リオ五輪で見えた大会を汚した国々の「嘘」、輝かせた日本の「真心」

 

「相手がいますから。しっかりと冷静に礼をして降りようと」

まずは、美しい柔道で金メダルをとったのが、柔道男子73kg級の大野将平選手。ロンドンでは日本男子柔道は史上初の金メダル無しで終わったが、今回も男子90kg級、女子48kg級、男子66kg級、女子52kg級といずれも銅で終わり、重苦しいスタートとなった。それを一挙に吹き払ったのが、大野選手だった。

準決勝を除くすべての対戦に一本勝ちを収めた。決勝戦の相手は、アゼルバイジャンの欧州王者ルスタフ・オルジョフ。「一発のある選手」と警戒しながらも、接近戦で勝負に出た。得意の内股で1分44秒に技ありを奪った。

ポイントをリードした後に、大野の消極的な姿勢に指導が入ると、「逃げるより、攻め抜いて投げてやろう」と、再び攻めて、3分15秒、鮮やかな小内刈りで一本をとった。日本柔道界に2大会振りの金メダルをもたらした勝利だったが、大野選手は笑顔もなく、厳しい顔をしたまま、深々と礼をして、オルジョフと握手で健闘を讃えあった。

ガッツポーズも、喜びの表情もない理由として、大野選手は「相手がいますからしっかりと冷静に礼をして降りようと」と語った。

勝負には勝ちもあれば、負けもある。敗者への思いやりを込めて、礼に始まり、礼に終わる武道の精神。試合後、大野は「柔道の素晴らしさ、美しさ、強さを伝えられたと思う」と語った。だが、井上監督から「プレッシャーの中、よく取ってくれた」と声をかけられると、張り詰めたものから解放されるかのように涙があふれたという。

柔道が世界に広まって「ジュードー」となり、ポイントを奪ったら、いかに逃げ切るか、というせこい勝負になった時期もあったが、礼に始まり礼で終わる美しく強い柔道」という理想を追い求める大野の真心が爽やかだった。

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