参政党が解きつつあるディストピアの封印。極右政党の指導者は「スパイ防止法の成立」という“統一教会のかつての夢”を知らないのか?

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先の参院選で大躍進を遂げた参政党。そんな彼らの「日本版スパイ防止法」制定という公約も大きな話題となりました。今回のメルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』では著者の有田芳生さんが、同党の主張を「緻密な概念があっての提案ではない」と判断せざるを得ない理由を解説。その上で、かつて廃案となったスパイ防止法と同義の「国家秘密法案」を巡る歴史的系譜を詳しく紹介しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:参政党の「スパイ防止法」その源流を暴く(上)

神谷代表はご存知か。有田芳生氏が暴く「スパイ防止法」の源流

参政党は参議院選挙のときから「スパイ防止法」の制定を主張してきた。それに呼応する自民党安倍派議員たちや国民民主党や日本維新の会の議員もいる。

これは「日本はスパイ天国」だとする内容で、「南京大虐殺はなかった」「日本は中国を侵略していない」といった妄言の延長にあるレベルなのだが、「新たな冬の時代」にあっては無視することはできない。

参政党代表は公務員のなかの「極端な思想」を問題にする。ここに明らかなように緻密な概念があっての提案ではなくて、極端なプロパガンダが基本的な主張なのだ。

ただし荒唐無稽なディストピアであっても、国会で一勢力を維持する政党(衆議院3議席、参議院15議席)ゆえに、「スパイ防止法」を秋の臨時国会で法案として出してくる可能性が十分にあることに注意しなければならない。

参政党の代表たちはこの法案の歴史的系譜を知らないだろう。1985年に自民党が「国家秘密法案」(スパイ防止法)を議員立法で提出したが廃案になった。その推進力は国際勝共連合=統一教会の周到に準備された草の根からの運動にあった。

大江益夫氏は統一教会の元広報部長で、その前に国際勝共連合の渉外局長も務めていた。樋田毅『旧統一教会 大江益夫・元広報部長懺悔録』(光文社新書)が出たのは2024年8月。霊感商法、日韓トンネル、自民党との関係だけでなく、朝日新聞阪神支局を銃撃し、記者1人が殺害された赤報隊事件に信者が関係した疑惑についても触れている。

そこではクーデター計画だけでなく、「スパイ防止法」成立のための準備をし、推進のための組織を全国で作ってきたことも明らかにされている。1970年代から80年代は、東西冷戦が続いており、日本でも統一教会の信者たちが、政治組織である国際勝共連合のメンバーとして自民党に接近し、共産党などの左翼と路上でも厳しく対峙してきた。

(1)国際勝共連合の宮下昭彦事務総長の指示で信者組織から形式的に抜けた大江氏は、共産主義勢力と戦う準備をするために理論研究の課題を指示された。その課題がスパイ防止法だった。各国のスパイ防止関連の法律や日本の戦前の法律を研究し、これからどんな法律が必要で、そのためにどんな運動が必要なのかを詳細にまとめた。約3年間の研究、執筆を終えたのは1979年。宮下事務総長によって国際勝共連合の渉外局長に抜擢された。

(2)渉外局長になった大江氏は、スパイ防止法の法案を作るとともに、すべての都道府県にスパイ防止法制定促進・都道府県民会議、さらに市区町村単位でも地元の保守系議員を巻き込んで制定促進会議を組織していった。その一方で、源田実、堀江正夫氏ら自衛隊出身の自民党候補の選挙応援にも取り組んだ。

(3)国際勝共連合とスパイ防止法制定促進国民会議は一体だった。少なくとも幹部は同じ人物だった。大江氏は勝共連合の渉外局長で、スパイ防止法制定促進国民会議の総務部長を兼ねていた。全国組織にする相談のため、御殿場の岸信介元総理の山荘を定期的に訪れた。制定促進会議の全国での結成状況、制定促進のための国会請願、地方議会での決議状況などを報告した。

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