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なぜ今、再び「女性活躍」なのか?東京都の条例が示す未来へのヒント

男女平等とはいうものの、社会の現実を見渡せば、いまだに“男女の差”が色濃く残っています。女性が働きやすい社会とは何か。男性が家事や育児に参加しやすい社会とは何か。その問いに、東京都があらためて向き合おうとしています。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、女性を特別扱いするのではなく、働き方のスタンダードを見直すという視点を紹介しています。

男とか、女とか。

「男女不平等国ニッポン」にメスを入れることになるのでしょうか。

東京都は女性が働きやすい環境づくりに向けて「女性活躍に関する条例」の制定に動いていることがわかりました。

都は、平成12年制定の「東京都男女平等参画基本条例」に基づき施策を進めてきましたが、雇用・就業分野において女性の就業者数は増えたものの非正規雇用が多く、管理職の割合は低い水準に留まっています。

また、アンコンシャスバイアスによって、女性の進学や職業選択等に影響を及ぼしている可能性が高いので、その是正と解消に取り組んでいくそうです。

小池知事はこれまでも「活躍する女性」に貢献してきました。

2016年に東京都知事に就任した当時、女性都議は25人(定数127)で、わずか19%でした。しかし、都知事就任後、都民ファーストの会を発足させ「希望の塾」を開催。

17年の都議選では塾生などを積極的に擁立した結果、女性都議は3割一歩手前の36人まで増えました。

そして、2021年7月に行われた都議選で、当選者のうち女性が占める割合は32%とついに3割越えを達成します。立候補者も77人と前回の65人を12人上回り過去最多。

政党別で女性の当選者が一番多かったのは共産党の14人。次いで都民ファーストの会の12人、自民党と立憲民主党はそれぞれ4人。政党ごとの当選者に占める女性の割合は東京・生活者ネットワークが100%(当選1人)、共産74%、都民ファースト39%、立民27%だったのに対し、政権与党の自民はわずか12%で、公明党も13%といずれも「2割にも」達していませんでした。

今回の条例には罰則はありません。しかし、東京都という日本の中心で条例ができることは、国の法整備につながる可能性は十分にあります。持ち前の発信力で、なぜ、今、再び「女性活躍」なのか?を、日本全体に知らしめて欲しいと思います。

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私が全国1000社以上の企業を訪問し、確信したのは、女性が元気な会社は男性も生き生き働いてるというリアルでした。。女性が元気に働いている会社の社長さんはとてもオープンで、とてもフェアです。

停滞が進化の妨げになることを理解しているし、全員野球じゃないと会社が勝てないことも知っていました。

つまり、女性問題は男性問題でもある。だからこそ、とことん女性活躍をやり遂げて欲しいのです。

一方で、2023年にノーベル経済学賞を受賞したクラウディア・ゴールディン博士のの著書『なぜ男女の賃金に格差があるのか 女性の生き方の経済学』に記されていた研究結果を思い出します。

ゴールディン博士は「男女の賃金格差の真因」を明かすために、200年以上にわたる米国のデータを包括的に分析しました。その結果たどりついた答えは、パターナリズムや偏見といった「心」の問題ではなく、人生におけるライフイベント(=出産)によって、男性の有償キャリアが優先され、女性の労働時間が減ることに賃金格差の“病根”があるというエビデンスでした。

女性の働きやすさを求め、理解がある上司に恵まれ、男性の育児休暇取得率が向上すれば、ケア労働に対する心理的or肉体的負担は軽減されるかもしれません。しかし、それらは対症療法に過ぎない、と。

それは「働き方のスタンダードを変えよ!」という明確なメッセージです。

企業の賃金体系そのものが、歴史的な社会規範や性役割の影響を受けた「男性をスタンダードにした働き方」=“time macho“に基づいていることにこそ問題がある。

もし、ゴールディン博士が膨大なデータから導き出した男女格差のない働き方ができる社会に、学生時代の「私」が生きていたなら、たとえそれが積極的な選択であれ、究極の選択であれ、今とは全く別の「私」になったことは間違いありません。

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東京都は、「アンコンシャスバイアスによって、女性の進学や職業選択等に影響を及ぼしている可能性」をあげていますし、その是正に向けた取り組みは必要
でしょう。

しかし、「働き方のスタンダード」を変えれば、色々な景色が見えてくるのではないでしょうか。

実際ドイツでは、徹底的な働く時間の管理で、「仕事も家事もやって一人前」という価値観が社会に根付きました。その結果として、存在するのがメルケルさんです。

メルケルさんは物理学者であり、ヨーロッパの母であり、ドイツの別姓を認める法律のおかげで、量子化学者の夫のザウアー性ではなく、政治家としてメルケルさんでいられました。

世界の国々が夫婦別姓を認めるのも、「男女平等に反する」と国が、裁判所が判断を下したからのほかなりません。

ちなみに2023年のノーベル賞の受賞者には女性の研究者が目立ちました。

生理学・医学賞では、新型コロナウイルスのワクチンで実用化されたメッセンジャーRNA(mRNA)技術の開発で大きな貢献をした、米ペンシルベニア大学のカタリン・カリコ博士。物理学賞では「アト秒」と呼ばれる極めて短い時間だけ光を発する実験的な手法を開発し、物質を構成する粒子の1つ、電子の動きを観察する新たな研究を可能にしたスウェーデン・ルンド大学のアンヌ・ルイエ博士。平和賞では、イランの人権活動家、ナルゲス・モハンマディ氏。そして、経済学賞のクラウディア・ゴールディン博士です。

彼女たちの背中が若い女性たちの「光」になるような社会に、私も生きてみたかった。

みなさんのご意見、お聞かせください。

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
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