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日経平均3万円回復はバブルの序章。近づく4万円到達と「億り人量産」、超インフレに傾く日本で何が起こるか?=矢口新

2月15日、日経平均株価は終値で3万円台に乗せた。私の見方が正しければ、日本株の上昇はここからが本番だ。コロナバブルと、予測される日本の行く末について解説したい。(『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』矢口新)

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プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

なぜ、日本株が上げているのか?

予め断っておくが、相場では買い手と売り手とが1銭や10円などいうわずかなビッドアスクで向かい合っている。つまり、自分の考え方や事情に真っ向から反対する人々と常に向き合っているのが相場だ。従って、以下の私の見方も、たかが元ディーラーの見方、されどプロの見方として、1つの参考としていただきたい。

日銀が日本株のETF購入を始めてから、私は、日本株はいずれ1989年の最高値を更新すると言い続けてきた。そして、株価の上抜けを買うと一時的に苦労することもあるだろうが、大きく売られるようなことがあれば、それが絶好の買い場になると付け加えてきた。

2020年2月、3月の急落時では、十分に下げた後の谷越え確認を待てず、わずかな下げ止まりだけで強気になるという愚まで犯した。ではなぜ、「下げると買える」と言い切れるのか?

理由の1つは、日銀には決められた株式の購入枠があるからだ。日銀の量的緩和、マイナス金利政策が資本市場や金融機関に与えた悪影響は甚大だが、その成果は株高以外に見当たらない。そうした状況下では、株価の下落を黙って見過ごすことはできないのだ。その枠は年間概ね6兆円だったが、コロナ対策で12兆円に広げられた。株価が上げている時に購入枠を使う必要はないが、大きく下げた時に購入枠を使わないという選択肢は事実上ないと言える。

2つ目は、年金(GPIF)は日本株投資枠をほぼ使い切っているが、株価が下落するとその枠が広がり、また買えるようになるからだ。このことは、逆に株価の上昇では枠を超えてくることを意味し、上抜け時には調整売りを行うことを示唆している。また、海外株が上げると、日本株の比率が下がるので買えるようになる。

この2つは両者が抱えている「事情」なので、その事情さえ理解していれば予測可能だ。

だからこそ、「上抜けを買うと一時的に苦労することもあるだろうが、大きく売られるようなことがあれば、それが絶好の買い場になる」と言うことができ、その事情が変わらない限り「日本株はいずれ1989年の最高値を更新する」と言えるのだ。思い付きの相場観を述べてきたのではない。

この背景となる考え方は、「タペストリー・プライスアクション理論」としてまとめ、拙著の多くで解説しているが、ここでは1枚の図だけで、簡単に説明しておく。

参照図01:タペストリー・プライスアクション理論

2020年2月、3月に日本株を大きく売り込んだのはヘッジファンドだったと分かっている。これを具体的には知らなくても、急落時に上記の日銀や年金、あるいは生保、大手ミューテュアル・ファンドなどが大量に売ることはないので、急落はすべてヘッジファンドなどの投機家によるものだと分かるのだ。大手の長期機関投資家は持ち過ぎていて、売るに売れない。また、1部分だけ売って大部分の評価損を大きくすることは避けたいからだ。

つまり、急落時の売り手は、基本的にどこかで買戻しを狙っていることになる。逆に、急騰はどこかで売り戻される。何故なら、大手の長期機関投資家といえども資金量には限りがあり、投機家のようにレバレッジをかけることができないからだ。

例外は、そうした急落、急騰が「事情」を変えてしまうことなのだが、コロナ禍の急落で起きた変化は、大量の資金供給や、日銀の購入枠の拡大だった。「事情」はますます買えるようになったのだ。これでは、反発しない方がおかしいと言える。

このことは、日銀がその政策を変えない限り、日本株は時間の問題で1989年の最高値を更新することを強く示唆している。コロナ禍は、その政策変更の可能性をさらに小さくした。

実のところ、私はもっと早く史上最高値を更新するのではないかと見ていた。欧米では最高値を更新し続けているところが多くあり、日本株のように下値が堅いと強気になる人々が増えてくるので、上値を追う展開がもっと早く来ると見ていたからだ。

とはいえ、買戻しが前提でない日本の個人投資家や外国人が売り続けていたために、上値もまた重い展開が続いてきたことは、2021年始めにお届けした以下の記事からも明らかだった。

【関連】2021年「日経平均4万円」に現実味。今が世界コロナバブルの初動だ=矢口新

このことは、日本株はまだバブル入りしていないか、していたとしても極めて初期の段階に過ぎないことを示唆している。私の見方が正しければ、日本株の上昇はここからが本番なのだ。

Next: 日本株の上昇はここから本番? 米市場はバブルの真っ只中にある



米市場はバブルの真っ只中:レディットの「煽り」で乱高下

コロナ対策で、日本の当局は膨大な資金供給を行ったが、それにも増して大量の資金を供給したのは米政府と米連銀といった米当局だった。その結果として、個人にも十分な資金が行き渡ることになった。

参照図02:米個人所得の推移

図02の水色の部分をご覧いただきたい。2020年の第1四半期から第2四半期にかけて、給与所得が急減する。これはコロナ対策で事業活動が止められたために、失業や一時帰休が所得減に繋がったためだ。しかし、その上の青色の膨らんだところが、政府の支援金だ。この膨大な支援金により、結果的に働いているよりもはるかに多くの所得を得たことが見て取れる。

米国は全州でロックダウン(都市封鎖)を行い、住民のほぼ全員が自宅待機を強いられた。やることはないが、資金はある状態が続き、それが「すごもり消費」に結びついた。そこにスマホ取引に特化した「ロビンフッド」などのオンライン証券会社などが台頭し、株式投資も盛り上がることになったのだ。

参照図03:2020年2月から2021年2月の間に投資を始めた人の割合

日本人よりも米国人の方が、株式投資に熱心だという印象があるが、必ずしもそうではない。全体としては米国人の方が株式の保有比率が高くても、それは概ね長期保有だ。先物市場こそ活発だが、投機的売買に関しては、日本人は決して引けをとらない。また、トレーディングでは米国人も参考にするローソク足や酒田五法は日本オリジナルなもので、投機的売買に役立つものだ。

ましてや、米国の若い世代は日本の若者以上に奨学金ローンの支払いに苦しんでおり、株式の長期保有などという余裕は限られていた。そうした若者たちが時間と資金を手にした効果が、図03に表れている。ここで時間と資金と、並列に並べて述べたが、時間はどれだけ長引くかは不明である一方で、資金は一時的なものに過ぎないことが分かっていた。資金は使い果たせばなくなるが、その後の収入の当てはいつになれば確実になるかは不明だった。何とか資金を増やしたいという欲求は切実なものだった可能性がある。

トレーディングの初心者が頼るのは経験者だが、米国にはトレーディングの経験者は多くない。また、スマホ証券は手数料無料で簡単にはトレードできるが、それだけだ。それで口コミSNS「レディット」に頼る初心者たちが急増した。

ヤフーファイナンスとハリスポールの調査では、2021年1月にレディットの「煽り」で、米国人の9%がゲームストップ(GME)、10%がAMCエンタテインメント(AMC)、6%がブラックベリー(BB)、5%がノキア(NOK)、4%がキャスターマリタイム(CTRM)、他に10銘柄を超える「ちょうちん買い」を行ったという。合わせて28%もの米国人が、レディットを頼りに売買したのだ。

※参考:28% of Americans bought GameStop or other viral stocks in January: Harris Poll-Yahoo Finance survey(2021年2月10日配信)

これが誇張だとは言えないのは、下図04の取引量を見れば分かる。うちゲームストップに至っては、2020年12月末にヘッジファンドの空売りが浮動株の140%にも達していたとされ、レディットの煽り、ロビンフッド経由で個人投資家の買いが殺到、ヘッジファンドを大損させたことが話題となった。100%以上空売りできるのかと聞かれれば、OTCのデリバティブを通せば可能性としてはあり得る。OTCは投資家と業者の相対取引なので、うっかりしていると100%以上になることも考えられるからだ。

個人投資家のゲームストップ買いのピークは1月25日と26日で、25日はS&P500株指数採用のどの銘柄よりも取引量が大きかった。26日は2番目だった。

参照図04:1月25日の週のゲームストップの取引量対S&P500

下図05が「ことの顛末」チャートだ。「参照図01:タペストリー・プライスアクション理論」で解説したように、売り手は買戻し前提、買い手は売り戻しが前提の、参加者のほぼ全員が投機的売買だったことが分かる。

参照図05:ゲームストップの株価(30分足)

ゲームストップ株が上げている時、短期間に巨利を得たというカリスマ個人投資家が買い推奨し、「空売りは必ず買い戻す。絶対に売るな」と煽ったと、ウォールストリート・ジャーナルが取り上げた。同記事には「カリスマ氏は私の人生の恩人だ」と感謝している人の談話も載せていたが、2、3日後にはどうなったのだろうか? 相場は難しい。ゲームストップ株を売らずに持ったままだと大損したことが分かる。カリスマ氏は資産か信用の、少なくともどちらか1つを失ったことを示唆している。

Next: 米国ではビリオネア量産が始まった。日本の行く末は?



「SPAC」がビリオネアを量産する

こうしたゲームストップなどの狂乱は、バブルの一環だと言える。テスラや仮想通貨もバブルだと言えるが、米国ではもう1つのバブルがビリオネアを量産し始めている。SPAC(特別買収目的会社)という、会社型投資信託だ。

SPACは「ブランクチェック(金額未記入の手形)」に例えられるように、ファンドマネージャーの「目利き」だけを信頼して大量の資金を提供するものだ。SPACは目ぼしいベンチャー企業を探し出して、IPOにまで漕ぎ着ける。SPACは株式保有で利益を得、ベンチャー企業は比較的簡単にIPOを果たすことができる。

SPACは1970年代に発案されたと言うが、投資家保護の観点から違法とされたという。1990年代に復活したが、やはり同様の理由で許可されなかった。

それが2009年頃から復活したのが興味深い。この時期には、ボルカー・ルールで「銀行が顧客の預金で自己投資すること」が禁じられたからだ。預金者は銀行が自己の投資で最悪破綻することの準備ができていない。投資したいのならば、出資者が納得づくのファンドをつくれとなったからだ。その点、SPACでは出資者が納得づくで「ブランクチェック」をファンドマネージャーに渡している。

参照図06:SPACを通じたIPOの件数、平均調達額、総額の推移

図06が示しているのは、SPACを通したIPOが2020年に急増したことだ。これは当局のコロナ対策がバブルを誘発したことを示唆している。また、2021年は最初の5週間ほどだけで、IPO件数が前年の48%にも達している。

そして今現在も、巨額の資金を背景に多くのSPACがベンチャー企業を上場させようと狙っている。現在、ビリオネアへの最短コースとなっているのがSPACだ。

米国はバイデン政権になっても支援の手を緩める気配はない。そうした資金力を背景に、ゲームストップや仮想通貨、ベンチャー企業のようなバブルのターゲットを見つけては局地バブルを展開する一方で、主要指数も少なくともしばらくは堅調で推移しそうだ。

日本の行く末はどうなる?

このように大盤振る舞いに見える米国に対して、菅政権のコロナ対策は何とも中途半端に思われないだろうか?

これも私は予想していた。何故なら、もともと支援する原資などないところに、膨大な支援を必要とする政策を採用した「事情」があるからだ。

米国のGDP比で見る公的債務は100%を優に超えてきているが、日本はその2倍以上で世界一の債務政府だ。資産と相殺した純債務でも調査国中一番で、その政府資産として見なされているものは国民の年金資産だという有り様だ。日本が純債権国だから安心だというのは、民間には資産があるので、有事には国のものになると言っているに等しい。だからこそ、日本から離れる富裕層が多いのだ。

それでも政府は国民の信用力を背景に、大量の資金を供給しているのだが、中途半端になるのも止むを得ない。日本の財政は危機的なのだ。そして、そのツケはいずれ国民が支払うことになる。

私は日本の社会保障制度の継続に強い危機感を持ち、図表65枚からなる解説書を書いているが、ここでは1枚の図表だけを使って、その危機感を読者の方々と共有したい。

参照図07:社会保障関係費の推移(出所:厚生労働省の資料から作成)

1990年度の国が負担する社会保障関係費は11.6兆円だった。それが2018年度には33.0兆円になる。一方、税収は1990年度が60.1兆円、2018年度が60.4兆円で、これが日本税収のダブルトップだ。

このことは、税収に占める社会保障関係支出が1990年度の19.3%から、2018年度は54.6%に急上昇したことを意味している。何と、税収の半分以上を国が負担する社会保障費で持っていかれているのだ。しかも、それでも足りずに借金している。

そして、今後も社会保障関係支出が増え続ける見込みなのに対し、税収はまず2019年10月の消費増税で減少し、コロナ禍とコロナ対策禍で、さらに急減する見通しだ。

Next: 消費税導入で税収減少。日本の財政危機は株価に何をもたらすか?



日本を待ち受ける財政危機とハイパーインフレ

世界でコロナワクチンの接種が始まっている。日本政府は大金を投じて、海外からのワクチン供給手配を予約している。例えば、2020年11月に効果があると発表したファイザー製のワクチンは6,000万人分購入予約した。モデルナ製やアストラゼネカ製のワクチンも購入予約している。

世界的に医療費、医薬品の価格が上昇している一方で、日本だけが社会保障関係費を30年前の水準に留めておくのは不可能だと断言していい。日本が自前でコロナワクチンを開発できない理由も、政府に薬品会社を支援する予算がないためだという。ここでの問題は、1990年度の税収を未だに事実上過去最大だと引き摺っていることなのだ。そして、日本の税収増が止まったのは、消費税を導入してからなのだ。

1988年度の税収は50.8兆円で、税収に消費税が加わった1989年度から2019年度までの31年間の平均税収は50.7兆円だ。この間、日本経済は1.41倍(円建て)に、世界は4.42倍(ドル建て)に成長したことを鑑みると、こんなに分かりやすい衰退の原因は見当たらない。この歪んだ税制さえ変えれば、日本は良くなる可能性が高いのだ。仮に、日本が世界の標準並みに成長し、当時の税制でそのまま税収増があったとしたなら、2019年度の税収は224.5兆円に達していた。

日本の行く末は、国民自身が決める。消費増税が必要だと主張する政治家を見限って、1989年以前の税制に戻すという政治家で過半数を握ることだ。

日本の行く末が現状の延長線上にあるとすると、国民の資産を背景にした信用を食い潰すまで債務を膨張させ、いずれはハイパーインフレで債務が事実上帳消しとなる。MMTなどでは、インフレ時には課税するとあるが、まったく国民不在の暴論だ。

インフレ時には株価の上昇が家計を守る手段になる可能性が高いが、世界最大の債務国がハイパーインフレにまでなった時にまで機能するかどうかは、まだ私にも分からない。

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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2021年2月16日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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