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2021年の不動産市況を大予測!マイホームは“買い”か“待ち”か=姫野秀喜

2021年の不動産市況はどう動くのか。今回は不動産全般のうち、特にマイホーム購入について今年は“買い”なのか“待ち”なのかについて分析してみました。(『1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ』姫野秀喜)

※マイホームの購入エリア・物件種別ごとの「損得まとめ表」を先に確認したい方は、下記リンクをご覧ください。
●2021年に家を買うべきか?待つべきか? 持家(自ら建築)・マンション(分譲)・分譲戸建別のマトリックス表

【関連】日本を襲う地価下落。コロナ禍でも上昇した選ばれし市区町村とは?=姫野秀喜

プロフィール:姫野秀喜(ひめの ひでき)
姫屋不動産コンサルティング(株)代表。1978年生まれ、福岡市出身。九州大学経済学部卒。アクセンチュア(株)で売上3,000億円超え企業の会計・経営計画策定などコンサルティングに従事。合間の不動産投資で資産1億円を達成し独立。年間100件以上行う現地調査の情報と高い問題解決力で、顧客ごとに戦略策定から実行までを一貫してサポートしている。著書に『確実にもうけを生み出す不動産投資の教科書』(明日香出版社)、『誰も教えてくれない不動産売買の教科書』(明日香出版社)、『売れない 貸せない 利益が出ない 負動産スパイラル』(清文社)がある。

買いたいときが買い時。しかし気になる資産価値の上下

毎年この時期(新年)になると聞かれるのが、今年の不動産市況はどうなるのか?という質問です。今回は不動産全般のうち、特にマイホーム購入について2021年は“買い”なのか“待ち”なのかについて分析してみました。

そもそも、私自身が常々皆様にお伝えしているのは、マイホームは“買いたいときが買い時”ということです。マイホームは、ご自身の収入や年齢、転勤や転職などのライフイベント、家族構成などなど、極めて個人的な事情に基づいて購入するものであり、投資物件と異なり景気動向や不動産市況に基づいて購入するものではないからです。

そのため、地価が値上がりしようと値下がりしようと、マイホームが欲しい人は欲しいときに買うのが正解です。

そうは言ってもやっぱり、自分の買うマイホームの資産価値が上がるのか、下がるのか、今年は安く買えるのかってこと、気になっちゃいますよね。

今回はマイホームが“買い”か“待ち”かについて、「地価上昇・下落」の側面からと「需要と供給」の側面から分析しました。

今年も地価の下落傾向は継続へ

まずは1976年から2020年までの地価変動率のグラフを見てください。

2008年のリーマンショック以来、順調に回復してきた地価が2020年に反転し、下落していることがわかると思います。

今回のコロナショックはまたリーマンショックとは異なる状況なため一概には言えませんが、不動産は景気の遅行指標であるため、今年や来年(2022年)に遅れて動くことが予想されます。

どんなに早くてもコロナウイルスのワクチンが日本で普及するのが今年の後半でしょうから、来年もあまり景気が良くなることはないでしょう。

そのため、2021年も地価の下落傾向は継続することが想定されます。

次に2010年~2020年の地価変動率を拡大したグラフを見てください。

リーマンショック時は2009年を底に3大都市圏(東名阪)および全国平均は早々に上昇トレンドに反転しました。しかし、地方圏はその後も2011年まで地価の下落が続きました。

今回のコロナショックも同様に、3大都市圏が先行し2025年頃には上昇トレンドになる可能性が高いです。しかし、もともと緩やかな下落トレンドであった地方圏の回復はまだまだ先になりそうです。

これらの地価変動率から言えることは、「数年待てば、土地が安くなる」ということです。

もちろん、日本全国での平均的な地価の話ですから、個別に値上がりしているエリアや物件などが安くなるということではありません。

では、具体的にはどのエリアが値上がりし、どのエリアが値下がりするのかというのを見てみましょう。

Next: 地価が上がるのはどのエリア?/2021年、マイホームの需給は



地価が上がるのはどのエリア?

47都道府県別の地価変動率を見ると、2019年には15都府県で地価が上昇していたのですが、2020年には5都県しか地価が上昇していないことがわかります。具体的には「宮城県」「東京都」「福岡県」「大分県」「沖縄県」の地価が上昇し、残りの道府県は全て地価が下落しているという状態です。

さらに市区町村別で地価の上昇・下落を細かく見てくと、全国の市区町村のうち275市区町村のみが地価上昇していることがわかります。

その275市区町村のうち、前年よりも上昇率が高いエリア、いうなれば値上がりしているエリアは26市区町村です。具体的には北海道の10エリア、岩手県の3エリア、宮城県、秋田県、山形県、茨城県、大阪府で各1エリア、熊本県、大分県で各2エリア、沖縄県の4エリアです。

これらのエリアでマイホームの購入を希望している人は、地価が上昇する前に購入するのがよいと言えるでしょう。

市区町村別の地価上昇率の内訳は、以前の記事にて細かく掲載していますので、お住まいの市区町村の地価が上昇しているかどうか、気になる方は以前の記事をお読みください。

【関連】日本を襲う地価下落。コロナ禍でも上昇した選ばれし市区町村とは?=姫野秀喜

2021年 マイホーム全体の需要と供給

先ほどは地価全般のトレンドを見ましたが、マイホームの価格は単純な地価の上昇・下落のトレンドだけで決まるのではなく、マーケット(市場)の需要と供給にも影響を受けます。マーケットで需要が多ければ価格は上がり、供給が多ければ価格は下がるということです。つまり、需要と供給がどうなっているかの分析が必要になるということです。

そこで、需要と供給についてみてみます。

まず、需要については、一般的にマイホームの購入を検討する30代の結婚している世帯「30代婚姻世帯」をメインの需要層と仮定しました。

日本には約5,000万世帯が存在し、30代婚姻世帯は330万世帯(2020年推計)が存在します。この330万世帯の一部がマイホーム購入を検討する人たちとなります。

この30代婚姻世帯数は下記のように毎年減少傾向ですので、マイホーム需要自体は少しずつ減っているということになります。

【30代婚姻世帯数推計】
・2019年:339万世帯
・2020年:330万世帯
・2021年:323万世帯

次にマイホームの供給についてですが、住宅着工件数のうち貸家や社宅などを除いた自分自身で工務店に依頼して建築する「持家」、出来上がったものを購入する「マンション」、「分譲戸建」の合計を「マイホーム計」として見てみました。

さらに2020年の着工件数は10月までしか発表されていないため、12か月換算を行い2020年の数値を出しています。

加えて2020年のトレンドをベースに2021年の着工件数推計値も算出しています。

【マイホーム計供給数推計】
・2019年:55万4,000件
・2020年:49万9,000件
・2021年:44万1,500件

その数値を見ると、2019年には日本全国でマイホーム計は55万4,000件ほど供給されていたのですが、2020年には49万9,000件、2021年には44万1,500件程度に「供給が減少する」ことが想定されます。

なお、30代婚姻世帯のすべてがマイホーム購入を希望した場合、下記のように2019年では6.1世帯に1世帯は購入できていたのですが、2021年には需要よりも供給が減少する為、7.3世帯に1世帯しか購入できなくなります。

これは2019年のマイホーム競争倍率を100%としたときに、2020年の競争倍率は108%となり、2021年には119%と競争がより激化するということを意味します。

【マイホーム購入可能世帯の割合と競争倍率】
・2019年:6.1世帯に1世帯(競争倍率:100%)
・2020年:6.6世帯に1世帯(競争倍率:108%)
・2021年:7.3世帯に1世帯(競争倍率:119%)

すなわち、2021年は需要も減少するが、供給はより減少数が大きく、結果として需要と供給における供給不足が想定されるということです。

供給不足そのものが価格上昇に直接反映されるわけではありませんので、すぐに値上がりするわけではないでしょうが、買いにくくなるということは予想されるかもしれません。

次のグラフはこの「マイホーム計」の供給数と上記の競争倍率を見たものです。

リーマンショック時には約5年ほどで「マイホーム計」の供給数が回復していることを考えると、今回のコロナショックでも5年後の2025年くらいには供給が回復し、一時的に上がった競争倍率も落ち着いてくると思われます。

Next: 持家・マンション・分譲…それぞれの競争倍率はどう変化?



持家(自ら建築)の着工件数と競争倍率

マイホーム計の内訳をもう少し見てみましょう。自分自身で建築を行う「持家」については、リーマンショック時にも2年程度で供給が回復しています。

この「持家」は、自分自身が施主となって建築をしているため景気の動向に左右されず、個別の事情で「建てたい時に建てている」ためだと思われます。個別の事情とは例えば、子どもが学校に入学するタイミングや仕事の都合など個人のライフイベントに即した事情という意味です。

そのため、2021年に着工件数が減少したとしても、1~2年で供給は回復、競争倍率の緩和が予想されます。

建てたい時が建て時なので、資金に余裕がある&依頼したい工務店の仕事がコロナの影響で減っているのであれば、早いうちに建築してしまうのもありかもしれません。

マンションの着工件数と競争倍率

次にマンションの供給と需要を見てみましょう。次のグラフを見てもらうと、マンションはリーマンショック時に一気に供給が半減し、その後もなかなか回復していないということがわかります。

マンションのように大規模な開発はそれなりの需要が見込めないと行えません。ある程度長期の計画で建設されるため、景気が安定していないと供給数を増やすのは難しいということです。

コロナショックで景気が落ち込んでいる2020年、2021年から新規マンションの建設計画を立ち上げるのは相当勇気のいることでしょう。もちろん一部の大手ではピンチをチャンスに新規マンションの建設計画を立てているでしょうが、中小デベロッパーについては様子見するのが賢明な経営判断だと思います。

つまりマンションについては、2019年、20年で計画していたマンションの在庫がなくなってしまうと、次の供給までに少し時間がかかることが予想されるということです。具体的には5年程度では供給の完全回復は難しく競争倍率は高いままかもしれません。

立地にもよりますが、人気が集中すればすぐに売り切れてしまうでしょうから、気に入ったマンションがある人は在庫があるうちに購入を検討したほうが良いでしょう。

分譲戸建の着工件数と競争倍率

分譲の戸建については、大手デベロッパーだけでなく中小の建売業者なども建築でき、建設コストが(大規模なマンションを建てるのに比べて)小さいため、比較的早期に供給が回復するものと思われます。

現にリーマンショック時にも3年後にはすでに以前の供給水準まで回復しています。コロナショックで一時的に様子見を決め込んでいる業者はいると思いますが、そうはいっても分譲戸建を建築して販売しないとビジネスが回りませんので、早い段階で供給は戻り競争倍率も緩和されるでしょう。

つまり分譲戸建を買いたい人は2021年にあせって買わなくてもよいということです。

Next: 2021年に家を買うべきか?待つべきか? 不動産のプロの結論は



2021年に家を買うべきか?待つべきか?~まとめ

「地価上昇・下落」の側面と「需要と供給」の側面の両方を加味して「2021年に家を買うべきか?待つべきか?」まとめると、下記の表のようになります。

まず土地の値上がりエリアでは、持家については資金的に余裕があるなら2021年に建築するのはアリです。将来的に土地が上がる前に買ったほうが安く買える可能性があるからです。

また、マンションについては、今後数年供給が回復しない可能性があるため、買いたいものがあるのであれば在庫があるうちに買う方がよいでしょう。

分譲戸建については、数年で供給の回復が見込まれるため、極端に地価が上昇しているエリア以外はあせって買わなくてもよいでしょう。極端に地価が上昇しているエリアについては、土地値が上がってしまう前に購入を検討しても構いません。

次に土地の値下がりエリアでは、持家については土地の価格が下落しているため、待てば待つほど安く買える可能性が高いので、あせって建築する必要はありません。

しかし、マンションについては、土地の値下がりは予測されるものの、そもそも在庫がなくなってしまったら買えないため、欲しいのであれば買っておいた方がよいでしょう。

最後に分譲戸建ですが、コロナショックで一時的に供給が減っても、近い将来には供給数は回復することが予想されるうえに、待てば待つほど(土地が)安くなる可能性が高いので、2021年にあせって買わず、価格が下がるまで待つのがよいでしょう。

都道府県別のマイホーム供給数と購入競争倍率はどうなってるのか?

この記事を読んでくれている読者様は日本全国にお住まいかと思います。

すると気になってくるのが、自分の住んでいる都道府県の状況です。最後に各都道府県のマイホーム供給数と購入倍率がどうなっているか見てみましょう。

2019年の競争倍率を100%としたときに、北海道、東北地方では岩手や宮城の競争倍率が高めに出ており、それ以外の件では競争倍率は高くないということがわかります。

<関東地方>

関東地方では茨城、群馬、神奈川の競争倍率が上がっています。特に神奈川は分譲戸建、マンションともに供給数の減少が見込まれます。茨城や群馬は主に分譲戸建の供給数が減っております。

そのため神奈川でマイホーム特にマンションを検討している人は早めに動いた方がよいでしょう。茨城や群馬では分譲戸建の供給が回復するまで“待ち”がよいでしょう。

Next: 意外な穴場も?都道府県別、マイホーム供給数と購入競争倍率



<北陸・中部(北側)地方>

北陸・中部(北側)地方は全体的に住宅の供給数が減少し、購入競争倍率が上がります。そのため、2021年に無理してマイホームを購入するのではなく供給が回復するまで“待ち”がよいでしょう。

<中部(南側)・近畿地方>

中部(南側)・近畿地方では、愛知や奈良、和歌山で住宅供給が減少し、競争倍率は高くなります。奈良、和歌山では供給が回復するまで“待ち”ですが、愛知の都市部のマンションなどは在庫があるうちに購入を検討するのもよいでしょう。

<中国・四国地方>

中国・四国地方では島根、岡山、広島、山口、愛媛で競争倍率が高くなることが予想されます。広島市の中心など都心部以外のエリアについては、2021年のマイホーム購入は“待ち”がよいでしょう。

<九州・沖縄地方>

九州・沖縄地方では全般的に競争倍率が上がります。特に沖縄、福岡、大分の地価上昇エリアは早めに購入を検討してもよいでしょう。

2021年はマイホームの供給数が減少し、購入希望者が減らなければ、どの都道府県でも需要の方が多い状態になる可能性が高いです(競争倍率が上がる)。

実際には、コロナの影響で賃金が減少したり、先行きがみえない状況で35年ローンは組めないなど需要の方も減少することが想定されますので、今回分析した数値データよりは競争倍率は低くなると考えます。

最後に、この分析はあくまで過去の統計データを基にしたものであり、各建設業者や各都道府県の個別の情報などを加味したものではない、あくまでおおまかな分析であることをご承知おきください。

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image by:Rawpixel.com / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2021年1月2日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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