身代金80億円を拒み、100万ドルの懸賞金を懸けた男。GMO熊谷正寿代表「逃げない危機管理」の解剖

Konskie,,Poland,-,June,11,,2019:,Gmo,Internet,Inc,Company
 

GMOインターネットグループが大規模なサイバー攻撃を受け、利用者情報の流出が問題となるなか、熊谷正寿代表の危機対応が注目されています。今回のメルマガ『上杉隆の「ニッポンの問題点」』ではジャーナリストの上杉隆さんが、今回の事件における熊谷代表の判断を振り返り、危機管理におけるリーダーシップのあり方と、企業が果たすべき責任について考察します。

GMO熊谷正寿はなぜ身代金を拒んだのか?サイバー攻撃への異例の対応と経営責任

10月27日正午。犯行グループが一方的に突きつけた「期限」が過ぎた。GMOインターネットグループは一円たりとも払わなかった。予告どおり、攻撃者は利用者の情報をネット上に晒し始めた。

その日の夜、GMOは反撃に出る。犯人の特定と検挙につながる情報に、総額100万ドルの懸賞金を懸けると発表したのだ。100万ドル――それは、犯人がこの日正午を期限に要求していた額と一致している。

払えと脅された額を、そのまま犯人を追い詰める側に回す。日本の企業経営者が、ここまで明快でかつ攻撃的な対応に出た例を筆者は寡聞にして知らない。

本稿は、代表の熊谷正寿がこの9日間に下した判断をリーダーシップの観点から解剖した。ただし、称賛で終わらせるつもりはない。事後の見事さは、事前の失敗を帳消しにはしない。その両面を分析しようと思う。

一、9日間で何が起きたか

舞台は、GMOインターネットの「お名前.com デスクトップクラウド」。クラウド上のWindowsを遠隔で使うサービスで、FXの自動売買ソフトを24時間動かす基盤として使われてきた。影響の可能性のあるサーバーは最大で2万6739件ともいわれる。利用者はそこに証券会社やFX会社の口座のIDとパスワードを保存していた。犯人が狙ったのはまさにそこである。時系列で振り返ってみる。

今回の事件における熊谷代表の判断を振り返り、危機管理におけるリーダーシップのあり方と、企業が果たすべき責任について考察します。

10月19日 調査開始
10月20日 一部サーバーで第三者の不正プログラムを確認。同日夜、全プランを停止
10月21日 不正アクセスを公表。この日17時を期限に、攻撃者はGMOに5000万ドル(約80億円)を暗号資産で要求していた
10月22日 取引口座のログイン情報が取得・悪用された可能性を公表
10月24日 第4報。実損の補償、全利用者に一律5000円、代替基盤の6カ月無償化、脅迫に応じない方針、政府への能動的サイバー防御「発動第1号」要請。同日、攻撃者は27日正午を期限に100万ドルを要求する声明を出す
10月25日 熊谷代表がブログで謝罪。社内ホワイトハッカーの事前指摘を自ら開示し、実損の全額補償を表明
10月26日 ブログに追記し、80億円要求と脅迫文を公開。木原官房長官は、無害化措置は企業の要請の有無にかかわらず警察・防衛省が判断すると述べる。同日、首相官邸でサイバー関係閣僚会議
10月27日 正午以降、攻撃者が情報公開を開始。GMOは特別見舞金(1公開あたり上限300万円)、総額100万ドルの懸賞金、悪質な拡散者への法的措置を発表
10月28日 正午、懸賞金の情報受付を開始

被害はGMOの外にも広がった。FX業者の外為ファイネストは、不正ログインと不正取引の発生を認めている。攻撃者は、利用者の口座から総額2800万ドルを「消滅させた」とまで主張する。真偽は確認されていない。だが、寝ている間にポジションを勝手に決済され、資金を失ったと訴える個人トレーダーの声はすでに複数のメディアが伝えている。

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