マネーボイス メニュー

いま家を買うのは損か得か?コロナとウッドショックで価格上昇、マイホームと投資物件で異なる購入戦略=姫野秀喜

ウッドショックで建築木材が不足して住宅価格が高騰しているとの報道もありますが、家を買うなら待った方がよいのでしょうか?今回は相場への影響と、マイホームと投資用物件それぞれの最適な購入時期を考えます。(『1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ』姫野秀喜)

【関連】本当に信頼できる「住みたい街ランキング」教えます!不動産のプロが各社発表を選別=姫野秀喜

プロフィール:姫野秀喜(ひめの ひでき)
姫屋不動産コンサルティング(株)代表。1978年生まれ、福岡市出身。九州大学経済学部卒。アクセンチュア(株)で売上3,000億円超え企業の会計・経営計画策定などコンサルティングに従事。合間の不動産投資で資産1億円を達成し独立。年間100件以上行う現地調査の情報と高い問題解決力で、顧客ごとに戦略策定から実行までを一貫してサポートしている。

コロナ下で発生した「ウッドショック」、住宅価格への影響は?

「ウッドショック」による木材の高騰で、住宅価格も高騰しているとまことしやかに報道されています。はたして、ウッドショックは本当に大きな影響を及ぼしているのでしょうか?

そして、私たちがマイホーム購入の意思決定をするのに、どこまでこのウッドショックの影響を考慮すべきでしょうか。

そもそも、一口に木材価格の高騰といっても、実はその内訳は様々であり、どの種類のどの用途の木材、もしくは製材が高騰しているのかによって、住宅価格に与える影響は異なります。

例えば、丸太の価格が上昇しているのか、それとも丸太を加工した柱用の角材なのか、土台用の角材なのか。それはスギなのかヒノキなのかマツなのか、どの等級なのかによって、細かくその需給が異なるからです。

まぁ、とはいえ丸太も製材も合板も軒並み値上がり傾向ですので、乱暴ですが、この記事では、これら全部を総称して木材ということで取り扱おうと思います。

そもそも日本は木材(丸太、製材、合板、パルプ、チップ等)の7割を、輸入により賄っています。特に、輸入が多いのは、北米で全体の16%(米国・カナダ)です。次いで欧州8%、マレーシア・インドネシアで8%、その他、オーストラリアやロシアとなります。

ウッドショックと呼ばれる現象は、最も輸入量が多い北米の木材の高騰により、生じたものになります(一部中国やロシア材などの影響もあるが割愛)。

北米の輸入製材の高騰(つられて日本国内製材の高騰)は、コロナの影響を受けた、主に下記の要因の複合により、生じています。

<輸入木材の高騰理由その1. 米国木材の需要上昇による価格上昇>

米国ではコロナ禍からの景気回復に伴い、大幅な低金利政策がすすめられており、住宅ローンへの意欲が旺盛になりました。

その結果、米国の住宅着工件数は半年前の1.8倍と急増し、建築材である北米の木材価格を押し上げる要因となりました。

木材先物市場では、コロナ以前の水準と比して、4倍以上もの高値になりました。

<輸入木材の高騰理由その2. 運賃の上昇による価格上昇>

北米でのコロナ禍による港湾処理の遅延により、北米地域に輸送用コンテナが滞留するという事態となりました。

その結果、日本周辺のアジア地域でのコンテナ不足により、海上輸送運賃が値上がりしたのです。

材木そのものの価格上昇に加え、運賃の上昇がその価格上昇に拍車を加えたというのが、ウッドショックによる価格上昇の大まかな構造です。

この木材の値上がりは一過性のものだと考えられますが、米国での住宅建設需要によるものなので、需要がひと段落するまでは続きそうです。

そして、ひと段落就くタイミングは、おおよそ6か月後~1年後と予測されます。

というのも、米国の木材先物取引相場は、5月10日前後をピークに右肩下がりとなっており、大手商社などの先物押さえは、ひと段落していることが予測されるためです。

また、以前の記事でも分析しましたが、2010年のリーマンショック時の景気回復には、約1年程度~3年で回復しており、今回のコロナによる需要増も、それくらいのスパンで一巡することが想定されるからです。

【関連】2021年の不動産市況を大予測!マイホームは“買い”か“待ち”か=姫野秀喜

ただし、材木価格はコロナ以前に比べそれでも約2倍程度で推移しているため、大幅に価格が安くなるということはなさそうです。

Next: マイホーム購入は1〜3年ほど待つべき?答えは「NO」だ



マイホームは欲しい時が買い時

それでは、マイホーム購入は1~3年くらい待つのが良いのでしょうか?

答えは、NO(ノー)です。マイホームは欲しい時が買い時です。短い人生、少しでも長く快適な住まいで過ごすほうが良いと思います。

大手一戸建て建築メーカーのオープンハウスの試算によれば、一般的な住宅(4,400万円)に対し、ウッドショックによる価格上昇は36万円程度とのことです。

つまり、ウッドショックにより、マイホーム価格は約0.8%上昇するということです。

数千万円もするようなマイホームを買う時に、たったの1%未満の価格上昇を嘆いて、購入タイミングを逃すのは得策ではないと思います。

マイホーム購入は、子どもの就学や、転勤など、本人のライフプランに合わせて行うのがベストタイミングです。なので、多少の価格上昇は気にせず買いましょう。

2022年まで待つのもアリ

ただ、どうしても気になるという人は、来年くらいまで待てば良いと思います。

ウッドショックによる価格上昇の金額が、36万円と考えると、月々6万円の家賃 × 6か月分ですので、6か月程度家賃を払って購入を待つのであれば(6か月後に価格が下がったとすれば)下がった金額と家賃分とがトントンくらいになるからです。

逆に、1年・2年とマイホーム購入を待つのであれば、その間ずっと家賃を払い続けるわけですから、待てば待つほど、値下がり幅が大きくないと損する可能性が高まります。

値下がりを待つといっても半額になることはありませんから、マイホームを購入することにより、節約できた家賃と比較しながらいつ購入するのが良いかを冷静に検討してください。

いま投資物件は異常な高値。下がるまで待つのが正解

次に、投資物件についてです。

投資物件は2021年の1月からの緊急事態宣言を受けて、壊滅的に物件数が減少しています。全体の物件数が減少しているため、投資の最低ラインである利回り8%以上の物件も減少しています。

下図は弊社で毎日チェックしている物件のうち、東京23区内で「利回り8%以上、再建築可能、所有権」の最低ラインを超えた物件数の推移です。

この図を見てもらうと明らかなように、コロナ以前の2020年1月くらいまでは、月に平均20件程度は投資の最低ラインを超える物件が出ていましたが、最初の緊急事態宣言で10件前半に減少し、2021年の1月以降は月に数件程度と、利回り8%以上のまともな物件数は壊滅的な状況に陥っています。

たとえ、全体の利回りが下がっているからといって、利回り5%や6%などの“満室でもキャッシュフローがマイナスになるような物件”を購入してはいけないので、皆様には「絶対に利回りの低い物件(価格の高い物件)は買うな!」と口を酸っぱくして言っています。

そのため、投資家の多くからは「利回りが低すぎて(物件価格が高すぎて)購入できない……」という怨嗟の声が毎日のように届きます。

皆さん、安心してください。皆さんが「購入できないのは当たり前」です。

Next: 購入できないのは当たり前。焦ってダメ物件を掴まないよう注意



焦ってダメ物件を掴まないこと

次の図はコロナ以前(2020年1月以前)に、まともな投資物件を購入できる人を100人とした場合に、コロナ以降ではどうなったのかを試算したものです。

これを見ると、コロナ以前では100人の投資家が物件を購入できていたのに、2020年ではおおよそ68~65人しか物件の購入ができない状態になっています。

そして、2021年の緊急事態宣言下ではコロナ以前と比べて、たったの15人しか購入できない状態になっていることがわかります。

つまり、皆さまの「購入できない……」という肌感覚は統計的にも正しいのです。

マーケットがこういう状態ですから、無理して買う必要はありません。皆様の努力が足りないのではなく、マーケットが異常なのですから、買わなくていいのです。

イヤ、むしろ買ってはいけないのです。

ウッドショックによるマイホーム価格の上昇率0.8%なんて生易しいものではありません。マイホームとは異なり、投資物件は20%以上割高になっているものもあります。

こんな状況下で投資物件を売りに出している業者の多くは、生き馬の目を抜くマーケット感覚のある玄人です。マーケットが値上がり傾向であれば躊躇なく1割・2割価格を上乗せしてきます。

そんなマーケットの状況下で焦って不動産投資を始める必要はありません。物件を高値づかみすることは、不動産投資での成功から遠ざかることに直結しますから、絶対にやめましょう。

ということで、マイホームと投資物件で購入すべきかどうか判断がわかれるところです。

マイホームは買いたい時が買い時ですが、投資物件は高値が落ち着くまではしばらく様子見です。どちらを購入するにせよ、目の前のマーケットの短期的な動きに惑わされることなく、冷静に判断してください。

※参考資料:林野庁「木材輸入の状況」「木材貿易の現状」, 木材貿易対策室, 農林水産省, 木材価格統計調査(e-Stat), 木材製品卸売価格累年統計, 木材製品価格(品目・規格別)

【関連】2021年の不動産市況を大予測!マイホームは“買い”か“待ち”か=姫野秀喜

【関連】大家さんに我慢を強要。コロナ家賃滞納を正当化するアンフェアな日本社会=姫野秀喜

【関連】こうやって私たちは不動産屋に騙される。『やってはいけない不動産投資』書評=姫野秀喜

【関連】住み続ける地獄。『すべてのマンションは廃墟になる』書評=姫野秀喜

【関連】べらぼうに増えた日本の空き家、所有者に代わって「税金で解体する」のが正しい理由=姫野秀喜

image by:takayuki / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2021年7月4日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

無料メルマガ好評配信中

1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ

[無料 ほぼ 平日刊]
会社員の姫ちゃんが1億円の大家さんになれた!あなたも数年で1億円の大家さんになれる!何から始めたら良いかわからない人に読んでもらいたい。基礎を守って、リスクは小さく、リターンは中くらい初歩からコツコツと誰でもできるシンプルな不動産ノウハウをあなたに~♪

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。