KDDIグループのビッグローブで発覚した架空取引問題は、企業統治のあり方や子会社管理の難しさを改めて浮き彫りにしました。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんは今回のメルマガで、単なる不祥事にとどまらない急成長事業に潜むリスクとガバナンスの在り方を問う今回の事例を、今後の企業経営にも示唆を与えるものとして語っています。
ビッグローブ架空取引、首謀者は「社内で表彰」も―広告事業の拡大を「怖い」と指摘した高橋誠会長
KDDIは2026年3月31日、ビッグローブおよびジー・プランで発覚した架空取引についての説明会を開催した。
内容や数字においては、2月に発表された内容とほぼ同一であった。すでに2月の段階で、かなり詳細が把握できたものと思われる。
今回の説明会で最も驚いたのが、ビッグローブで架空取引が行われていたことを最初に不信感を抱いたのが、高橋誠会長(当時、社長)だったということだ。
報告書によれば、ビッグローブの広告事業に対して「あまりにも伸びているので怖い」、「通信より大きくなっている。事業として指標で管理していることを見せてほしい。これだけ伸びているといつか何かが起きるかもしれないので注意してほしい」などと指摘するとともに「コンプライアンス的に問題ないか」との懸念を示したという。
当時、他の役員からはそうした指摘は出ていなかったという記述もある。
まさに「警部補 高橋任三郎」のような推理を働かせた。
確かに高橋会長はその段階でKDDIの社長を7年ほどやっており、会社やグループ全体の数字を俯瞰して見てきた実績がある。
また、KDDIはかつてau oneといったメディアを手掛けていたし、medibaといったアドやメディアマーケティング事業も行っている。
高橋会長は、そうしたネットで儲ける術を熟知しているわけで「通信よりも広告事業が伸びているビッグローブ」に対して、怪しいと感じるのは自然なことなのかもしれない。
実に99.7%が架空取引だったビッグローブの広告事業を、これまで全く見逃してきたという点は反省すべきだろう。松田浩路社長も言っていたが、子会社が行う事業に無関心だったというのは仕方のないことかもしれない。
KDDIはこうした子会社の架空取引事件に巻き込まれてしまったのだから、ピンチをチャンスに変えるべく、「架空取引を見つけてアラートを出すAI」を開発し、WAKONXで法人向けに販売すればいいだろう。
最近では社長の経営判断を学んだAIを社員に使わせる企業があるが、KDDIは高橋会長の「不正を見破る目」をぜひAIに落とし込んで、他の企業に売るべきだ。
KDDIが開発すれば、説得力は半端なく、なかなか他社も真似できないAIができるのではないか。
本当に不思議なのが「KDDIが謝罪すると、高橋会長の株が上がる」という点だ。
今回の報告書も、読んでみると高橋会長がヒーローのように見えてくるし、SNSでの評価も上々となっている。
やはり、今回の騒動は是非とも小説にすべきだし、ウェブメディア上に存在しない広告で金儲けをする「ネット地面師」としてNetflixでドラマ化してほしいものだ。
この記事の著者・石川温さんのメルマガ
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