芸能界に走った特大の衝撃。なぜ福山雅治だけがスキャンダルから守られ続けてきたのか?

 

3.世界的なキャンセルカルチャーの波

しかし、その聖域もついに崩れた。この背景には、世界規模で展開されている「キャンセルカルチャー」の波がある。

2017年10月、ハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの性的暴行疑惑が『ニューヨーク・タイムズ』で報じられたことを皮切りに、#MeToo運動が世界的に拡大した。この運動は、これまで権力者によって握りつぶされてきた性暴力やハラスメントを公にし、加害者を社会的に制裁する「キャンセルカルチャー」を生み出した。

ワインスタインは23年の実刑判決を受け、『ハウス・オブ・カード』で主演を務めていたケビン・スペイシーは性的暴行疑惑により同作品から降板、事実上キャリアが終了した。J.K.ローリングは『ハリー・ポッター』シリーズの作者でありながら、トランスジェンダーに関する発言で激しい批判を浴び、一部のファンから「キャンセル」された。

日本でも、この流れは確実に浸透している。映画監督の園子温氏は性加害疑惑により表舞台から姿を消し、2023年にはジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)の創業者ジャニー喜多川氏の性加害問題が白日の下に晒された。これらの事件は、日本の芸能界においても「過去の出来事」が時効なく追及される時代が到来したことを象徴している。

特に注目すべきは、時間の概念が変化していることだ。福山氏の件も約20年前の出来事である。SNSとデジタルメディアの発達により、過去の行為が現在の価値観で裁かれ、瞬時に拡散される時代になった。「昔は良かった」「時代が違った」という弁明は、もはや通用しない。

4.芸能事務所の相対的影響力の低下

福山氏が所属するアミューズもまた、この時代の変化に翻弄されている。かつて芸能事務所は、所属タレントのスキャンダルを「もみ消す」力を持っていた。特に大手事務所は、メディアとの強固な関係性を武器に、不都合な情報の隠蔽や火消しを行ってきた。

しかし、ジャニーズ問題を境に、この構造は大きく変化した。ジャニーズ事務所という「最強の砦」が崩壊したことで、他の芸能事務所の影響力も相対的に低下している。

アミューズは確かに業界第4位の規模を誇る大手事務所だが、バーニングプロダクションや吉本興業ホールディングスのような絶対的な事務所ですら絶対的ではなくなっている。特に、週刊誌メディアや新興のネットメディアに対する影響力は限定的だ。

今回の福山氏の件でも、アミューズは事実を認めざるを得なかった。これは、かつてのような「事務所の力による隠蔽」が困難になっていることを如実に示している。メディアの多様化、情報源の分散化により、一つの事務所がすべての情報をコントロールすることは不可能になった。

さらに、企業のコンプライアンス意識の向上も、事務所の「火消し能力」を削いでいる。スポンサー企業は、タレントのスキャンダルに対してより敏感になり、早期の契約解除や出演見合わせを判断するようになった。事務所としても、一人のタレントのために企業全体のレピュテーションを危険に晒すリスクを冒すことは難しくなっている。

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