「6つの仕事を掛け持ちする時間管理の専門家」として知られる石川和男さん。もちろん「マルチタスクを使いこなしている」と思う方が多いのかもしれません。石川さんは自身のメルマガ『石川和男の『今日、会社がなくなっても食えるビジネスパーソンになるためのメルマガ』』の中で、実は超シングルタスク人間であると明かし、それでも仕事をこなすことができる方法を伝授しています。
マルチタスク神話に騙されるな!シングルタスクで一気に終わらせる生き方
多くの人が「同時にいくつものことをこなせる」=「優秀」だと思っています。けれども実際は、その考え方こそが仕事を遅らせ、生産性を下げているのかもしれません。
マルチタスクとは、2つ以上の作業を同時に行うこと。でも、人間の脳はそんなに器用にはできていません。
私は建設会社の総務・経理をはじめ、セミナー講師、コンサルティング、著者など9つの肩書を持っています。
「マルチに活動していてすごいですね」と言われることもありますが、実のところマルチタスクは苦手なのです。
というより、できません。
サッカーを観ているときに話しかけられても気づかないし、小説に夢中になれば飲み物すら口にするのを忘れます。
仕事も同じで、ラジオが流れているだけで集中力が切れる。請求書を確認しながら資料を読むなんて絶対に無理です。
私の働き方はとてもシンプルです。
建設の仕事を夕方5時で終わらせたら、退社後の電車でセミナー資料を読み、会場についたら講義に集中する。
すべてを順番に、一つずつ終わらせる。だからこそ次の仕事にも力を注げる。私は「超シングルタスク人間」なのです。
人間の脳はそもそも、同時に複数のことを処理するようにはできていません。
研究によると、マルチタスクをすると生産性は40%下がり、ミスは50%増え、タスクを終えるまでの時間は1.5倍になるといわれています。
試しに「バナナ」と「電車」を同時に思い浮かべてみてください。電車の座席にバナナを置いている光景は想像できても、別々の場所にある2つを同時に思い浮かべるのは難しいですよね。
つまり、私たちは同時に考えているようで、実際は瞬時に脳を切り替えているだけなのです。
仕事中に企画書を作りながら部下の話を聞く、そんな「同時進行できる人」を見かけることがあります。
でもそれは同時ではなく、脳が「企画書→部下の話→企画書→部下の話」と高速で切り替えているだけなのです。
だから後になって「そんな話、聞いていないよ」と言い出す。
人間の脳は、そんなに器用ではありません。本当に集中したいなら、今やっている手を止めて相手の話を聴くか、「あと10分後に話そう」と区切りをつけてから話を聞く。
これが正解です。忙しい人ほど、この“順番にやる”意識が重要になります。
さらに注意したいのが、「頭の中のマルチタスク」です。作業をしている途中で「あれもやらなきゃ」と思い浮かぶと、意識が飛び、集中力が途切れます。そんなときは、思いついたことをメモして頭の外に出す。頭の中で抱えている限り、あなたの脳は同時に複数の仕事を進めている状態になってしまうからです。
とはいえ、すべてのマルチタスクが悪いわけではありません。
脳を使うことと、身体だけを使うことを組み合わせるのは、むしろ効果的です。たとえば、ジムでエアロバイクを漕ぎながらビジネス系の動画を観る、歯を磨きながらオンライン講座を聴く、散歩をしながら明日の段取りを考える。こうした「脳と身体のマルチタスク」は、記憶の定着にもつながるといわれています。
ダメなのは「脳と脳」を同時に使うこと。思考と情報処理を並行して行うと、脳がオーバーヒートしてしまうのです。
シングルタスクの本当の価値は、「やり切る力」を生み出すことにもあります。「この仕事が終わるまで次に進まない」と決めてしまえば、途中で投げ出すことはできません。逆にマルチタスクの人は、難しい仕事にぶつかると無意識に簡単な仕事へ逃げてしまう。だから大事な仕事がいつまで経っても終わらないのです。シングルタスクは、言い訳を封じる最強の習慣です。「これを終わらせないと次に行けない」と決めた瞬間、集中力が一気に高まり、達成感も倍増します。
マルチに動ける人ほどすごい、そんな常識はもう古いのかもしれません。本当に成果を出す人は、ひとつに集中して一気に終わらせる人です。あれもこれも抱えるより、今この瞬間の一つを完璧にやる。結局それが、最短でゴールにたどり着く道なのです。
今日のあなたのタスク、まずはひとつだけ選んでください。スマホを閉じ、音を消し、目の前の一つに全集中。それだけで、仕事は驚くほど早く終わります。マルチタスク神話に騙されないでください。集中とは、才能ではなく、選択です。何を“やらないか”を決めた瞬間、あなたの生産性は跳ね上がります。
この記事の著者・石川和男さんのメルマガ
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