税金の差押(さしおさえ)は今でも厳しいと感じるものですが、実は今後さらに厳しくなる可能性があるようです。メルマガ『『倒産危機は自力で乗り越えられる!』 by 吉田猫次郎』の著者である吉田さんが、税金の差押がどのように行われるのか、そして今後どう変わっていくのかをわかりやすく整理しています。
税金の差押が、より厳しくなる!?
ただでさえ厳しい税金の差押が、来年からもっと厳しくなりそうです。キーワードは「KSK」です。
KSKとは国税総合管理システムのことで、全国の納税者情報を一元管理しているマザーコンピューターのような存在(?)として知られてきましたが、このKSKが、2026年8月から、KSK2としてリニューアルするのです。
これにより、お金持ち脱税しにくくなるのは勿論の事、私たち貧乏人にとっても、滞納処分(差押)や、そのための財産調査、個人事業主の無申告など、あらゆる面で、誤魔化しがきかなくなってくると予想されます。
ここで今一度、税金の差押について、おさらいしてみましょう。
【差押までのプロセス】
税金の差押は、借金の差押とはまるで違います。
まず、根拠となる法律が違います。
借金の差押は民事執行法で定められていますが、税金のそれは、国税徴収法です。
借金取りが差押をしようとする場合、まず裁判の判決や公正証書や和解調書などで債権を法的に確定させ、それをもとに、別途、差押の申立手続を裁判所で行わなければなりません。
つまり、えらく時間がかかります。
しかも、何を差し押さえるか?について、事前によく調べないと、空振り三振のような結果に終わってしまいます。
その事前調査にもかなり難儀します。
銀行や保険会社は守秘義務があるから口座の有無について簡単に教えてくれないし、売掛先も同様ですので。
ところが一方、税金の差押というのは、裁判にかけなくてもすぐに差押できてしまうのが恐ろしいところです。
なにしろ、国税徴収法の条文には、「滞納者には、差し押さえなければならない」と書かれていますから。税金徴収の公務員は、差押をしないと、職務怠慢になってしまいます。
さらには、お役所の国家権力を総動員して、財産をくまなく調べることができます。銀行口座、預金残高、売掛先、不動産、有価証券、生命保険など。だから迅速・確実に、滞納者を仕留めることができるのです。
KSK2が稼働開始すると、財産調査の精度が、より高くなるものと予想されます。
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【予防策・防止策】
差押から逃れようとして、変な裏工作をしすぎると、ロクなことがありません。
その裏工作が裏目に出て(?)協力者に裏切られたり、妙に高い報酬を取られたり、そこまで危険を冒して裏工作をしても、それがバレたら強制執行妨害で罪に問われたり、まったく報われません。
よって、「差押を妨害する」 という考えは捨てましょう。
それよりも、腹をくくったほうがいいです。
「滞納している自分が悪いのだから、最悪、差押されても、それを潔く受け入れよう」と。
もっといいのは、当たり前ですが、滞納しないことですね。あるいは滞納しても、包み隠さず現況を話して、分納の相談をすることですね。
ちなみに、「換価の猶予」という有名な制度がありますが、これは簡単にいえば納税をしばらく猶予させてもらい、12カ月の分割払いなどにさせてもらえる制度ですが、ここでいう「換価」とは、「物品を差し押さえて、競売などでお金にかえて、納税に充てる」というような意味合いを持ちます。
よって、「換価の猶予」とは、「本来なら差押すべきだが、それを特別に猶予してやる」と解釈したほうがいいでしょう。
そのくらい、税金滞納者が差し押さえされるのは、当たり前のことなのです。
とにかく、厳しくなってきました。
もし経営者が資金不足に陥った場合、限られた資金の中で、どう支払いに充てるか?
優先順位をつけるとするならば、
1番: 人件費(誰が何て言おうと従業員給与は最優先すべし)
2番: 本業に絶対に欠かせない支払い(重要な仕入、外注など)
3番: 税金と社会保険料(2番にしたいところだが、本業が停滞しないよう)
4番: その他、臨機応変に……(借金返済もここに含まれる)
という順位になりそうです。
(まあ、この優先順位は、事業再生においては10年前も20年前も変わらないですね)
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