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日航ジャンボ機墜落から40年。『上を向いて歩こう』の発車メロディを耳にして思いを巡らせたブラウン管の中の事故現場

520人が犠牲となった日航機墜落事故から40年。これまでさまざまな検証がなされ、「空の安全性」向上の重要性が叫ばれ続けていますが、残念ながら航空機による事故を防ぎきれていないのが現状です。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』ではジャーナリストの引地達也さんが、ノンフィクション作家の柳田邦男さんが座長を務める「安全アドバイザリーグループ」による日航への提言書の内容を紹介。その上で、同社が今後担っていくべき役割を提示しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:「上を向いて歩く」ための2.5人称と血肉になるコミュニケーション

「上を向いて歩く」ための2.5人称と血肉になるコミュニケーション

8月12日は日本航空ジャンボ機墜落事故の日である。

今年は事故から40年の節目。

NHKによると、墜落現場である群馬県上野村の御巣鷹山の慰霊登山には、午後4時の時点で81家族277人が参加し、去年よりも47人多くなった。

その日の午前、私がいたのはJR川崎駅。

1.2番ホームで東海道線を待つと、流れてきた発車メロディは『上を向いて歩こう』だった。

同機に搭乗し亡くなった520人の中の1人である坂本九さんの代表曲であり、世界では『SUKIYAKI』として知られる。

川崎市出身の坂本さんにちなんでのメロディだが、生前の朗らかな表情を思い出し、そしてテレビで見た事故の様子、取材で訪れた御巣鷹山に思いを巡らし、安全について考える。

日航の安全に関する提言の中で語られている中でも「2.5人称」「コミュニケーション文化」は、年月を経て、普遍的な価値が帯びてきている。

事故は機体後部の圧力隔壁の損傷により操縦不能になったことが原因とされる。

1987年に当時の運輸省航空事故調査委員会、その後のFAA(米国連邦航空局)は、この損傷は78年に同じ機体が尻もち事故を起こし、その修理をした米ボーイング社のミスによるものであることも指摘している。

修理の的確性を欠いた同社と、確認が不十分だった日航による組織の構造的な問題でもある。

この事実を受け止め、安全教育に力を注いてきた日航。

新入社員は御巣鷹山に登り、遺族を慰霊して安全を誓うのが新入社員の必須になっている。

だから、2000年に入ってから、日航が総会屋への利益供与事件が発覚した時、私もその取材を通じて、周囲から感じ続けたのは、日航は社会に誠実でなければならない、という社会の風当たりである。

事故の反省とその行動が、今の日航を作っているのかもしれない。

2005年に安全アドバイザリーグループが発した提言書には、その「日航」の行動の在り方が記載された。

ノンフィクション作家の柳田邦男さんは、この事故原因や遺族を追い続け、日本航空の安全アドバイザーグループの座長を務める。

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提言書には「すべての社員が2.5人称の視点を持って行動することが高い安全性を持つ組織につながる」と明記した。

柳田さんは

合理的で客観的な「3人称」の視点や分析は必要だが、「自分や自分の家族がこの状況に放り込まれたらどうなるのか」という2人称の感性や当事者意識も忘れてはならない。

どちらか一方ではなく、両方を併せ持った「2.5人称」の視点が大切だという思いを込めた。
(日経新聞8月11日)

と話す。

2.5人称で物事を考えることを、提言書は「安全の層」の厚みが増す、と表現する。

これは、安全にかかわるすべての人への提言として、社会に広く浸透させるべき視点であろう。

災害が日常に迫る日本においては、私たちが2.5人称で考え、準備する、もしくは対応する時はいつか発生するのだ。

さらに提言書は「コミュニケーション文化」を説く。

大事なこととして、コミュニケーションの「場」を意図的に作り出すことだという。

「社員同士が対面して肉声で情報を共有し、情報を相手の血肉として伝えること」とし、各自の思いを語れる場を設けることを奨励している。

コミュニケーションを語るのは簡単だが、場を設ける、相手に血肉として、となると、より能動的な行為が迫られる。

修理の確認、というコミュニケーションを怠ったことで500人以上の命が奪われたことを思うと、やはり能動的なコミュニケーションは必然化する。

40年、日航は多大な犠牲を負わせた十字架を背負いながら自問を繰り返し、今後もそれを続けながら、今後は広く社会に「血肉として」伝える役割も担ってほしいと思う。

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image by: Vytautas Kielaitis / Shutterstock.com

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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