日本の「蚊帳」が世界を救った。米国の横ヤリにもめげぬ日本企業

 

「三方良し」経営の世界的な成功事例

アフリカでの製造技術移転先として、ピエールからの紹介もあり、タンザニアの企業AtoZが選ばれた。住友化学が設備投資のアドバイス、機械の調達先の紹介、ライン作り、作業者の指導まで行った。

やっとのことで生産ラインを設置し、しばらく経ってから、住友化学の指導員が訪問してみると、工場の床は散乱し、物も乱雑に置かれていた。そんな状況から、指導を繰り返し、2005年には300万張りへと拡大することができた。

冒頭で紹介した米倉がダボス会議で「これだけ多くの世界中の人々に、うちの蚊帳は期待されているのか」と感じたのは、この頃のことであった。

ユニセフからは再三にわたり、オリセットの供給能力を年産数千万張りに増強して欲しいとの要求が来ていた。増産のために、現地でのもう一つの製造会社として、AtoZ社のグループ会社と住友化学のジョイント・ベンチャーを作った。

こうした思い切った増産により、現在、タンザニアの生産能力は年間3,000万張りに達し最大7,000人もの雇用機会を生み出している。なによりもオリセットネットやその他の対策の効果もあいまって、マラリアによる死者はかつての100万人規模から現在では60万人レベルに減少している。

拙著『世界が称賛する 日本の経営』では「売り手良し、買い手良し、世間良し」の「三方良し経営が日本の経営の本質だと説いたが、オリセットネットはその世界的な成功事例と言えよう。

文責:伊勢雅臣

image by: punghi / Shutterstock.com

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