「そばにいて」と願った少女の声が世界に突きつける現実。ヴェネチアで8冠を獲得した映画『ヒンド・ラジャブの声』は私たちに何を伝えたのか?

 

この映画は第82回ヴェネチア映画祭で銀獅子賞を含む8冠に輝いた。

史上最長とされる23分のスタンディングオベーションで迎えられた。

その華やかさは、現実世界でいまだに攻撃にさらされている市民を際立たせる。

監督はアカデミー賞に3度ノミネートされた実績を持つカウテール・ベン・ハニア。

フィクションとドキュメンタリーを行き交い新たな表現世界を展開するハニア監督は、ニュースやSNSで世界中に拡散されていた「ヒンドの声」を聞き、自ら映画化を決意したという。

保管されていた実際の音声記録や現地の映像を組み合わせて、極限までリアリティーを追求した映像で物語を構築した。

「その日、一人の少女の“叫び”に懸命に向き合っていた人たちの奮闘や苦悩を、圧倒的な緊迫感で描き出し観る者の心を掴んで離さない、魂が震える衝撃作が誕生した。」(公式サイト)

国連では、ネタニヤフ首相の演説前に、録音メッセージでパレスチナ自治政府のアッバス議長が「パレスチナ人の故郷において、その生命と存在そのものを脅かしている」と述べ、ネタニヤフ首相は「(自分を批判する者たちは)イスラエルを、ごくごく小さいイスラエルを、植民地主義だと非難している。我々を非難するのは、いったい誰か? その中にはイギリスやフランスの人々も含まれる。なんていうことだ。そもそも植民地主義という表現を作り出したのは、彼らなのに」と反論する。

再度、ハニア監督の言葉に心を傾けたい。

「映画は、彼女の声を記録し、国境を越えて響かせることができます。なぜなら、彼女の物語は、彼女一人のものではないからです。それはジェノサイドに耐え続ける人々全体の物語であり、罪に問われることのない犯罪的な政権によって引き起こされた悲劇です。そして、今回、この物語は『記憶』ではなく、『緊急性』を伴っています」(第82回ヴェネチア映画祭の授賞式)。

image by: Anas-Mohammed / Shutterstock.com

引地達也この著者の記事一覧

障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ジャーナリスティックなやさしい未来 』

【著者】 引地達也 【月額】 ¥110/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 水曜日 発行予定

print
いま読まれてます

  • 「そばにいて」と願った少女の声が世界に突きつける現実。ヴェネチアで8冠を獲得した映画『ヒンド・ラジャブの声』は私たちに何を伝えたのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け