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パリで日本人の顔に塩酸…「アジア人差別」の実態とは?米国・タイ・フィリピンの実状、海外移住経験者が語る良好な関係を築く術=栗原将

日本人がパリで塩酸らしき液体をかけられるという事件がありました。東アジア人差別はあるのか?知人から聞いた欧米の実態と、私が実際に移住して体感したタイ・フィリピンの実状をご紹介します。(『海外投資とネットビジネスで海外移住、ハッピーライフ』栗原将)

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パリで「アジア人差別」が起きている?

最近、パリで日本人が顔に“塩酸”らしき液体をかけられるというニュースがありました。

※参考:「アジア人狩り」なのか? パリで日本人が顔に“塩酸”らしき液体をかけられる | クーリエ・ジャポン(2021年2月19日配信)

記事を要約させていただきますと、

・2月10日、パリで、日本人現地在住者が覆面姿の3人組に塩酸とみられる液体をかけられ、手にやけどを負った

・現場となったパリ17区の区長はツイッターで、「事件がアジア人差別的な性格の襲撃かどうかは現時点ではまったく確認できていない」「監視カメラの映像では告発された事件の時間と場所での襲撃は確認できていない」と発信。日本人のアカウントから批判の声が寄せられている。

・現地在住のサクラという34歳の女性は「2008年にフランスに来た頃から、つねに侮辱の言葉は浴びせられていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大以来、以前にはなかった視線を感じるようになりました」と述べ、人種差別的な雰囲気のせいで、特に中国人の友人たちが国に帰っていると指摘している。

このような内容で、コメント欄には、犯行を非難する投稿がなされています。

在フランス日本大使館の発信を見る限り、被害は多くない

日本のマスコミでは、このような事件はほとんど報道されませんが、実際、フランスで日本人やアジア人差別による被害があるのか、在フランス日本大使館のウェブサイトで確認してみました。

同大使館のウェブサイトによると、同種の被害の報告は2019年以降で3件あるが、日本人を特定した犯行とは断定されていませんし、件数も決して多くはありません。

他に、日本のタレントがレストランで差別的待遇を受けたとの報道も見たことはあるものの、個人的経験ですが、自分が2013年にフランス旅行した時には、差別されたという感じはまったくありませんでした。

イタリア、ドイツも同様です。

政府からの注意喚起も出ていない現在、我々、日本人が渡航に際し、「警戒レベルを特段上げるほどの状況ではない」と判断してもよいのではないでしょうか。

では、アメリカではどんな状況なのでしょうか?

Next: 米国では「システム化された差別」が存在する?



アメリカの知人曰く「10年間、何も嫌な思いはしていない」

高校時代からの親友で、ミシガン州デトロイト郊外の病院勤務(脳外科医師、大学教授)に、「日本人・アジア人ということで、差別にあった経験ありますか?」と聞いたところ、以下の答えが返ってきました。

「アジア人狩りはありませんね。デトロイトおよび周辺の街は、diversity(多様性の尊重)があって、アジア人への差別はないと思います」

「ここ10年、スーパーやレストラン等で、アジア人だからと不快な思いはしたことはありません」

このように、さきほどのフランス発の情報とは、かなり違いがありますね(ただし、知人の情報はあくまで個人の所感であり、加えて、デトロイトという都市での話です)。

Systemic racism(システム化された人種差別)は存在する?

では、欧米でアジア人への差別意識は本当にないのでしょうか?

デトロイト在住の親友が言うには、「アジア人狩り」のようなことは見かけないものの、次のような経験はあるとのことでした。

「学術界(医学会)では、白人の人々は、アジア人の書いた論文を引用することは少ないと思います。今査読している論文は、2年前に自分が書いた論文と同じコンセプトですが、引用されていません」

「白人の男性は白人の男性が書いた論文を好んで引用する、という統計結果はあります。自分の肌感覚でもそうですね」

「だから、アメリカの学会では、女性やマイノリティを増やそう、diversity(多様性)を増やそう、みたいな運動は継続的にあります。学会のシンポジウムに女性が講演者に入っていないと、そういうシンポジウムは採択されない、といったものですね」

このような感じでした。

まとめますと、

・あからさまな人種差別的行為・言動には遭遇していないものの、システム化された人種差別を感じることはある

・しかしながら、多様性を尊重しようという流れを着実に感じている。

あくまで、ひとりの知人のコメントではありますが、参考になればと思います。

Next: 差別や反日は皆無?筆者が移住したタイ・フィリピンの場合



タイ・フィリピンでは、日本人はどう見られている?

私はタイに6年、フィリピンに2年暮らしましたが、日本人差別や反日といった経験は皆無です。

むしろ、まったく逆で、日本人ということで、とても好意的に話しかけてもらったり、日本は一番好きな国で、毎年の日本旅行が楽しみです、といった話もよく聞いたものです。

バンコクでタクシーに乗ったら、日本語で話しかけられたので雑談をしたら、ドライバーさんは、以前、日系企業で駐在員の運転手をしていたそう。その時、とても良い待遇を受けて、「日本と日本人がとても好きになりました」と言っていました。

また、バンコクでコンドミニアムを借りる時にも、日本人は物件オーナーの印象が良いという話しも聞いたことがあります。日本人入居者の場合、部屋をひどく汚したり、家賃未払いのうえ逃亡するようなことは極めて稀であることが理由とのこと。

フィリピンはタイほどの日本人コミュニティはないですが、仕事をしていても、日本人ということで、とても好意的に接してもらいました。

日本人は約束を守る、ちゃんとお金を払う、といった声は聞きましたね。

このように、日本人在留者の「先輩方」のおかげで、私自身、差別意識を感じることなく、とても快適なタイ・フィリピン生活を送らせていただきました。

周囲の日本人からも、差別に遭った。不快な経験をした、という声は無かったです。

行動様式やマナーの違いで批判されることはある

人種差別というよりは、言葉や行動様式、マナー意識の違いで批判されることは考えられますね。

実際に遭遇したのが、タイのコンビニで中国系男性が上半身裸で入店していたのを、タイ人スタッフが非常に嫌そうな顔で「これだから、中国人は…」とタイ語でつぶやいたことでした。

中国の一部では、このように上半身をさらして人前に出るのがフツーと認識されている様子。この男性は普段の感覚でコンビニに入店したのでしょうが、ちょっとタイでは考えられません。

タイでは、男性同士でも「裸を見せたくない」と考える人は多く、日本式の風呂・温泉がなじめないという声も聞くくらいです。ですから、コンビニに上半身をさらして入店…というのは、タイではかなり迷惑な行為になります。

あとは、タイでNGとされている行動のひとつに、子どもがかわいいからと「頭をなでること」があります。頭は「精霊が宿る場所」とされていますので、やってはいけないのです。

他にも、挨拶は「ワイ」といって、両手を合わせるものです。相手とハグする、みたいな接触は意外なほど少ないものです。

一方で、フィリピンは、アメリカに影響されたのか、かなり濃厚(?)なハグや握手をします。私自身、フィリピンからタイに戻ってきた時には、フィリピン流はタイではちょっと控えた方が良いな…と思ったものです。

Next: 差別の有無よりも大事なのは、他国の文化をリスペクトすること



差別の有無よりも大事なのは、他国の文化をリスペクトすること

私は、差別されるか?と不安になるよりも重要なことがあると考えます。それは、現地の文化、マナー、宗教をリスペクトすること。

ひとことで言えば、その国と人をリスペクトして、それを態度と言葉で表現することですね。

タイであれば、以下のあたりは必須です。

・朝8時と夕方6時、公共の場所で流れる国家斉唱の際には立ち止まる
・王室を侮辱するような言動をしない
・タイの人を批判する、下に見るような言動やSNS投稿をしない
→ タイの日系フリーペーパー内で、タイ人女性の服装チェックをするコーナーがあったのですが、そこでのコメントがタイ人を貶めていると非難が殺到。謝罪に追い込まれた件がありました。

またタイの人に対して、自分はタイが大好きだ、こんなところが好きだ、と積極的に伝えるのも大事です。相手と、本当に打ち解けることができますよ。

加えて、現地の宗教をリスペクトすることも重要ですね。

日本では、国旗である日章旗が燃やされても、マスコミが非難する報道はほとんど見られないですし、罪にも問われません。

しかし、タイでは不敬罪となりますし、フィリピンでも国旗を侮辱した外国人に対しては激しい非難が沸き上がります。

このあたり、日本感覚で海外に出て、軽はずみな行動や言動をするのは、その国の人々を傷つけますし、最悪の場合、国外追放、再入国禁止や、身分が晒される、といった事態をも招く可能性があります。

その国に「住ませてもらっている」という意識をベースに日々生活していくことが、もっとも現地でうまくいくと思います。

以上のように、相手国と国民をリスペクトして生活し、相互理解が深まることで、差別がない、気持ちが良い生活が送れるものと私は信じています。

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image by:PR Image Factory / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2021年3月11日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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9年間のタイ、フィリピンでの海外移住生活から帰国し、北海道暮らしをはじめた50歳男子が、久々の日本生活から感じることや、海外生活のメリット・デメリット、そして、地方暮らしの実際について独自目線で語っていきます。

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