全てはシナリオ通り。森友疑惑で炙り出された「影の総理」の存在

 

補佐官も、人によって強弱はあるものの、立場は似通っている。加計学園の獣医学部新設計画について、前文部科学事務次官、前川喜平氏は2016年9から10月にかけ、和泉洋人首相補佐官に何度か官邸へ呼び出され、「総理は自分の口から言えないので」と、獣医学部新設を早く認めるよう求められたという。

つまり、総理は自らの口で指示を伝える必要がない。秘書官、参事官、補佐官らが、総理の意向をくんで各省庁を動かしてゆく。首相は「関与していない」という態度をとり続け、秘書官らは総理に忠誠を尽くして真実を隠ぺいする。

結局、割を食うのは総理秘書官らから難題をふっかけられたあげく、国会で追及され、詰め腹を切らされる各省庁の幹部たちである。上ばかり見るヒラメ官僚のきらいがあったが、前国税庁長官、佐川宣寿氏などはその一人であろう。

たとえば、安倍首相に政治家や識者が面会を希望しても、今井秘書官が「会わせたくない」と思えば「スケジュールがいっぱいで」と断わられる。さまざまな重要情報のうち、首相の耳に入れたくないものは握りつぶす。安倍首相は今井氏が選別した情報しか与えられず今井シナリオ通りに動くほかなくなる。

してみると、安倍政権の本質は、今井氏を抜きに語れないということにもなるであろう。

今井氏については当メルマガでこれまで何度も書いてきた。だが、その実像は、われわれ国民には見えない。官邸記者クラブのメンバーはオフレコの懇親会などで彼に接しているが、その言動が報じられることはまずない。

しかし、知り合いの政治部記者からその人物像が漏れ伝わることはある。しばしば耳にするのは「剛腕」「傍若無人」といった評判だ。昨年9月4日の「NEWSポストセブン」にこんな記事が載った。

『取扱厳重注意』と印字されたA4判2枚のペーパーがある。今井氏が官邸詰め記者とのオフレコ懇談(8月16日)で語った内容を記したメモだ。そこには決して漏れてはいけないはずの官邸での総理との生々しいやりとりがこう書かれている。

 

〈ある記者に安倍総理が、「最近今井さんが僕に厳しい」と漏らしたと聞いたから、僕は机を叩いて、「国民のために総理をお支えすることに命をかけている。総理がそんな姿勢なんだったら今すぐ秘書官を辞めてやる」と言ったんだ。そしたら、安倍総理が謝ってきた〉

安倍首相が謝ってきたと自慢げに語るのはどうかと思うが、今井氏が激しい気性の持ち主であり、力づくででもコトを進めるタイプであることがよくわかる。

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