にはイヤホンなどのデバイスに「オンデバイスAI」として搭載される可能性があるのは間違いない。
せっかくなら、どこかのスマートフォンメーカーも自前で翻訳機能を開発、強化するよりも、DeepLとガッツリ組んだほうがいいのではないか。すでにDeepLと組んでいるメーカーもあるのかもしれないが、いっそのことカメラにおける「ライカと共同開発」のように「DeepLと共同開発」と言ってくれた方が説得力があるし、信頼度も上がるのではないか。
いまのところ、スマートフォンのボイスレコーダーの文字起こしや翻訳はグーグル・Pixelが強い感があるだけに、他のメーカーが一発逆転するには、DeepLと組むというのが近道だろう。
この記事の著者・石川温さんのメルマガ
image by: Photo For Everything / Shutterstock.com









