「台湾有事」は本当に迫っているのか?外交攻勢で“外堀”を埋める中国の静かな戦略

 

台湾を安定して手元に引き寄せられる状況にこぎつけた中国

台湾側もこのことを気にしたのか、米中首脳の電話会談に素早く反応し、ロイターによれば台湾の頼清徳総統は、「米国との関係は『揺るぎない』ものであり、協力プログラムは継続され、変更はない」と述べたという。

だが、同じ時期、北京では中国共産党中央委員会台湾事務弁公室・海峡両岸関係研究センターと、中国国民党国政研究基金会が共同主催する国共両党シンクタンク・フォーラムが開催された。

これは国民党の代表団が訪れ、中国側と接触する前哨戦だと考えられていて、中台の別の意味での接近を象徴するフォーラムと位置付けられている。

国民党の新しい主席の鄭麗文は、中国との関係改善に前向きな党首として知られている。彼女が当選した時には習近平からいち早く祝電が送られている。

北京に日参する西側先進国の首脳たちが「一つの中国」という原則に理解を示し、一方で台湾の野党とも着実に関係を深める中国──。

この流れをどう理解すべきか。

日本では専ら「台湾有事は日本の有事」という発想で、欧米メディアにもそうした見方は根強い。

例えば、米外交誌『フォーリン・アフェアーズ』の2026年3月号は、「台湾に迫り来る嵐──北京を行動に駆り立てる複合要因」という記事を載せ、北京の武力行使に警戒すべきと警告している。

その理由は

北京は「ドナルド・トランプほど台湾に無関心で、台湾海峡に軍事介入してくる可能性の低い米大統領は今後現れない」と確信している

からだという。

だが、一方では中国を取り巻く外交環境や台湾内部の変化もあり、外堀は確実に埋められているようにも見える。

リトアニアの首相も台湾の事実上の大使館設置を「誤り」と認め、中国との関係改善に乗り出している。

北京にとっては、焦らず待っている方がはるかに安定して台湾を手元に引き寄せられる状況ではないだろうか。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年2月8日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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