お酒の強さは「飲めば鍛えられる」って言うけどホントなの?

2017.04.06
by Mocosuku
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新人歓迎会があったり、花見があったりと、何かとお酒を飲む機会が増える春。

大勢で集まってお酒を飲むと、しばしば話題になるのが「お酒の強さ」。

「お酒の強さは鍛えられる」などといわれることもあるようですが、本当なのでしょうか?

今回は、「お酒の強さ」について解説していきます。

アルコールの分解

まずは、私たちがお酒を飲んだとき、身体の中でアルコールがどのように分解されるのかをお話していきましょう。

体内に摂取されたアルコールは、おもに胃や小腸で吸収されます。

また、吸収とともに、肝臓でアルコール分解が始まります。

胃や小腸で吸収されたアルコールは、おもに「ADH(アルコール脱水素酵素)」によって「アセトアルデヒド」に分解されます。

さらに、アセトアルデヒドは、いくつかの酵素によって分解されます。

このとき、とくに「ALDH2(2型アセトアルデヒド脱水素酵素)」という酵素が中心となってアセトアルデヒドが酸化され、酢酸になります。

さらにその後、分解されて最終的に水と二酸化炭素になり、体外へと排出されます。

では、お酒の強さは何で決まるのでしょうか?

「お酒の強さ」は何で決まる?

ご存知の方も多いと思いますが、お酒の強さは体質が大きく関係しています。

そして、この体質を決めているのが「ALDH2遺伝子」です。

ALDH2遺伝子は、大きく活性型と不活性型に分けられ、さらに不活性型は部分欠損型と欠損型に分けられます。

お酒の強さは、以下の3タイプのうち、どの遺伝子を持っているかで決まります。

活性型(NN型)

ALDH2を正常に活性させられるタイプ。活性型の遺伝子を持っている人は、いわゆる「お酒が強い」「酒豪」といわれる。白人や黒人のほとんどがNN型を持っているが、日本人を含むモンゴロイド(黄色人種、モンゴル人種)の場合、NN型を持っている割合はおよそ56%ともいわれている。

部分欠損型(ND型)

不活性型のひとつ。NN型に比べてALDH2の活性が16分の1程度のタイプ。ある程度のお酒は飲むことができる。モンゴロイドのおよそ40%がこのタイプともいわれている。

欠損型(DD型)

不活性型のひとつで、ALDH2の活性がないタイプ。このタイプの人はほとんど飲むことができず、一般的に「下戸(げこ)」と呼ばれる。モンゴロイドのおよそ4%が該当するともいわれている。

このうち、不活性型である部分欠損型と欠損型の人は、アルコールを摂取するとアセトアルデヒドの分解に時間がかかるため、顔面の紅潮、吐き気、頭痛、眠気、動悸といった症状が現れやすくなります。

このような反応のことを専門的には「フラッシング反応」といいます。

また、肝臓の大きさや年齢もアセトアルデヒドが分解されるスピードに影響を与えていて、一般的に肝臓が小さい女性、年齢が高い高齢者などは分解のスピードが遅く、フラッシング反応も出やすくなります。

このように、お酒の強さは生まれつきの体質などに大きな影響を受けています。

では、お酒を飲む量を増やすことで強くなることはないのでしょうか?

「飲めば強くなる」はホント?

最初にお話ししたように、摂取されたアルコールの大部分は、ADLやALDH2によって分解されますが、ほかの酵素によって分解されるものもあります。

そのひとつが「MEOS(ミクロソームエタノール酸化系酵素)」です。

MEOSには、もともと薬物などの身体にとって異物とされるものを代謝したり、たんぱく質を合成する働きがありますが、アルコールを分解する働きもあります。

MEOSは、慢性的にアルコールの摂取量が増えるほど、活性が誘導される酵素です。

そのため、お酒を飲むことでMEOSによるアルコールを分解するスピードが速くなることはあります。

ただ、MEOSによってアルコールが分解されるスピードが上がって一時的に飲める量が多くなっても、アセトアルデヒドを分解するALDH2の量が増えたり、働きが活性化されるわけではありません。

そのため、アセトアルデヒドが体内に蓄積され、フラッシュ反応や二日酔いを引き起こします。

また、MEOSはアルコールを分解する過程で活性酸素を発生させます。活性酸素は増えすぎると、肝細胞を傷つけるため、MEOSの働きが活性することは決して良いことではないのです。

こんなリスクもあるので注意を!

慢性的にアルコールをたくさん摂取すると、アルコールへの耐性がつき、これまでと同じ量を飲んでも酔いを感じにくくなります。

同じ量でも満足いかなくなると、自分がお酒に強くなったような感覚に陥るかもしれませんが、次第に酒量が増し、最終的にアルコール依存症を発症する危険性があります。

アルコール依存症になると、時間帯に関係なく飲酒することで社会生活に支障をきたすこともありますし、肝機能障害のリスクも高くなります。

これまでお話ししたように、お酒の強さは、年齢や先天的な体質が大きく影響するものであり、無理に飲んで鍛えるという考え方はキケンです。

ですから、安易な考えのもとに酒量を増やしたり、他人に強要することは、絶対にやめましょう。

厚生労働省の「健康日本21」では、適切な飲酒量について、「通常のアルコール代謝能を有する日本人においては、節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで20g程度である。」と記しています。

これを種類別に換算すると、ビール(中ビン)では1本、日本酒では1合、チュウハイ(アルコール濃度7%)では350mL缶1本に相当します。

お酒が飲む機会が増える季節、適切な飲酒量を心がけ、楽しく健康に過ごしたいものですね。

参考
・国税庁『あなたはお酒が強い人?弱い人?
・厚生労働省『健康21(アルコール)』

 

執筆:吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
医療監修:株式会社とらうべ
 

<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
助産師・保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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記事提供:Mocosuku(もこすく)

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