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報道されぬ「土地規制法」の強権ぶり。政府都合で米軍基地周辺住民のプライバシーが丸裸=原彰宏

テレビ報道が五輪とコロナで埋まる中、またもしれっと重要法案が成立しようとしています。「土地規制法」は非常に強い権限を国に与え、個人のプライバシーを侵害する恐れのある法案です。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)

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※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2021年6月7日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

コロナの裏でまたも重要法案

テレビなどのメディアでは、連日コロナの話題ばかりで、今ではワクチン関連の話題が中心でしょうか。

そんな中で、重要法案が審議されています。

それは「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案」です。なんでこんなに法案タイトルは長いのでしょうね。いろんな思いを取り込みたいからなのでしょうか。

重要土地等調査規制法案、報道では「土地規制法」と称されていますね。

いったいどういう法案で、何が問題なのでしょうか。

「土地規制法」とは?

まずは、この法案の内容について見てみましょう。朝日新聞デジタルでは、以下のように説明されています。

政府が安全保障の上で重要だと判断した施設周辺で、土地や建物の利用状況を調べ、持ち主を調査することもできる。自衛隊や米軍の基地、海上保安庁などの周囲1キロや、日本の国境近くの離島が対象になっている。<中略>

政府が特に重要だと思う施設のまわりを「特別注視区域」に指定する。その区域の中で土地や建物を売買する前には、名前や住所、利用目的を届け出る必要がある。<中略>

施設の機能を害する電波妨害などの違反があれば、勧告や命令が出され、それにも従わなければ、懲役を含む刑事罰が科される。事前届け出をしなくても、罰せられる。<中略>

法案では、個人情報の保護に配慮し、「必要な最小限度」の措置にとどめると義務づけられている。しかし、具体的な内容は後から政府が「政令」で決められる。国会でチェックされず、思想信条など個人情報が際限なく集められる恐れを指摘する意見もある。

出典:土地規制法案とは? 自衛隊基地の周辺、持ち主を調査も – 朝日新聞デジタル(2021年5月27日配信)

この記事にもあるように、この法案対象は国が決めることができるようで、それには国会の承認は要らないとしています。

事前届け出は自由な経済活動を妨げることにつながることや、思想信条など個人情報が際限なく集められる恐れが非常に懸念される法案となっています。

安全保障条重要な場所と国が指定した場所は「注視区域」となり、その土地や賃貸契約までも、名前、住所、国籍、利用実態を調査することができるようになります。

法律案では、注視区域を、自衛隊や米軍基地、海上保安庁の施設、原子力関係施設などの周辺1キロと定め、国境離島も含まれています。

特に重要性が高い場所を「特別注視区域」とし、一定の面積以上の土地や建物の売買には事前の届け出が必要としています。届け出には、名前や住所、国籍、利用目的などとなっています。

法施行時には市街地は対象外になっていますが、報道では、ずっと対象外になるかどうかはわからないとしています。

どうしてこんなにも強い権限を、政府に与えようとするのでしょうか。いったい何が目的なのでしょうか?

Next: なぜテレビは報じない?沖縄米軍基地・自衛隊基地の周辺が調査対象に



重要法案が報道されない日本

このことを多くの国民は知らないということ、メディアは一切報道していないということが、どうしても気になります。まるで半島にある独裁国のようなもので、果たしてこの国は本当に、自由な国なのでしょうか。

表向きは民主主義を掲げる政府ですが、その実は政権独裁国家になっているようにも思えます。

日本経済は資本主義と言いながら、実によくできた、先進国で唯一成功している社会主義経済であると言えます。

ふと頭に浮かぶのは、沖縄米軍基地と日本国内の自衛隊基地

いろんな所にも書かれていますが、やはり誰しもが思うのが沖縄基地周辺の土地のことで、当然、この土地規制法の対象となるのでしょう。

沖縄基地周辺1キロ範囲で、そこにある土地や建物の持ち主や借り主について名前や住所、国籍や利用目的などを調査することができるようになります。

沖縄本島は、総面積の14%が米軍基地が占めています。前述の朝日新聞の記事によれば、嘉手納基地1キロ範囲には約9万人、普天間飛行場だと約10万人の人が住んでいるそうです。

東京都福生市にある米軍横田基地1キロ範囲内には、どれだけの人が住んでいるのでしょうか。米軍基地だけでなく、自衛隊基地まで対象に広げるとどれだけの人が調査対象になるのでしょう。

市ヶ谷にある防衛省周辺はどうなりますかね。自衛隊関係だと日本全国になりますよね。

北海道などでは、たしかに外国人が多く土地を買っています。日本の傾きかけた宿泊施設を、香港の富裕層が買っています。

でも日本人も、資産運用における分散投資の一環で、海外の不動産を買っていますよね。

Next: 日本弁護士連合会は「反対」の立場。その理由は?



日本弁護士連合会の反対声明

「会長声明」として、日本弁護士連合会は、この法案に反対の声明を出しています。反対理由を、声明文を読んだ個人的解釈として列挙してみます。

<日本弁護士連合会が反対する理由>

・対象となる「重要施設」には自衛隊等の施設のほか生活関連施設が含まれ、その指定は政権が恣意的解釈で行うことができること

・国は地方公共団体を使って注視区域内の個人の情報を入手できるが、その範囲は政令に委ねられていること

・注視区域内の土地等の所有者に対して、土地等利用に関する報告書または資料を提出させることができ、これを拒否したら罰金を科すことができる。そのことにより、思想・良心の自由、表現の自由、プライバシー権などを侵害する危険性があること

・土地等利用を制限する要件が曖昧であること(個人的には「その気になれば国はなんとでも理由はつけられる」と読めました)

・特別注視区域における土地売買契約の届出義務は、過度の規制であること

個人的な解釈なので、間違っているところもあるかもしれません。声明文はネットに掲載されていますので、皆さまがそれぞれご確認いただければと思います。
※参考:日本弁護士連合会:重要土地等調査規制法案に反対する会長声明(2021年6月2日配信)

あっという間に成立して報道されない不思議

この法案、衆議院では、たった12時間30分の審議で可決されています。

都議選があり通常国会が延長できないので、会期内に成立させることを優先して、逆算しての審議日程となっているようです。

しかし、こんな強い権限を国に与える法案を、そんなに急ぐ意味がいったいどこにあるのでしょうか。

国家安全のためと言えば聞こえはいいですが、どうも米軍基地を守るためのようにも思え、そのために住民のプライバシーを縛るという。とても日本住民を守るための法案とは思えないのですがね。

この法案は、テレビやマスコミが一切報じない中で、いま参議院で審議されているのです。

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らぽーる・マガジン』(2021年6月7日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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