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中国トヨタ、「異例のデータ公開」と「TSS(Toyota Safety Sense)不在」が意味する“次の勝ち筋”とは

広汽トヨタは、中国専用BEV「bZ3X」に関するスマートドライビングの実装データを公開しました。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』では、これまでのトヨタ像とは明らかに異なる動きの背景を探っています。

広汽トヨタ、自動運転報告書を発表、TSSを封印するその危機感

広汽トヨタは2025年7月11日、bZシリーズの新型SU BEV「bZ3X」に関するスマートドライビングの実走データレポートを公開した。

トヨタとしては異例ともいえる詳細な実測数値の提示、そして従来のTSS(Toyota Safety Sense)に触れない構成が、今回の発表の大きな特徴だ。

裏を返せば、それだけ同車に搭載されたMomenta製スマートドライビングソリューションへの自信の表れといえる。

また、TSSを推しても今の中国市場では響かない、という現状認識も垣間見える。

売れ筋はLiDAR搭載車

bZ3Xは、トヨタのある意味渾身の中国専用EVであり、その目玉のひとつがLiDAR搭載版に標準装備された高機能スマート運転支援だ。

LiDAR搭載版でも、価格は13.98万元(約300万円以下。インセンティブ込み価格)という戦略的な価格帯に抑えられている。

中国でも、というより、世界でも、コスト高で知られるLiDAR搭載車としては最底辺の価格帯。

トヨタがbZ4Xで示したやや高価格・機能控えめな構成とは一線を画し、中国市場で本気で戦う姿勢がうかがえる。

桁はまだまだ小さいが

発表によると、発売からの累計納車台数は2万1102台に達し、そのうち54%(1万1431台)がLiDAR搭載仕様を選択している。

これは、消費者が「より高度な運転支援技術」を積極的に選んでいることを示す確かな証左だ。

スマート運転支援機能の累計走行距離は392万5823kmに及び、地球の赤道をおよそ98周した計算になる。

さらに、6月単月での最長スマート走行距離は7933kmに達したという。

このようなリアルな実走データは、中国新興勢では見慣れた形式だが、トヨタがこのような形で発表するのは極めて珍しい。

ただし、データの桁は中国新興勢と比べてまだまだ一つ、二つ小さい。トヨタもこれから、ということがよく分かる。

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都市部での使用率46%

この中で特に注目されるのが、「高速:54%」「都市部:46%」というスマート運転支援の使用割合だ。

通常高速NOAは中国でもほとんど標準装備になりつつあるが、都市部でのNOAはもろもろ難易度が高い。

都市部の混雑道路や信号環境でも実用レベルに達していることを示しており、Momentaのアルゴリズムが高精度な環境認識・判断を前提としたエンドtoエンド(E2E)構造であることと無関係ではない。

安全機能発動の情報

安全面でもデータは示されている。前方衝突警報(FCW)は約40万件作動し、自動緊急ブレーキ(AEB)は775回、緊急ブレーキアシスト(EAB)は1115回作動した。

加えて、スマート駐車支援の使用回数は31万4254回にのぼり、ユーザー1人あたり平均27回使用しているという。

自動駐車(APA)が約29万回、リモート駐車(RPA)も1万8000回以上という結果から、駐車支援技術が日常的に活用されていることがうかがえる。

初のOTAも順次展開

さらに、6月30日からはbZ3Xとして初のOTAも順次展開されている。

Momentaの「フライホイールAI大規模モデル」によって、スマート運転支援の10項目、スマートコックピット9項目、駐車支援2項目、音声インタラクション5項目の計26項目がアップグレードされる。

特にファーウェイのHiCarを統合し、HarmonyOSエコシステムとの親和性を持たせた点は、中国ユーザーのスマートフォンとの連携ニーズに真っ向から応える仕様である。

TSSを封印した理由

特筆すべきは、従来のTSSに一切触れられていないことだ。

AEBやFCWといった機能は本来、TSSの中心を成すルールベースの技術であるはずだが、今回はあくまでMomentaベースのスマートソリューションであることが強調されている。

中国市場では、TSSのようなルールベース中心の先進運転支援システム(ADAS)はもはや「時代遅れ」と見なされがちであり、トヨタ自身がその空気を敏感に察知し、ブランドの枠を超えてでも最先端の地場テクノロジーを取り入れる必要性を感じていることがうかがえる。

今回のbZ3Xの報告は単なる販売・走行実績の発表ではなく、トヨタが自らの技術パラダイムを“日本発の制御”から“現地最適化のスマートAI”へと転換しつつあることを鮮明に示すメッセージでもある。

それはまさに、中国という特殊かつ競争の激しい市場で勝ち抜くための、必然の選択ともいえる。

出典: https://mp.weixin.qq.com/s/UVLfiNLrLxnKowmiKqWDVA

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image by: Robert Way / Shutterstock.com

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