韓国の特別検察に9月17日に出頭し、23日に逮捕された旧統一教会の韓鶴子総裁。車椅子に乗る弱々しい姿が日本でも大きく報じられましたが、識者は一連の動きをどう見たのでしょうか。今回のメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』では、著者で同教団にかつて信者として身を置いていたジャーナリストの多田文明さんが、韓国本部の「脇の甘さ」が招いた逮捕劇の背景を分析。さらに韓氏が「3度目の出頭要請」に応じた理由や「質素な服装」に込められた教団特有の意味づけを解説するとともに、虚言と欺瞞を重ねる彼らの体質そのものを強く批判しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:なぜ?韓鶴子総裁は逮捕された 韓国本部の対策への脇の甘さゆえか? 検察の要請から3回目、とても質素な服装で、韓鶴子総裁が出頭
「3度目の出頭要請」に応じ質素な服装で登場。旧統一教会のトップ逮捕の衝撃
「韓国本部にまで捜査の手は及ぶまい」という脇の甘さ
日本の旧統一教会は、関連団体の信者らが逮捕されたことはあっても、教団の幹部が逮捕された刑事事件はないと主張して、解散命令請求の不当性を訴えていました。
しかし、日本を飛び越えて、お金集めの指示していた韓国の元幹部や韓鶴子総裁が逮捕されたことで、それに対しての説得力は、ほぼなくなったといえます。
日本においては不法な形でお金集めをしてきたこともあり、政治とのつながりをもつ団体やお金を集める組織をわけるなどして、教団本部への日本の捜査の手が及ばないようにする徹底した対策がなされてきました。
この他にも、教団内では「文(ふみ)の日」を決めて、定期的に、外に漏れるとまずい上層部からきた資料はシュレッターにかけて証拠を隠滅するなどしてきました。あまりにも、総務の人がFAXなどの資料をシュレッターするのが大変そうなので、手伝ったこともあります。
日本においては、常に捜査機関を意識しての対策に余念がありませんでした。
一方で、韓国本部は、まさか自分のところに捜査の手が及ぶとは思っていなかったのでしょう。捜査への対策がなされず、脇の甘さがあったためでしょう。あっさりとトップが逮捕されました。おそらく日本とは違い、不法行為につながる資料がたくさん見つかった結果ではないかと思います。
ここには、日本における解散命令の裁判を、韓国本部が他人事と捉えていたためだと思います。いつか自分のところに不正究明のメスがやってくる。そうした危機感がなかったために、今回の事態となったと考えています。
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韓総裁が「3回目」の出頭要請に応じた教義的な意味合い
旧統一教会では数字を重視します。そこには神の力や霊力が働くと考えているからです。
特に「3」は大事な数字です。
たとえば、堕落した人間が神の子となるためには、「蘇生期、長成期、完成期」という、3つの段階を経ていくと教義で教えられます。余談ですが、蘇生期では「万物復帰」といって、お金の集めのための活動が信者に求められます。
韓鶴子総裁は2度の検察からの出頭要請に応じずに、3度目になってようやく自ら出頭しましたが、やはり「3」を意識した教義的意味合いを感じます。
世間一般には、3度目の出頭に応じない場合、逮捕という事態になるため、それを避けるために出頭したといわれており、それもあると思います。
もしメシヤが検察に、教団施設に踏み込まれて拘束されれば、サタンにメシヤが捕らえられたことになり、サタンより下の立場になったことを意味することになります。
それは信者の手前上、まずい事態です。
すでに、韓鶴子総裁は、完全にサタンに勝利して、堕落のなかった、本来、神が作りたかったエデンの園の時代を築いたことを宣布しています。それなのに、完全に勝利したメシヤ(サタンの侵入を受けるはずのないメシヤ)が再びサタンによって捕らえられるのは、どうにもおかしな話になってしまいます。
そこで逆に、サタンのもとに出向き、戦いを挑み、乗り込んだ形にしたのではないかと思います。
逮捕を避けるための教団らしい社会に向けたアピール
出頭した韓鶴子総裁の姿をみながら、相変わらずの教団側の姿勢をみました。
そ
こには、いつも信者の前に出てくるような、きらびやかな服装ではなく、質素な装いで、手術をしたと伝えられましたが、病弱な高齢女性にも思えるような姿でした。メシヤとしての堂々たる姿は、そこにはありません。
ここには、逮捕されないための教団らしい社会に向けたアピールがあったように感じます。
国内の霊感商法などを通じた、長年にわたる金銭的な被害をみてもわかるように、教祖や韓国本部の指示をうけて、霊がみえないのに「悪因縁がついている」などと嘘をついて、加害行為をしてきました。しかし今も、その事実を正面から見つめず、被害は捏造であり、それどころか「自分たちは信教の自由を侵害されている、被害者である」の主張をしてデモも行っています。
ここからわかるのは、加害者の姿をみせず、被害者の顔をして、社会にアピールするのが、旧統一教会の姿です。
今回も韓鶴子総裁は車いすに乗り、数々の式典に出たような派手な衣装をまとわずに、質素な装いで、弱弱しい姿を見せながら、さも信教の自由という宗教迫害を受けている被害者であるような姿を社会に見せようとしていることを感じました。
しかし韓国の検察は逮捕状の請求をします。そして被害者のごとく振う、欺瞞性を見逃さず、裁判所は、逮捕状を発付しました。お見事です。
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「岸田を呼びつけろ」と豪語した過去との取れぬ整合性
韓鶴子総裁は検察の調べに対して、政治家にお金を渡したことなど、一連の容疑を否認して「政治に関心がない」と話したといわれます。この報道を聞いた時には、ひっくり返りそうになりました。
というのも、これまで様々に政治に関する発言があり、記憶に新しいところでは、2023年の幹部らを集めた集会のなかで、韓鶴子総裁が、当時の岸田総理に対して「岸田を呼びつけ、教育させなさい」と言い放っています。これは国内でも大きく取り上げられて、その時の松野官房長官も「報道の件は承知している」といったほどです。
しかし今回の検察の事情聴取に対して「政治に関心がない」といい、過去の発言との整合性が取れません。他にも、総裁の政治に関する言葉があるでしょうから、様々なボロが出てくるのでは必至だと思っています。
そもそも教義において、旧統一教会の教えは国教にしなければなりませんし、政治、文化、宗教を統一教会の教えによって一つにならなければならないとしており、信者らはその実現のために、必死になって活動しています。その教えを真っ向から否定するような言葉です。
「元信者」が教団の打つ手すべてが裏目に出ると見る理由
信者らは「嘘も方便」という言葉をよく使います。過去には、教団名を隠した偽装勧誘をしてきました。もし「統一教会ですか?」と相手から聞かれれば「違います」と否定するように教えられました。神のための「嘘」は善とされていますので、メシヤの発言をそのようにとらえるかもしれませんが、人々に安寧をもたらすはずの宗教団体が嘘をついてはいいはずがありません。
今回の解散命令請求でも、宗教法人法81条1項2号前段の解散命令事由にも該当すると認めました。
本来、宗教法人は、民法上、公益法人です。その理由は「宗教団体が、宗教活動によって不特定多数者に精神的安定、あるいは精神的訓練を与えて、社会に貢献するものと期待されている」からです。文科省は、公益を損なう宗教法人の活動は、「第二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をした」に該当するとしています。
すでに教団が組織をあげて、信者らが国民の力に入党するなどの事実も浮き彫りになっています。つまり、教祖自らが検察に(世の中に)「嘘」をついた事実が今後明らかになれば、メシヤとしての権威は失墜するとともに、旧統一教会が、本来の宗教の姿からかけ離れた存在であることを示す結果になります。
おそらく幹部のなかに知恵者がいて、起訴されないための方策を授けたと思われますが、教団の信頼性を失うような行動となし、すべてが裏目に出ているように感じています。
「天網恢恢疎にして漏らさず」の言葉通りの結末
今後、教団はどうなるのでしょうか。
韓鶴子総裁は「私のために祈らないで」と信者らに話したと報じられています。「戦いなさい!」と過激な言葉で信者を煽ることをしませんでした。
総裁は、すでになくなった息子の子供たちを後継指名にしようと、考えているといわれていますので、必要以上に教団内の分裂や混乱を起こせば、後継者指名への影響も出てきますので、それを避けるための狙いの言葉ともとらえられます。
いずれにてしも、「天網恢恢疎(てんもうかいかい)にして漏らさず」の言葉通りの結果となりました。
メシヤは、全知全能の神様の代わりとして肉体をもって、この世界に降り立っているのですから、霊界を通じて、すべて先の事象を見通せるはずだと思うのですが。
なぜ、検察による逮捕を予期できずに、現在にまでいたっているのか。今後、教団から、どのような公式な見解がなされるか。注目をしています。
(この記事はメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』2025年9月28日号の一部抜粋です。続きは、ご登録の上お楽しみください、初月無料です)
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image by: Unification Church Hungary, CC0 1.0, via Wikimedia Commons