マネーボイス メニュー

今夜の米雇用統計も悲鳴が上がる?前回の下振れはバグかトレンドか。ドル円相場の動きを読み解く=ゆきママ

衝撃的な結果となった前回の雇用統計から早くも1ヶ月近くが経とうとしています。前回の雇用統計の数字が一時的なものなのか、それともトレンドなのかという点で、今回の結果は重視されることでしょう。それでは、いつものように展望とトレードアイディアについて解説していきます。(FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)

【関連】ビットコイン急落で韓国の若者らが借金地獄に。無謀な投機の裏に損失回避バイアス=栫井駿介

前回の弱さは一時的なのか否か、トレンドを占う

前回(4月分)の雇用統計では、発表直前は非農業部門雇用者数が+100万人増というのが予想コンセンサスとなっていましたが、蓋を開けてみれば+26.6万人と予想の4分の1という衝撃的な数字となり、ドル円は瞬間的に1円近い円高ドル安になりました。

この背景としては、バイデン大統領が就任後に発表していた失業給付の上乗せによって就業意欲が削がれたという指摘や、昨年4月にコロナによるロックダウンで2,000万人以上も雇用が減っていたことにより、季節調整がうまくいかず、いわゆるバグのような結果といった指摘もありました。

あまりにも極端な下振れとなったことで、市場にそれほど悲観する向きはありませんでしたが、今回(5月分)も弱い数字となるなら、流石に雇用戦線に異常アリという判断になりそうです。

非農業部門雇用者数の数字が強ければ素直にドル高か

米国の経済指標は、ここ最近強めの数字が並んでいますが、とりわけインフレ関連指標は強めの数字となっています。FRBが最も重視するとされるPCE(個人消費支出)のデフレーター(実質値を得るために用いられる物価指数)は、リーマン・ショック前の2008年以来で最大の上昇率となりました。

また、昨日発表されたISM(全米供給管理協会)の非製造業部門における仕入れ価格指数は統計開始以来2番目の高水準となっています。

あくまでFRBはインフレ上昇を一時的とはしているものの、徐々に緩和政策の正当性を維持するのが難しくなっている現状があります。

そして、FRBの2大責務は物価の安定と雇用の最大化ですから、今回の雇用統計が良好であれば、少なくともテーパリング(緩和縮小)の議論ぐらいは始まっても良い、始まるべきであるという見方が強まることになり、米長期金利(10年債利回り)の上昇から、ドル高という展開が想定されます。

テーパリングは株にとってはマイナス要因ではありますが、ある程度は織り込んでいるでしょうし、そもそも最近は株価に対して円の動きもかなり限定的となっていますから、よほど下がれば別として、株価指数が1〜2%の下げなら影響は軽微でしょう。

Next: 雇用指標はまちまち、ISMの大幅な下振れが波乱要因。今回はどう判断?



雇用指標はまちまち、ISMの大幅な下振れが波乱要因

それでは、直近の雇用指標や事前予想値を確認していきましょう。

雇用指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)

全体的に見れば改善傾向にあります。新規失業保険申請件数は順調に下がり、民間のADP社が発表した民間雇用者数は非常に好調です。

一方で、ISMの雇用指数は製造業、非製造業共に大幅に悪化しており、継続保険申請件数が増加、企業人員削減数なども増加傾向にあり、トータルで見ると雇用が加速しているかといえば、かなり疑問といったところか。

なので、エコノミストの事前予想値(平均値)は非農業部門雇用者数は前月比+65.0万人増と控え目なのでしょう。ただ、前回が予想を大きく下回って+26.6万人増ですから、前月と合わせて2ヶ月で合計+100万人未満の増加幅というのは、見た目以上に弱い予想と言えそうです。

今回は前回分(修正値込)と今回分の合計値で判断!

5月の非農業部門雇用者数+65.0万人増という数字は、前回分の数字を踏まえればかなり控えめというか弱いですから、やはり一段とドルが上昇するためには5月単体で+100万人増といったサプライズが必要でしょう。それでも、2ヶ月の合計でならせば1月あたり+60万人増程度ですから、トレンド的に微妙と言えば微妙、決して強いとまでは言えないでしょう。

したがって、この場合、初動はともかくとして、あまり強気強気ではついていかない方が良いかもしれません。

逆に前回分が大きく上方修正されて、今回5月分と合わせて合計で+150万人といった数字を上回ってくるようであれば、雇用市場に対する見方が一変するでしょう。いよいよテーパリングを意識した金利上昇で、ドル高に拍車がかかる可能性が高そうです。

というわけで、今回は前回(4月分)と今回(5月分)の合計値を目安に考えてトレードするのが良さそうです。

やはり雇用におけるトレンドというのが大きなテーマですから、改善傾向にあるのか、それとも停滞気味なのかを見極めることが非常に重要です。

Next: 今夜の投資戦略は?1ドル=109.50〜110.50円がコアレンジ



1ドル=109.50〜110.50円がコアレンジ

ドル円チャート(日足)

ドル円は好調な経済指標を受け、ドル高がリードする形ですでに110円の大台に乗せています。基本的に雇用統計発表時間の21:30ぐらいまで横ばいとなりそうなので、少し垂れてくれば打診買いをして発表を待つのもアリ。

買いで入るなら110.00円の大台サポートを意識して、この前後、109.90〜101.10円レベルでは軽く買ってみたい。損切り・決済は数字次第ですが、少なくとも修正済みの4月と今回発表の5月の非農業部門雇用者数が2ヶ月分合計で+100万人という最低ラインを超えられないのであれば撤退でしょう。

逆に前回分の上方修正もなく、非農業部門雇用者数を中心に予想すら下回るような数字になってしまった場合は、昨日・今日と続いたドルの上昇からの反動、嫌気した株安も加わるのであれば、それなりに下げる可能性があります。109.80円レベルを割り込んでくれば売りやすそうで、その場合の目標は109.00円レベルということになるでしょう。

今回の雇用統計は前回分の修正という大きなノイズがありますし、関連指標の一部も大きなマイナスを見せるなど悩ましいイベントとなります。

ただ、売りか買いかで言えば、強い米経済が織り込まれている分、ややダウンサイドリスクの方が大きそうなので、発表前に110.00円の大台を超えているのであれば、売り(ショート)から入って結果を待つのがベターでしょうか。

いずれにせよ、2ヶ月分の合計が+150万人増を上回る、あるいは+70〜80万人増を下回るといったサプライズでもない限りは、1ドル=109.50〜110.50円のコアレンジに収まるかと思いますので、これらを踏まえたうえでトレードしていただければと思います。

【関連】デジタル人民元はビットコインを駆逐しない。習近平が導入を急ぐ本当の理由=高島康司

【関連】日本郵政の上場担当者が激白。なぜ6200億円で買収した豪企業を7億円で売る羽目に? M&Aの3大成功法則を無視するお粗末経営=栫井駿介

【関連】東芝「身売り危機」は終わらない。社長交代劇で見えた根本的な欠陥、稼ぎ頭なき延命企業に未来はあるか?=馬渕磨理子

image by:Cat Simpson / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2021年6月4日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。