ある意味「奇襲」。中高年が電話不要論を唱える理由
興味深いのは日本ではアナログ世代の中高年の間でも「電話不要論」なるものが出ている点です。大人たちの電話不要論の理由は「相手の時間を奪う」です。
電話をかける方は「話した方が早い」とか、「電話でちゃんと伝えた方がいい」と考えるわけですが、電話を受けた側はいったん手をとめ、相手の話を強制的に聞かなくてはなりません。
特にたくさんの仕事を同時進行でやっている人にとって緊急性が低い電話は奇襲のようなもの。メールやチャットであれば、相手の都合の良いタイミングで確認・返信ができるため、相手への配慮が欠けていると指摘しているのです。
若者の「電話が怖い」という感情的な理由と、中高年の「電話は不合理」という合理的な理由。アプローチは違いますが、どちらも現代のコミュニケーションにおいて、電話が必ずしも最善のツールではないという共通認識を示している点は共通しています。
そういえば私の知人の大学1年生の息子さんは、再放送されている1980年代のドラマ『ふぞろいの林檎たち』を見て、「これって戦前の話?何で電話くれないとかどうだとか家でじっと待ってるんだよ。待つって何なんだ?面倒くせ~」と言っていたそうです。
好きな人からの電話を待つ間に、「もう、仕事終わったかなぁ。電車に乗って満員電車に揺られているのかな」と想像し、「もう家に着いたころだからそろそろ電話くれるかな」と期待に胸を膨らますも、なかなかかかってこない電話に「何かあったのかな?いつもだったら帰っている時間なのに……」と心配になる。
何度も何度も受話器を見つめ、鳴ったときに近くにいないと出られないから、トイレに行くのも気が気じゃない――。そんな感情の揺れも、今は消え、あの頃がなんだかとても愛おしい。
しかし、携帯やメールで瞬時にダイレクトにコミュニケーションできる時代を生きる息子さんには「ただの無駄」でしかないのです。
おかげで昭和おじさん・おばさんは、日々若者とのコミュニケーションに神経をすり減らし、「なぜ、伝わらない?なぜ、理解できない?」という小さな怒りはジェネレーションギャップという言葉に置きかわりました。
昭和おじさん・おばさんが多用する「ジェネレーションギャップ」という言葉は「もう勘弁してください」という悲鳴なのです。
さて、あなたは電話についてどう思いますか?いらないですか?出るのが怖いくらいだったら、音声AIに任せればいいと思いますか?
みなさんのご意見、お聞かせください。
この記事の著者・河合薫さんのメルマガ
image by : Shutterstock.com
初月無料購読ですぐ読める! 8月配信済みバックナンバー
- 電話は不要か?消えるのか?ーーVol.436(8/6)
<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>
※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。
- イチローさんが教えてくれたことーーVol.435(7/30)
- 豊かな社会はどこへ?ーーVol.434(7/23)
- 病院が消える日ーーVol.433(7/16)
- いよいよ「超中年社会ニッポン」に突入!ーーVol.432(7/9)
- 本当に梅雨は消えたのか?ーーVol.431(7/2)
- 脳、疲れてませんか?ーーVol.430(6/25)
- 病欠とやる気のはざまでーーVol.429(6/18)
- ゲリラ豪雨と線状降水帯の違いって?ーーVol.428(6/11)
- ビジネスケアラーと隠れ介護ーーVol.427(6/4)
- ファッション化する“シューカツ“ーーVol.426(5/28)
- 学びの場崩壊!天井落下、雨漏りもーーVol.425(5/21)
- 自分の「感情」がわからない子どもたちーーVol.424(5/14)
- 恐怖と被害の狭間で。ーーVol.423(5/7)









