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巨額の中国マネーはどこへ向かうか?「少子高齢化」急加速で富裕層が逃げ出した=田中徹郎

中国で少子高齢化が急速に進んでおり、ほか先進国と同様に経済成長の鈍化が見えてきました。中国富裕層はそれに備えてどんな行動に出ているのでしょうか?巨大な中国マネーの行き先について考えます。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)

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プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
株式会社銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。

少子高齢化が急加速、経済成長を支えてきた人口増加は止まった

先日、中国で2020年の国勢調査が発表されました。高齢化と少子化が予想を超えた速度で進んでいることがわかっています。

発表された主な数字は以下の通りです。

・総人口:14.1億人
・65歳以上の人口:約1.9億人(対2010年比60%増加)
・現役世代(15歳から59歳)の人口:約9.7億人(対2010年比3.2%減少)
・出生数:約1,200万人(前年比18%減、過去最大の減少)
・出生率:1.3人
・世帯当たりの人数:2.62人(2010年時点では3.1人)

この数字を見ると少子高齢化は明らかですし、総人口14.1億人も、国連の予想14.4億人を下回っています。さらに環球時報によると「2022年にも人口の減少が始まる」との見方も出てきました。

しかも、この数字自体がすでに水増しされており、実態はさらに悪化しているとの見方が大勢です。ここ40年ほどの高成長を支えてきた人口増加が止まり、すでに逆回転が始まったと言えるでしょう。

同国ではすでに一人っ子政策を廃止し「ふたりっ子政策」に転じましたが、その中での出生数の減少です。

国家にとって都合よく人口を増やしたり減らしたりするなど、どだい無理な話だということが証明されたのかもしれません。もう中国は、人口の増加頼みで成長し続けることはできないでしょう。

中国は停滞期に突入する

日本に限らず欧米の事例をみても、少子高齢化と経済成長のあいだには密接な関係が見られます。つまり少子化、高齢化が進むにしたがって、経済成長も鈍化するということです。

中国だけが例外になるはずはありません。

様々な推計で、近々アメリカを抜いて世界最大の経済国になるといわれてきましたが、上記のように中国は予想を超えるペースで高齢化が進んでいることが明らかになりました。

逆にこれから中国は、停滞期に入る可能性が高いと思います。

その場合、いったいどんなことが中国に起きるのでしょう。

この点については日本の事例が参考になると思います。なにしろ少子高齢化の点では世界最先端にいますので…。

Next: 日本と同じ道をたどる?チャイナマネーはどこへ向かうのか



社会保障費が財政圧迫

中国にとってやっかいな問題のひとつは、社会保障制度の脆弱さではないかと思います。

社会保障を担う社会保険基金への政府支出額は、日本経済新聞によると「2021年予算ベースで8.6兆元(約150兆円)を超え、2015年時点の2.2倍ほどに膨張しています。すでに国民からの社会保険料の徴収だけではカバーしきれず財政によって25.5%を補っているそうですが、この数字は2015年比3%上がっている」とのことです

今ですら現役世代(15-59歳)3.5人で1人の高齢者(65歳以上)を支えていますが、今後さらに現役世代の負担感は大きくなるでしょう。

すでに日本では社会保障への支出が政府歳出の1/3を超えて財政を圧迫していますが、急速に少子高齢化が進む中国でも、近い将来同様の問題を抱えることになるはずです。

しかも少子高齢化によって、税収も今までのような勢いで増えることはなくなるはずです。

その結果、軍事費や途上国支援、インフラ投資、国有企業支援など、中国が国力膨張の源泉としてきたこれらの分野に、今までのような大盤振る舞いができなくなるでしょう。

このように不安な同国の近未来に対し、中国の国民はどのような見方をしているのでしょうか。そして、何らかの具体的な対策をとろうとしているのでしょうか。

中国人は、日本人以上に現実的で、経済的な感性に長けていると僕は思います。そして、一部の富裕層はすでに自国経済や通貨の行く末に対し、少し懸念を持ち始めているようにも見えます。

中国マネーはどこへ向かうのか?

ここまでをまとめると、次の通りになります。

・中国では想定以上の速度で少子高齢化が進んでいる
・その結果、近い将来同国の経済は停滞期に入る可能性が高い
・国民はすでに自国の経済停滞に対し懸念を持ち始めているように見える

そして、経済に敏感な中国の富裕層は、すでに具体的な対策をとりつつあるようにみえます。

例えば、今のうちにお金を国外に移しておこうとする動きです。でも、中国では人民元→外貨への両替が1人当たり年5万ドルまでに制限されていますし、個人による海外への現金送金も年1万ドルまでの制限付きです。

しかも中国の国民は外国株への投資が制限されており、投資先は上海や深セン市場に上場している中国企業に限られています(※筆者注:中国国内の機関投資家はQDII制度のもと、一定の要件を満たした場合のみ海外証券への投資を認められていますが、中国の国民が直接海外の株式を購入することは認められていません)。

言い換えれば、当局の目が届きやすい海外送金や証券投資といったペーパーアセットの世界では、海外にお金を移動することは難しいと言ってよいでしょう。

これに対して、当局の目が行き届かないのは実物資産です。例えば、コロナ前に中国人が東京都内のワンルームマンションを盛んに買っていましたが、その決済手段の大半は現金だったと聞きます。

中国からお金を持ち出す方法は様々だそうですが、家族や知人が小分けにして現金を持ち出したり、日本にある中国法人を使ったり、違法なものから適法なものまでさまざまな方法があると聞きます(※筆者注:海外渡航者は、1回当たり5,000ドルまでなら携行証明書なしで現金を持ち出せます)。

香港で開かれるオークションで、実物資産に投資するという方法もあるようですね。

先日、NHKのある番組で、中国人富裕層による日本のウィスキー購入の話題が取り上げられていました。どうやら中国人にとっては、日本のウィスキーすらも実物資産投資の対象になり始めたようです。

Next: 中国富裕層が好む資産に先回りして投資する



中国富裕層が好む資産に先回りして投資する

香港は世界的なオークションの拠点ですので、香港までお金を持ち出すことができれば、たいがいの実物資産は買うことができます。

宝飾品、美術品、アンティークコイン、宝石……これらはペーパーアセットとは違って登記という制度がありませんし、さして保管場所もいりません。

近年、世界的に進む実物資産相場の高騰の背景には、各国中央銀行による紙幣の大量印刷もあると思いますが、上記のようなルートで流れ込む中国富裕層マネーも、一役かっていると僕は思います。

以前から僕はこのメルマガで、中国人が好む資産の先回り買いの優位性を主張してきました。上記のような中国富裕層マネーの流れを考えますと、これからもその効果はますます高まっていくのではないでしょうか。

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image by:imtmphoto / Shutterstock.com

一緒に歩もう!小富豪への道』(2021年5月20日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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