優秀でありながら報酬や環境に恵まれない日本人研究者を、高待遇で自国に呼び寄せていた中国政府。しかし現在、科学技術分野の中国人の海外流出が激増していると言います。その背景には何があるのでしょうか。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、母国を後にする中国人が増え続ける裏事情を解説。彼らの移住先として日本が高い人気を誇っているという事実を紹介するとともに、我が国における早急なスパイ防止法制定の重要性を説いています。
※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2023年10月4日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
スパイの可能性はないのか。中国から日本への科学技術人材流出が増加の謎
中国から海外へ移民する中国人が激増、今年の3四半期ですでに昨年の移民数に匹敵する数字となっているそうです。
ニューヨーク・タイムズが報じたところでは、国家主席の任期を撤廃して習近平が終身政権を奪取できるようになった憲法改正や、ゼロコロナ政策の厳しい疫病対策規制の影響で、あらゆる分野の中国人専門家が海外へと移住を進めており、とりわけ科学技術に関する人材が流出しているそうです。
ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストである李淵氏によれば、中国が最も貧しかった1980年代から1990年代にかけて、優秀な人材はほとんどすべて欧米に職を求めて渡り、1992年には87万人もの人々が中国を離れたと指摘。しかし、中国が世界第2位の経済大国として台頭したことと、北京の移民引き留め政策のおかげで、2012年までに移民の数は12万5,000人にまで減少したそうです。
しかし昨年、流れは劇的に変わり、パスポートや渡航制限があるにもかかわらず、中国からの移民は31万人を超え、今年第1~3四半期の累計は昨年の数字に匹敵しているとのこと。
興味深いのは、テクノロジー分野では、アメリカが第1希望となっておらず、日本、オーストラリア、カナダ、ヨーロッパが好まれているということです。米中衝突により、ビザ取得が困難になっていることもその理由の一つのようです。
中国では、1994年以降、海外留学生や海外で仕事をする中国人人材の帰国を奨励してきました。さまざまな支援により帰国した中国人たちは「海帰族」と呼ばれました。彼らは中国に帰国すると、大学の枢要なポストに就いたり、ベンチャー企業を立ち上げるなどして、中国の近代化に寄与してきました。
こうしたことを背景に、経済成長にともない中国人の海外留学が急増しました。海外留学し、その後、中国に帰国してエリート街道を進むというのが、中国人の若者の夢となったのです。
しかし、留学生が急増するに従い、その質も下がっていきました。そのため、「海帰族」ブームも2000年に入ると沈静化し、むしろ海外留学したものの、帰国しても仕事が見つからない「海待族」が大量に生まれることになりました。
その一方で、中国経済が躍進すると同時に、官僚の汚職も天文学的な数字になっていきました。そして、巨額の不正蓄財と妻子を海外に逃がす汚職官僚が、1990年代中盤から増え始めました。彼らは「裸官」と呼ばれました。2011年に中国社会科学院が行った調査によると、それまでに海外逃亡した政権幹部の人数は1万8,000人、持ち出した金額は8,000億元(約10兆円)に上るとされています。
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