日本が1位を獲得。「世界読み書き能力ランキング」が意味すること

2016.11.17
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世界の大学を順位付けした「世界大学ランキング」は、世界中が注目する影響力の強い指標となっていますが、近年日本の大学のランク低下による凋落ぶりがメディアでもよく取り上げられています。しかし、それは一面的な見方なのかもしれません。というのも、先日、OECD(経済協力開発機構)が発表した「大人の読み書き能力」のランキングでは日本が1位に輝いているからです。

OECDの「読み書き能力ランキング」で日本は1位

BBCは先日、OECDが毎年発表している「Education at a Glance(図表でみる教育)」を考察し、「どの国の学生が1番賢いか?」という分析記事を掲載しています。

記事の中では、大学を卒業した25歳〜64歳までの大人を対象にした、世界の読み書き能力ランキングに注目していますが、この1位に輝いたのは日本。

続いて、フィンランド、オランダ、スウェーデン、オーストラリア、ノルウェイ、ベルギー、ニュージーランド、イギリス、アメリカという順位となりました。

OECDが発表した「読み書き能力テスト ランキング」

1位 日本
2位 フィンランド
3位 オランダ
4位 スウェーデン
5位 オーストラリア
6位 ノルウェイ
7位 ベルギー
8位 ニュージーランド
9位 イギリス
10位 アメリカ

英インディペンデント紙は、「英国は日本や他のヨーロッパ諸国よりも下位だった」と、この結果を懸念した内容で報じています。

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image by: OECD

同紙は、この結果を踏まえた上で、アメリカやイギリスは世界大学ランキングの上位を占めているのに、OECDのテスト結果ではなぜ上位ではないのか、といった疑問を投げかけています。

こちらが、イギリスの評価機関が毎年発表している「世界大学ランキング」です。

世界大学ランキング(QS World University Rankings 2016-17)

1位 マサチューセッツ工科大学 (アメリカ)
2位 スタンフォード大学 (アメリカ)
3位 ハーバード大学 (アメリカ)
4位 ケンブリッジ大学(イギリス)
5位 カルフォルニア工科大学 (アメリカ)
6位 オックスフォード大学(イギリス)
7位 ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(イギリス)
8位 チューリッチ工科大学(スイス)
9位 インペリアル・カレッジ・ロンドン(イギリス)
10位 シカゴ大学 (アメリカ)

ご覧の通り、世界大学ランキングの表を見てみると、MITやスタンフォード、ハーバード、ケンブリッジなどのアメリカやイギリスの名門校が上位を独占しています。

しかし、OECDのランキングに名を連ねる国は、トップの日本を含め1つもありません。

この違いから見えてくるものとは?

国際的な指標として知られるこの2つのランキングの違いは何でしょう?

【対象者】

OECDテスト:高等教育を受けた者が対象

大学ランキング:エリートグループに分類される各大学を指標化したもの

【重視する点】

OECDテスト:テストの結果を重視

大学ランキング:個々の大学の制度に重点を置き、評判、職員数から研究論文まで、広範囲に渡る要因が測定されている

根本的に対象者やランキングの測り方が違いますが、どちらかというと、OECDはテスト結果に基づいているので、各国の学力をフェアに比較することができます。

インディペンデント紙は、OECDのトップ35カ国の中で、日本は高学歴者が最も多く、2位のフィンランドも同じ状況で、どちらの国も15歳の生徒を対象にした「国際学力調査(PISA)」でも上位を占めていることを指摘。

つまり、日本やフィンランドは子供も大人も国際的に学力が高いということが言えます。

一方、「大学ランキング」のトップを占めているアメリカはどうでしょう。

「アメリカのすべての大学を比較した場合、最上位と最下位のどちらにもランクインするだろう」(OECDの教育ディレクターのAndreas Schleicher氏)という見方もされているように、国単位で考えた場合、名門大学を抱えるアメリカ全体の学力には差があり、極めて2極化した教育システムを形成しているため、エリート層を対象にした大学ランキングシステムではその対極にある部分は見えてこないというのです。

また、「読解力」や「数的思考力」は移民を受け入れている国で低い傾向があり逆に移民の少ない日本においては、均一的な学力が備わっているという見方もあります。

移民を多く抱えるアメリカやフランスなどは、確かにこのランキングでは下位にあり、少なからずとも影響を与えているのかもしれません。

また、2013年の国際成人調査の結果が発表された際に、ワシントンポスト紙は、他国と比べて、アメリカ人の大人の学力が低いことを深刻な問題として報じています。

高度な読み書き能力を身につけるという意味では、下位にランクインしたイタリア、スペイン、ギリシャの大学や職業専門校を卒業するよりも、日本、フィンランド、オランダにおける高卒資格の方が良いかもしれない」(Schleicher氏)

世界的にみて、日本人の大卒者は高度な読み書き能力があるという結果は、日本人としては喜ばしいことですね。

一方では、「数的思考スキル」、「データ読解」なども考慮に入れて、その総計を図るべきだというも上がっているように、何を持って「優秀さ」や「頭の良さ」を図るかは意見の分かれるところではあります。

今回のOECDの結果のような「大学ランキング」とは違ったデータをみると、世界的に日本の学力の高さが判明しましたが、OECDのデータもまた新たな視点から日本と世界を比較する大きな指標になるのではないでしょうか。

Image by: Shutterstock

Source by: BBC,  OECD

文/桜井彩香

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