“カッ!”と来た時は深呼吸を。誰もが加害者になり得る「カスハラ」の恐怖

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「なんでこんなこともできないの?」「責任者を出して!」。サービスを受ける側になったとき、思わず“カッ”とした経験はないでしょうか。『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では、著者で健康社会学者の河合薫さんが介護や航空業界など、さまざまな現場で起きているカスハラの実態を紹介しながら、なぜ人は“カッ”となってしまうのか、そしてサービスをする側と受ける側がよりよい関係を築くために何ができるのかを考えます。

“カッ”と来た時は?

10月1日より、改正労働施策総合推進法が施行され、全国すべての企業に対して、「カスタマーハラスメント(カスハラ)対策」が義務化されます。具体的には、従業員が相談できる窓口や専門家の設置、従業員を毅然と守る企業側の体制づくりなどです。

これまでは「現場の忍耐」や「個人のスキル」の問題とされていた状況が改善されるきっかけになれば、と願ってやみません。

一方で、介護職員などは、利用者さんの家という「密室」で一対一で対応しなければならず、第三者の目が届きにくいため、ハラスメントが発生しても助けを呼びづらいという深刻な課題があります。

国は「一人で対応させない体制づくり」や「危険時の安全確保」などを事業所に求めていますが、慢性的な人手不足が続く現場でどこまで実効性のある対応ができるか、大きな課題が残されています。

さらに問題なのは、利用者本人だけでなく「そのご家族」からのハラスメントです。

例えば、「契約外である家族全員分の食事作りや庭むしりを強要される」「気に入らないことがあると何時間も怒鳴られ続ける」「部屋に監視カメラをつけられ圧力をかけられる」といった事態が実際に起きているのです。

そもそも厚労省は、カスタマーハラスメントを「顧客等からの不当・過剰な要求や言動により労働者の就業環境が害される行為」と定義しており、これには「身体的な暴力」だけでなく「威圧的な言動」「拘束的な行動」「精神的な攻撃」などが含まれます。

文章で読むと「自分はそんなことをするわけがない」と思う方が多いかもしれません。しかし実際には、誰もが知らず知らずのうちに加害者になってしまうリスクを潜ませているのです。

実際、先日発表された「航空連合」のアンケート調査によると、客室乗務員や空港スタッフの約4割が、直近1年でカスハラを経験したと回答しました。

空港では「飛行機の乗り遅れ」による怒声や不当要求が急増(前回6%→今回30%)したほか、客室乗務員においては、安全のために不可欠なシートベルト着用の案内にまで不当な言動が向けられるなど、現場の苦悩が浮き彫りになっています。

私も新人の頃、おやすみ中の乗客のシートベルトチェックは、恐怖でした。

当時は「カスハラ」はもちろんのこと、「ハラスメント」という言葉もありませんでした。なので、嫌な顔をされたり、怒られたりしても、自分を責めるしかない。でも、だんだんとサービスになれてくると、言われなくなりました。

声をかけるタイミング、目線の高さ、声の大きさなど、先輩のサービスをみながら学び、勉強し、フライトにも慣れて、心の余裕ができたことも関係していたのだと思います。

つまり、カスハラをコミュニケーションの問題と考えれば、企業は従業員を守るだけでなく、知識や声がけのスキルなどを高める教育に取り組むことも、同様に重要だといえます。

それ以上に、現場の社員が「生き生きと働ける」職場の空気があれば、もっともっと心からの笑顔で、楽しんでサービスできるでしょうし、お客さんともいい関係が築けるのですけどね。

いずれにせよ、くれぐれも加害者にならないよう気をつけましょう。

カッと来た時は、大きく深呼吸をしてみてください。

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