計画の企業側の事情
では、なぜこのような巨額投資を打ち出すのか。その背景には、いくつかの“企業側の事情”が読み取れる。
第一に、ON TIMEの親会社は国有自動車大手の広汽集団(GAC)であり、同社グループとしての「スマート交通への取り組み姿勢」をアピールすることが戦略的に求められている。
広汽AIONや広汽研究院などと連携し、グループ横断での未来技術開発に取り組んでいる姿勢を示すことが、対外的な信頼性につながる。
第二に、政策や資本市場に対するIR(インベスター・リレーションズ)効果を狙ったものと考えられる。
中国では、自動運転・スマートシティ関連分野への国家支援が活発であり、地方政府による用地提供や補助金、優遇規制の獲得には、ある程度の“ビジョン演出”が必要となる。
ロボタクは中国で引き続き社会的インパクトが大きく、話題性もあるため、実態以上のスケールを提示することで、政府・市場両面からの注目と支援を引き寄せる狙いが透けて見える。
投資回収に途方もない年月
もちろん、全く実のない話というわけではない。
ON TIMEはこれまで広州・深セン・珠海などで配車サービスを展開しており、公共交通との連携や地域に根ざした運用経験も持つ。
だが、ロボタクというハードかつ規制依存型の事業において、単体で2,000億円の投資を回収できる見通しは極めて立ちにくい。
仮に1日1台あたり5回の配車で、年間10万台が安定稼働したとしても、粗利ベースでの年間収益はせいぜい600億円程度が上限と見られる。
最終損益で黒字転換して、そこから累損解消、純粋な黒字による投資回収には最低でも十数年以上を要する。
“やっている感”と未来感
結論として、今回の「ROBOTAXI+」戦略発表は、将来的な自動運転社会への布石というよりも、“やっている感”と未来感を演出したPR戦略とみなすのが妥当だろう。
広汽グループのスマート化・電動化戦略の一部として、政府向けの協調姿勢を見せつつ、政策資源や補助金、技術ブランドの確立につなげる──そんな「IRとしての意義」に主軸がある。
むしろ、このプロジェクトが実質的にどの程度の利用者に届き、どの段階で収益化の道筋を示せるかは、これから数年の政策動向や業界全体の構造変化に大きく左右されることになる。
出典: https://mp.weixin.qq.com/s/bcCCB5BzAsggwo8GZxLHaw
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image by: 中少, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons









