自らが生きる時代をより深く考察するために欠かせない、歴史上の人物に関する知見。しかしながら現代日本には、先の大戦において重要な役割を果たした公人についての知識すら持たない層も多数存在しているようです。今回のメルマガ『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』では、『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』等の著作で知られる辻野晃一郎さんが、自身と山本五十六との「出会い」を幼少期の体験とともに回顧。さらに日米開戦を巡る山本の苦悩やその人物像を振り返りつつ、過去を知ることの意味と現代の政治指導者に求められる姿勢について論じています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです
山本五十六を知らない世代が作る日本という国
先日、たまたま流れてきたYouTube番組を観ていたら、元文藝春秋常務だった木俣正剛氏が、「今年の入社試験では、一次の筆記試験で、1,000人の応募者中2人しか山本五十六を知らなかった」と語っているのを聞いて驚きました。その時に思ったことは、「そうか、今や、日本という国を構成している人たちは、ロクに日本のことを知らないんだな」ということです。
【関連動画】高市早苗に取り憑いた戦前軍国主義の亡霊が日本社会を破壊する。元週刊文春・月刊文藝春秋 編集長 木俣正剛。元朝日新聞・記者佐藤章さんと一月万冊(2分8秒から2分45秒くらいまで)
それでXに以下のように投稿しました。
ある出版社の入社試験で、1000人の応募者のうち山本五十六を知っていたのはわずか2人だった、という逸話を聞いた。今や「日本の歴史を知らない日本人」がマジョリティになりつつあることを象徴するような話で、慄然とした??。出版社志望の人たちでこれでは、推して知るべしだろう。
— 辻野 晃一郎 (@ktsujino) August 22, 2026
辻野 晃一郎
@ktsujinoある出版社の入社試験で、1000人の応募者のうち山本五十六を知っていたのはわずか2人だった、という逸話を聞いた。今や「日本の歴史を知らない日本人」がマジョリティになりつつあることを象徴するような話で、慄然とした。出版社志望の人たちでこれでは、推して知るべしだろう。
● https://x.com/ktsujino/status/2090984321528242542
すると、意外にも30万インプレッション近くの反響がありました。中には、「山本五十六など知らなくてもよい。日本の歴史を考える上でさほど重要な人物ではない」というような反応も多くありましたが、本当にそうでしょうか。私はまったく違うと思います。
こういう反応を返してくる人は、おそらくただの知ったかぶりで、実際には山本五十六のことを何も知らない人なのだろうと容易に想像が付きます。
真珠湾攻撃を主導した山本五十六は、日米開戦に至る戦前の歴史や、太平洋戦争のことを考察する上では欠かせない極めて重要なキーパーソンの一人です。
彼の人物像や彼にまつわる史実については多くの資料が残っており、ネットでもさまざま閲覧できますから、ここでは詳細を省きますが、駐在武官として何度も米国に駐在した経験もある知米派で、日独伊三国同盟や日米開戦には最初から猛反対していました。
そのため右翼から暗殺されるリスクがあり、それを心配した海軍大臣の米内光正が、一時退避のために連合艦隊司令長官を任じたとされます。しかし、次の一言で歴史的な評価が分かれている人物でもあります。
当時の近衛文麿首相から日米戦争の見通しを問われた際に、「それは是非やれと言われれば初め半年や1年の間は随分暴れてご覧に入れる。然しながら、2年3年となれば全く確信は持てぬ」と答えたのです。
この発言によって、短期決戦であればなんとかなる、という誤解を周囲に与えたとされ、徹頭徹尾開戦に反対しなかったとして、後に批判されるもとになりました。しかし私は、この発言について、山本は米国と開戦すれば勝ち目が無いことを十分に理解していたものの、武人としての矜持と責任感が前半の勇ましい発言につながったのではないかと解釈しています。
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