リオ五輪で見えた大会を汚した国々の「嘘」、輝かせた日本の「真心」

 

記憶に残る真心のドラマ

金メダルをとれなかった事が、ニュースになった場面もあった。誰もが金メダル間違い無しと信じていた女子レスリング53kg級の吉田沙保里選手が決勝戦で敗退して、銀メダルに終わり、五輪4連覇を逃した時だった。

吉田選手を破ったのは、米国のヘレン・マルーリス選手。終始、闘志をむき出しにして立ち向かい、1点先取されたが、その後4点取って、逆転勝ちを収めた。敗戦が決まった途端、吉田はマットに泣き伏したが、マルーリス選手も同様に泣き崩れた。

マルーリス選手は12歳の時に吉田選手を観て憧れ、両親の反対を押し切って、吉田選手に勝つことを目標にレスリングをやってきたという。マルーリス選手は、表彰台で米国初の金メダルを受けとった際も「これをずっと夢に見てきた」と顔を覆って大粒の涙を流した。

そして、試合後には「彼女と戦う準備をずっと続けてきた。彼女は私のヒーロー。彼女は最もたたえられているレスラーで、彼女と試合をできたのは本当に名誉なことだった」と語った。

吉田選手の4連覇はならなかったが、事前の予想通りすんなり4連破を記録するよりも、記憶に残る真心のドラマが生まれたのではないだろうか。

「そんなことないですよ。素晴らしい戦いでした」

試合後に、吉田選手が号泣しながら受けたインタビューがまた、感動的だった。

─ 素晴らしい試合でした。今の気持ちを振り返ってください

 

(吉田選手は号泣しながら)「たくさんの方に応援していただいたのに、銀メダルに終わってしまって申し訳ない」

 

─ そんなことないですよ。素晴らしい戦いでした

 

「日本選手の主将として金メダルを獲らなければならないと思って、ごめんなさい」

 

─決勝戦、非常に厳しい戦いでしたが、あえて敗因をあげるとしたら?

 

「やっぱり自分の気持ちが、最後は勝てるだろうと思って、とりかえしのつかないことになっていまって…」

 

─そんなことは誰も思ってないと思います

 

(中略)

 

「最後は自分の力が出し切れなくて…」

 

─日本中では拍手を送ってくれていると思います。素晴らしい銀メダルでした。ありがとうございました。

アナウンサーはNHKの三瓶宏志氏。応援してくれる人々に申し訳ないという吉田選手の真心と、その奮闘振りに感謝するアナウンサーの真心が響き合ったインタビューだった。

print
いま読まれてます

  • リオ五輪で見えた大会を汚した国々の「嘘」、輝かせた日本の「真心」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け