リオ五輪で見えた大会を汚した国々の「嘘」、輝かせた日本の「真心」

 

「それは無駄な質問だ」

真心の籠もったライバル関係を見せたのが、個人総合で金メダルをとった内田航平選手と銀メダルをとったウクライナのオレグ・ベルニャエフ選手。内村選手は5種目までベルニャエフ選手にリードを許しながら、得意の鉄棒で最後に大逆転した。オリンピック2連覇で、世界選手権も含めると8年連続で個人総合の王者の座を守った。

表彰後のインタビューで、ある海外の記者から「あなたは審判に好かれているんじゃないですか?」という質問が飛んだ。失礼な質問にも内村選手は淡々と「まったくそんなことは思ってない。みなさん公平にジャッジをしてもらっている」と答えたが、横にいたベルニャエフ選手が怒った

審判も個人のフィーリングは持っているだろうが、スコアに対してはフェアで神聖なもの。航平さんはキャリアの中でいつも高い得点をとっている。それは無駄な質問だ。

 

航平さんを一生懸命追っているが簡単じゃない。この伝説の人間と一緒に競い合えていることが嬉しい。世界で1番クールな人間だよ。

銅メダルの英国ウィットロック選手も、「大変素晴らしい。彼は皆のお手本です。今日の最後の鉄棒は言葉がない。クレイジーとしかいえない」と声をそろえ、内村選手は気恥ずかしそうにはにかんでいた。

「誰にもできないところまでもっともっとやってほしい」

ベルニャエフ選手の祖国ウクライナは争乱状態が続いており、練習施設も貧しく、国からの給料も月100ドルほどしかない。毎週試合に出て、活動費を自分で稼がなければならない状態だという。

その実力を見込んで、他国から、国籍を変えて出場しないか、という好条件の申し出がなされたが、ベルニャエフ選手は家族や友人のいるウクライナから離れることを拒否している。

内村選手に関しては、過去にこんな発言をしている。

内村は本当に神話的な選手。でも、僕の目標はシンプルだ。彼と戦うことさ。

こういう選手が、内村選手に対する質問に怒ったのも、当然だろう。質問が内村選手にとって失礼というだけでなく、自分が目標としてきた内村選手を貶めるような質問は、自分の生き方に対する侮辱でもある、と受け止めたのではないか?

内村選手も、ベルニャエフに関して、次のように語っている。

オレグ選手がすごいことをやってきたので、本当にぎりぎりで勝ったという感じなので、次はないと。…それぐらいの選手になったし、次からの世界の体操は彼に引っ張っていってほしいなという感じもあります。

 

オレグ選手には、全種目を高難度でやるという僕には信じられないことをやっているので、誰にもできないところまでもっともっとやってほしいとも思っています。

誰にもできないところまでもっともっとやってほしい」という発言からは、体操という道を共に究めようとする同行者と考えているように聞こえる。

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