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五輪強行の理由ダンマリ、菅総理に国民総スカン。「二階降ろし」で後ろ盾消滅、五輪前後に総辞職も=山崎和邦

五輪開催決定の理由の曖昧さ、ワクチンの大幅遅れなどにより、各種世論調査で菅政権の支持率が下落し続けている。この緊急事態時に官僚が用意した原稿を繰り返し読み続ける菅総理の態度は、もはや国民をバカにしているようにしか見えない。(「週報『投機の流儀』」山崎和邦)

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※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2021年7月4日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

官僚の作文を棒読みするだけの菅首相

アメリカ大統領は国民が直接選ぶが、日本の総理大臣は国民が直接選ぶわけではない。したがって、アメリカ大統領は国民に直接向き合うが、日本の首相は国民に向き合うようなフリはしても決して国民を見ていない。

国民の世間の常識としては、菅という政治家は、いわゆる首相の器ではなかった。自民党総裁選任期の9月で代わった方がいいと思い始めたと思う。各種世論調査では菅首相に長くやって欲しいという回答は、2割もない(月刊誌「選択」6月号)。

昨年末から今年始めに内閣支持率が急落すると、マスコミは「菅おろしが始まる」という観測をしきりに流した。世論も第3波が落ち着いた3月に、内閣支持率は一時下げ止まりの様子を見せたが、東京五輪開催の理由の曖昧さ、ワクチンの大幅な遅れで、内閣は5月に再び支持率が下落した。

菅首相はいろいろな質問に対して芸もなく、壊れたテープレコーダーのように一言一句変わらない答弁を、筆者がテレビで実況放送を見ている間に4回繰り返した。一語も変わらない言葉だ。

「安心安全を旨とする五輪……国民の健康と生命を守るのが使命です」 。この官僚が用意した原稿をわずか10分の間で一言一句変化なく繰り返した。「質問に答えていないではないか、質問に答えてください」と言われて、また同じことを繰り返した。「オリンピックはやるのかやらないのか?イエスかノー?で答えてください」と言われても、また同じことを繰り返した。菅は1日に同じセリフを12回、一言一句変えずに繰り返したことがあるという(月刊誌「選択」6月号)。

へぼ将棋でも3手先まで読めというが、菅首相は何も考えていないし、何の言葉も持たないのであろう。官僚が下書きした想定答弁集を棒読みするだけで、あとは横浜市会議員時代の政治渡世だけだろう。

「叩き上げ」とは何だったのか?

菅首相は「叩き上げが売り物の苦労人」で、苦労知らずの3世政治家だった安倍前首相とはまったく違うということになっていた。

しかしながら、叩き上げが売り物の政治家にしては、田中角栄氏と比べて、
(1)自分の言葉をまったく持たない
(2)対話能力がまったくない
(3)質問を聴いていない
という状態で、官僚が作った想定問答集の同じページの同じ行を棒読みするだけで済ませている

叩き上げが売り物の首相とはいっても、田中角栄時代の丁々発止の議論などは望むべくもない。質問に対して答えないで、同じ文章を棒読みしていることに対して実況放送を見ている筆者が腹立たしいのだから、野党側は余計に腹立たしいであろう。このようにトンチンカンな想定問答の同じ行だけを棒読みしているということは、国民をバカにしているのだ。

安倍前首相は、質問に対して答えてはいないが、一応しゃべるだけはしゃべるから、何とか答えているようには見えた。実際には質問には何も答えていないが、とうとうとして、しゃべってはいたからだ。菅首相にはそれさえもない。

30年前の平成バブル末期1991年には、自民党員は547万人いたという。それ以降、2度の野党転落を経て、一時は70万人にまで急減したが、安倍首相時代に120万人の目標を掲げ、113万人にまで、党員数を伸ばした。それも菅首相で激減するであろう。

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米中対立の先鋭化で始まる「二階おろし」で後ろ盾をなくす菅総理

最近の中国は、国内統治はもちろん、強権発動的なものであろうが、対外的な覇権志向を露骨に示すようになり、米中対立が激しくなっている。米中は互いに核兵器を所有しているから、全面的軍事衝突はあり得ず、経済上の権益対立に過ぎないという見方が一般的である。

米ソが繰り広げたイデオロギー闘争は、これこそが冷戦であり、互いに核兵器を所有しているから火力を用いた戦争にはならなかっただけのことであり、それも1962年10月の「キューバ危機」のように、核戦争寸前まで行ったこともあった。現在の米中関係は、それに比べれば、経済上の権益対立に過ぎないと見るのが普通であろう。

この中国に対して、過去に訪中団を率いてきた代表が、親中派とされている二階幹事長である。ところが、安倍前首相(1A)は麻生副総理(2A)と手を携える甘利経済産業相(3A)は「経済安全保障」の旗を掲げて対中強硬路線を押している。そして、安倍前首相が2016年に提唱した「自由で開かれたインド太平洋構想」は脚光を浴びつつある。

自公連立政権は1999年以来、民主党時代の3年を除いて、通算18年続いた強固な枠組みである。その自公連立政権が3Aを中心とした経済安全保障の旗を掲げて対中強硬路線を推していれば、親中派の二階と対決することになる。ところが、二階氏は自民党幹事長の在職年数は、史上最長となった。その史上最長の歴史を持つ二階幹事長を「おろす」動きが親中派だった二階と対中強硬路線の3A(安倍・麻生・甘利)との対立を生めば、二階は幹事長の座からおろされる。

(失言の多い政治家は、見方を変えれば底抜けの正直者でもある。先日、安倍・麻生・甘利の3人がそろったところで、麻生氏は「A、A、A、この3人がそろえば何となく政局って顔だから新聞記者がたくさん来ている」と軽口をたたいた。)

そうすると二階によって自民党総裁にならせてもらって、総理大臣になった菅総理は足元が危うくなる。そしてワクチン接種の不手際、五輪開催の曖昧な決め方、安倍急遽退陣後の暫定政権の性格を持っていること、とても自前の外交政策を展開できる力がないこと、それらを合わせれば菅総理の自民党政権は続いても、菅総理が続くか否かは別の話だ。

甘利経産相は「半導体戦略は、国家の明暗をかける戦いとなる。半導体を制する者は、世界を制する」、安倍元首相「経済安全保障の観点から見ないといけない。一産業政策ではなく国家戦略だ」と発言した。

要は半導体利権である。確かに半導体不足は世界的な大問題である。バイデンも同盟国と協力して供給網を見直す大統領令に署名して、7月の日米首脳会談共同声明にも「半導体を含む供給網についての連携」が明記される。

Next: 東京五輪次第で菅首相の退陣が決まる可能性も



菅総理の命運を決める五輪開催へのこだわり

菅首相の五輪開催へのこだわりは、とんでもない結果を招く可能性も出てきた。

「五輪が開けなくなってきたら、菅さんは退陣だ」「その五輪が国民世論の多数が反対する中で、今や最大のコロナリスク要因だ」となっている。この日本の感染状況に対して、米国は5月25日に渡航中止を意味する最も厳しい「レベル4」にしたと発表した。茂木外務大臣は、米政府からは選手団の派遣とは関係ない話だと説明を受けていると語ったが、ここから先は菅首相の命運を左右する場合も出てくる。

コロナ禍での五輪開催は「あうんの呼吸」とか「空気が決める」などという、日本の意思決定の歴史を繰り返しているように見える。

既報で述べたが、第二次大戦の開戦や戦艦大和の出撃命令などは、誰が見ても明らかな失敗の結果を予測しながら、誰も止めることができなかった。そして、予想通りの結果になった。

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■ 第1部;当面の市況
(1)先週末、米国市場の3指数は最高値更新したが、日本株の上値は重い
(2)6月いっぱいをざっと振り返れば……
(3)企業が想定する2021年度の円ドル相場は106.7円と想定
(4)米金融政策読めず、個人投資家は短期売買に傾斜
(5)景気敏感株であり、時には一般株より先行性を持つ株である海運株の行方─「裏の裏は表」か?
(6)米金利上昇と日米株式市場のグロース銘柄に回帰したが……
(7)五輪に執着する首相、右顧左眄する答弁、これでは秋の衆院選は(自民党が政権党であり続けることには変化はないだろうが)大幅に議席数を減らすであろう

■ 第2部;中長期の見方
(1)FRBの資産購入額の段階的な減額「テーパリング」
(2)「菅の顔」で選挙が勝てるのか?
(3)自民党員数の盛衰
(4)米中対立と「二階おろし」と菅首相の危うさ
(5)コロナ禍のもとでの東京五輪、良きにつけ悪しきにつけ、いずれにしても現代史に大きな事変として刻まれる。株式市場に無縁ではない
(6)コロナ規制緩和策を延期するプロセスについて英国に学べ、と言いたげな表現をしたが、「英国かぶれ」は甘い
(7)日本経済の力
(8)新たな米ソ冷戦は、誰も望んでいない
(9)「最低金利制度」を設ける案
(10)日欧米で超低金利が続く背景
(11)日本を追尾国と仮想し、自国を被追尾国の位置に置いたレーガン政権
(12)経済学者の間で、最近は財政政策必要論が広まっている
(13)中国共産党の一党独裁政治は不死身か?
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山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2021年7月4日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。

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