「マオ(浅田)にも感謝したい」
内山航平選手とオレグ・ベルニャエフ選手、吉田沙保里選手とヘレン・マルーリス選手の真心の籠もったライバル振りを見て、どうしても思い浮かんでくるのが、フィギュア・スケートの浅田真央選手とキム・ヨナ選手の関係だ。
浅田選手の高難度の演技につけられた点数が余りにも低いので海外メディアが「馬鹿げている」と怒り、会場がブーイングに覆われたり、逆にキム・ヨナが転倒しても最高得点を出して、解説者も「(得点が)ここまでどうして出てしまったのか、わからないと正直感じた」 と語った場面まであった。
浅田真央選手が高難度の演技に真摯に取り組む姿は、世界の選手に感銘を与えていた。
女子でトリプルアクセルに2回転をつけて跳ぶことがどれだけ大変か。それでも勝てないなんて…。
マオ(浅田)にも感謝したい。果敢にトリプルアクセルに挑んだ姿を見て、私は悲しいことなんか忘れて正直、燃えたわ。ありがとう。
(ジョアニー・ロシェット、カナダ、10年バンクーバー銅メダリスト)
なんて言ったらいいのかわからない。ジャッジはキムの何もかもに加点しまくっている。
真央のスケートには誠実さがある。素晴らしいことだよ。傲慢さがない。そこが好きなんだ。
浅田のスケートには静かな無垢さ(イノセンス)があって、そこが魅力的だと思う。作った見せ掛けの態度みたいなものがなくて、スケートそのものをするという感じ。
(エルヴィス・ストイコ、カナダ、94年リレハンメル銀、98年長野銀)
日の丸と真心
キム・ヨナの得点に関する疑惑と反感は、スケート選手の間では相当広まっていたようで、ソチ五輪の競技後のエキジビションではキム・ヨナ一人が仲間はずれにされたり、記者会見でもキム・ヨナがまだ話している内に他の選手が席を立ったりした。
メダルさえとれれば、何をしても良い、という姿勢が、自分たちの神聖なスポーツを汚している、という怒りが、広がっていたのだろう。
疑惑の採点などがなければ、浅田真央選手もフィギュア・スケートの究極を究める事に集中し、その過程で世界のライバルとも美しい争いを繰り広げられたはずだ。そう思うと、改めて、ドーピングや疑惑の判定で、スポーツの神聖さを汚してきた国々に対する怒りが込み上げてくる。
今回は表彰式で日の丸が何度も上がった。日の丸の白は「神聖と純潔」、赤は「博愛と活力」を現すと言う。正々堂々とルールを守り、自らの競技の究極を究めようとする日本選手たちの真心を象徴した国旗ではないか。
文責:伊勢雅臣
image by: 首相官邸
『Japan on the Globe-国際派日本人養成講座』
著者/伊勢雅臣
購読者数4万3,000人、創刊18年のメールマガジン『Japan On the Globe 国際派日本人養成講座』発行者。国際社会で日本を背負って活躍できる人材の育成を目指す。
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