4日に発表された米5月雇用統計は、大幅改善を見越していた市場予想を裏切り、非農業部門雇用者数で前月比55万9,000人の増加にとどまりました。これをどう捉えるか。市場のコンセンサスには及ばずとも、改善は改善として読むべきでしょう。「6月のドルは強い」と言える結果です。(『角野實のファンダメンタルズのススメ』)
※本記事は有料メルマガ『角野實のファンダメンタルズのススメ』2021年6月7日号の一部抜粋です。好評配信中!ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:角野實(かどの みのる)
大学卒業後、金融機関に10年ほど勤務。独立して投資家の道へ。現在は企業経営者として活動、FX関連の執筆を多数行っている。
覚悟を決めれば投資はうまく行く
『ドラゴン桜』を適当に見ているのですが、「覚悟がないやつは何をやってもダメだ」と阿部ちゃんが言っているのに感動を覚えた角野です(笑)。このあたりは私もずっと考えていることで、「自分自身がやると決めたことは、意地でもやる」という覚悟が必要だとは思います。
そういうことを繰り返していると、自分ではちっとも進歩がないように感じるものですが、周囲の評価は違うというものなのだな、というのは個人的経験としては何度もあります。仕事でも人生でもマーケットでも、覚悟を決めるとたいていはうまくいくものです。
ただし、その歩みは亀のような歩みであり、本当に進歩が遅い。でも最終的にはウサギさんを追い抜くのだな、と改めて感じるものです。
ドルの動向が定まらないのですが、結局、いつもこういうことを言っていると、道中は亀のような歩みになるものです。しかし、結果はたいてい「その通り」の結果になっていることがほとんどです。
その道中でトチ狂ったようなことを言うのもいつものことなのですけど(笑)。その辺はいつも反省しているのですが、まだまだと思います。
5月の米雇用統計は良かった?バイデンの見解
雇用統計はドルの強弱に強烈な影響を与えると言っています。そして、バイデン大統領の雇用統計を見る目で、私も「はっ!」と目覚めました。
※参考:米雇用統計は「歴史的な進展」、バイデン氏が称賛 不安要因残存も | ロイター(2021年6月5日配信)
バイデンは市場のコンセンサスよりも数字が悪くても、「革新的だ!」と喝破しています。これを見た当初、また都合の良いことを言い始めていると思ったものですが、以下をもう一度みてほしいと思います。
メルマガ資料1 pic.twitter.com/a5mLrQ4UWt
— 角野實 (@ytk172jp) June 6, 2021
コンセンサスよりも悪い、100万人以上に届かないといっても、現実の数字は先月よりもよかった。マーケットというのは「コンセンサスよりも悪い」「100万人以上の数字を期待していた」といくら言っても、グラフにすればそういった影響は反映されないものです。
つまり、グラフを1年後に見れば、「5月は4月よりも良かった」ということしかわからないのです。
今の時点では、「そんなに良くなかったね」というのは感想ですが、1年後も同じことを思うかといえば、そんなことはきれいさっぱりに忘れて「5月の雇用統計は良かったね!」というのに決まっているのです(笑)。
つまり、先月26万人の雇用だったのですが、どう言い訳をしようと、悪いものは悪いのです。それをむりくり理屈をつけて良い数字に解釈するのは、自分の都合のよい解釈であり、現実のマーケットはグラフの全体像から“悪い”という決めつけを行うのです。
今回の雇用統計も、数字は悪いという現時点での感想ですが、そういう細かい点まで見ない人にとって、グラフの全体で見れば「良い」という結果になるのです。
となると、今回の雇用統計、何も知らない、そして調べもしない人が“最強の人”であり、私のようにこまごまとしたウンチクを語るようなアホが間抜けなのです。
数字そのものはバイデンの言うように革新的に進歩をしているのです。
「だから、ドルは強い」
「だから、ドルは強い」。それが言いたいだけです。
過去のドルの推移を見ても、だいたいこの1年は数字がよければドル高、悪ければドル安になっているのです。その過程でいえば、6月のドルは強い、ということです。
その証拠に、きょう6月7日(月)の朝いちばんから、ドルは強く推移しました(※編注:原稿執筆時点6月7日6:00)。この時間(6時)ではまだドルインデックスは動いていませんが、そのほかの通貨を見ていると明らかにドルが強いのです。
通常の月曜日の考え方は、週末の流れを引き継ぐのですが、雇用統計を受けてドル安になった流れを敵に回し、ドルが強くなっている。ということが「ドルは強い」という証拠になるであろうね、とは思います。
Next: 今後の為替相場を占うポイントは?G7財務相会合での合意を深読み
G7財務相会合で為替についての合意は行われているはず
G7の財務相会合では何等かの為替に対してのアクションがあると考えていましたが、いまだに、そういうことをコメントする首脳はいません。でも、必ずされているはずですから、きちんとニュースをチェックするほかありません。
※参考:G7財務相会合、為替に関する2017年5月の合意を再確認=麻生財務相 – ロイター(2021年6月5日配信)
そうでなければ朝からドルが強くなり、そして週末にビットコインが急落をする必要がありません。ビットコインが急落するのはドルが強くなった、金融緩和縮小に関するなんらかのニュースがあるからで、それを先取りした動きになると思います。
参考までに、ビットコインはドルを中心に動いていますので、ドルは週末に動きませんのでたいていは土日に急騰・急落しても、月曜日には元の値段に戻っているということを忘れてはいけません。なお、バブルで高騰が強いときや、マーケット崩壊のときはその限りではありません。関係なく土日の値段を超えてきます(笑)。こういう状態にビットコインが陥ったときは、通常の株や為替も要注意です。
つまり、何もG7の首脳からはコメントはありませんが、なんらかの合意はあるとみなければいけないということです。なんらかの合意があると仮定して、それに関するニュースが出てくれば、そのニュースにあったシナリオを組みなおすという作業をすればいいだけの話です。
朝からドルが強いのなら、とりあえず、ドルを買う(ドル円のことではない)作業を行い、現実に即応してポジションを構築するしかありません。コメントが自分の思う方向であれば、ポジションを増し、そして、期待外れ、もしくはぜんぜん違う方向であれば、手仕舞い、玉の一部手仕舞いを検討することになります。
こういう仮定のシナリオからマーケットにエントリーすることも大事なことで、ビットコインの急落などの証拠を見ると、ドルに関する、ないしは金融緩和縮小に関する合意がある可能性は高いのです。
国際法人税のおかげで「Amazon」「Uber」が勝ち続けている
そのほか、G7財務相会合では国際的な法人税率を15%以上とすることなどで合意したと報じられています。
これは、たとえばAmazonやUberは日本で法人税を払っていません。これだけ日本のインフラを利用しているのに、その法規を守らないウーバーの配達員、事故が起これば警察を呼ぶと思いますが、その費用負担を両社とも負っていないのです。個人的にはおかしいと思います。
税金の負担がないのですから、Amazonのサービスが日々進化するのは当然の話であり、ほかのネット通販が太刀打ちできないのは当然の話です。法人税20%・消費税10%を負担しないのですから、ほかのネットショップよりも30%のアドバンテージがあるわけです。勝って当たり前の話なのです。
たまにこういう話をしていますが、こうやってコロナで財政が真っ赤で、これから我々の税負担が増えるのは間違いない時代です。こういう国際的な取り組みは歓迎する内容で、バイデンのリーダーシップが確立されつつあるようです。
バイデンは個人的にはあまり好きではないのですが、評価するべきことはきちんと評価するべきで、嫌いだから何もかも評価をしない、という人がよくいますが、それは間違いです。
マーケットをやるうえでは公平な評価というのは大事なことです。
Next: 今後のドル円の展望は?2つの指標に要警戒
今後はドル高、金利の動きに注意
誰かが金融緩和縮小を確信づける発言や、ドルが強くなるという発言をすればドルは急伸するでしょう。
そして、ドルが強くなったときに米財務省が国際入札を追加するか、否かが問題です。これでアメリカ政府がドルを強くさせる気があるか、ないかはわかると思います。
今週はこういったさまざまな証拠集めの週になると思います(編注:原稿執筆時点6月7日)。
これらの証拠を集めていき、自身の相場観を強化していく週だと思います。もっとも今までの経緯を見ていると、まっすぐにドル高にはいくとは思えませんが、これまでチンタラしていた分、いくときは一気になる可能性もあります。その辺は実際をみてみなければわかりません。
そして、金利は去年の8月で、低金利のピークを打ってすでに反転をしていますが、マーケットの注目として「インフレ懸念」があります。ドル問題にカタがつけば15日前後に発表される米CPIに注目が集まるはずです。何度も言いますが「インフレ懸念」は派生的問題です。私はこのインフレ懸念に関して誰よりも早く、わかりやすく解説をしたと自負はしています。
ドルが高くなって、金利に移行する時期にも注目です。もう一度、金利の計算式を思い出してください。
金利の計算式は「ドル × 金利」です。ドルが高くなって、金利が高くなれば、ドルの実際値はどうなりますか?とんでもないことになりますよね。
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- バイデン外交と金融市場(6/9)
- フランス経済相発言はユーロを売らせることになるのか?(6/8)
- やはり市場は金利の動向ではなくドルの動向をみている(6/7)
- 今の状況の整理(6/6)
- 本当に雇用統計はいいのか?(6/4)
- アメリカのメディアをあまり信用してはいけない?(6/3)
- キホンのもう一度のおさらい(6/2)
- こういうニュースを見逃してはならない(6/1)
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- 最先端の技術はマーケットに必要か?(5/31)
- インフレが起こらない理由(5/28)
- ストーリーができつつある(5/27)
- 人の話はきちんと聞こうPART2(5/26)
- 6月のマーケットは荒れると思う(5/25)
- 価格の過去を知る重要性(5/24)
- なぜドル安になるのか?(5/23)
- G7の開催日程からマーケットを読む(5/21)
- ビットコイン危機はくるのか?とここ数日のドルの動き解説(5/20)
- いったいドルはどうなるのか?(5/19)
- 何を基準に為替レートは動いているのか?(5/18)
- 今週は日本のGDP(5/17)
- 5/17からのマーケットの展開(5/16)
- 人の話はちゃんときこうΣ(・ω・ノ)ノ!(5/14)
- ともかく基本に立ち返る(5/13)
- マーケットの基本(5/12)
- 米政権のマーケット方向性と今週の予定(5/11)
- 大失敗の雇用統計(5/10)
- インフレ懸念、意味をきちんと知ろう(5/7)
- 世界は緩和縮小の動き リスクマネーは退散傾向(5/6)
- ポンドの基準値をGDPから知るー実践編―(5/3)
- GDPから計算する為替適正値(5/2)
- 7月までのマーケットの展開はなんとなくわかる(4/30)
- ユーロやNZが高い理由と「インフレ懸念」(4/28)
- マーケットのキホン(4/27)
- 通貨の価値が上昇している、すなわち、急落の可能性はまだまだある(4/26)
- ひたひたと迫る急落の足音(4/23)
- 緩和縮小の事例、NZ、カナダ(4/22)
- 進む西側諸国と中国のデカップリング(4/21)
- 今のマーケットの状況(4/20)
- 米中対立とマーケット(4/19)
- オスとラリア、NZが高い理由と金利の話(4/16)
- FXをやるのにはチャートなどいらない(4/15)
- なぜユーロは上昇するのか? そして為替の基本 JJ問題そのほか(4/14)
- 為替の基本の「キ」(4/13)
- 今朝のメルマガをかんたんにしたもの(4/12)
- FXの中長期展望ですが株も関係あります(4/12)
- きょうの予測方法のおさらい(4/9)
- 株価は高すぎる状態(4/9)
- 緊急配信★朝のメールの訂正(4/8)
- ドル高円高ユーロ安などの見抜き方(4/8)
- G7によって為替相場は決定される可能性(4/7)
『角野實のファンダメンタルズのススメ』(2021年6月7日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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