社会に出ると、「学校教育の現場」の崩壊がどれほどの状況となっているのか実感しにくいものです。しかし、大卒の新人に基本的な教養やPCのスキルが不足している現状などは厳然として存在し、未来ある若者たちへ確実にしわ寄せが及んでいるようです。今回の無料メルマガ『アリエナイ科学メルマ』では現役科学者で高校・大学で教鞭も執られているくられさんが、現在の教育現場の惨状を記しています。
教育現場のゲンバ
自分は常々「学校の教育」が崩壊しているということを逆手に取った「簡単に成績を上げる方法」を紹介してきました。
しかし、その「崩壊」世代の人からすれば、年上の世代の人から「昔はみんな頭良かった」みたいに頭ごなしに言われるのは甚だ不快だろうし、「そんなこと言われてもどうすれば」みたいな話ですよね。
すべては受験教育が「学び」を破壊していると、自分は拙著『アリエナイ理科』シリーズで15年前から文句を言ってきたわけですが、何の因果か、高校や大学で教鞭を振るうことになっております(笑)。
悲しいかなここ10年くらいに関してはリアルタイムで生徒世代の情勢をみることができるわけです。
その10年くらいで気がついたことは、まず小学校から教育崩壊が始まっているということです。小学校で教えられる内容、ひらがな、カタカナ、最低限の国語力や算数…この段階からすでについて行けない人が一定数出ています。
昔だってそういう人はいました。いましたが、せいぜいクラスに一人二人だったのが、今や3分の1を占める学校もあるという話を聞きました。あくまで伝聞であって、自分で見たわけではないですが、これは驚くべきことです。
そうした、小学校レベルの問題ができない人が、そのままスライドして中学に入るとどうなるか。分数計算ができない人が中学の数学を理解することはまず不可能で、理数系が完全に終わった人が出てきます。
一方で、社会や国語などはその場しのぎで覚えれば、なんとかその場の点数は取れるので、崩壊は見えにくいです。しかし、知識として定着している人は少なく、覚えたことは抜けています。結局はその場しのぎなのでそんなもんです。
この状態で高校に入ると、基本的に大半の授業についていけない子がむしろ大多数になりつつあり、教科書をしっかり全部、1年以内に終わらせてそれを理解している子はおそらく1割にも満たない状態です。
そんな状態で大学へという話になるわけですが、前述の通り、壊滅状態である理系教科よりは文系教科の方がその場しのぎでも成績としてマシなので、文系コースになったりします。理系科目が苦手なので文系です…と名乗るのは変な話なのですが、それだけにヤバくて、しかもそのレベルでさえ大学を選ばなければ入れてしまう現実があります。
結果爆誕するのが「分数の計算ができない大学生」。まったく笑えない。
また、今年度から教科書の内容がガラっと変わり非常に詳しく分厚くなったのですが、各社中身がてんでバラバラで検定教科書というのが規格化されていない状態です。
これはこれで自分は好ましいと思うのですが、おそらく大学受験テストを作る側が一番困るのではないかと。しかも国の投げっぱなしな適当な受験方策でグダグダに拍車がかかって、これどえらいことになるんじゃないの…?と地味にびっくりしています。
なにより若い先生は今回の教科書の内容を説明できるのか甚だ疑問なレベルです。数研出版の化学とか、第一学習社の生物とか自分でも全部ちゃんと質問をさばける自信がないくらいに細かいです。
さて大学を選ばなければ誰でも入れるということ。大学も大学でウルトラ少子化ですから名前を書けば通るような大学が珍しくなく、また全体の学力が下がったことで、普通にちょっとだけやっただけでかなり良い大学に入れたりします。
当然大学で苦労するのですが、理系でなければ卒業だけならなんとかなることも多くて、その結果、大学という場でさえ「学ぶ」ことなくそのまま素通り、そして就職という流れになります。
勉強という勉強からすべて逃げてきた人は、教養?そんなモノ知りません。パソコン?もちろん使えません。スマホでしかテキスト打ちしたことないです!という人が少なくないです。
この状態で社会に放り出されて「役に立つ人材!」というのを求められるわけですから、優秀な子の取り合いになって、これまた求人はあるのに応募してくる子が大半取れない…という話にもつながっていく次第。
メルマガのざっくりした雑感記事にするレベルではないくらいヤバい話なのですが、また改めてその辺は掘り下げてみたいと思います。
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