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今夜の米雇用統計は超重要、強め予想も大幅下振れに要警戒。ドル円は戻り売り戦略で=ゆきママ

FRB(米連邦準備制度理事会)でも、いよいよテーパリング(緩和縮小)の議論が開始されました。そして、FRBの二大責務は物価の安定と雇用の最大化ですから、今日の雇用統計が重要なことは言うまでもありません。今日は雇用の現状を踏まえながら、雇用統計の展望と相場の値動きについて解説していきます。(FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)

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マイノリティな人々の雇用状況にも注目

先月のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の会見においても、パウエルFRB議長が雇用の回復は十分ではないなどと、雇用に関する言及が多くありました。

雇用市場がどうなるかが、テーパリングを開始する時期を決定すると言っても過言ではないでしょう。

ポイントとしては、黒人やヒスパニック層、さらには女性といった社会的に立場が弱いマイノリティな人々の雇用について、特に注目していることが明らかになったことでしょう。

実は白人の失業率は5%台まで回復しているのですが、黒人やヒスパニックの人々は依然として10%近い人々が職を失ったままです。

バイデン政権は、米国史上最も多様性のある政権を目指して、女性やマイノリティの人々を保護することを公約にしていますから、やはりこの政権の意向も重要な意味を持っています。

というわけで、市場は見かけの数字が良ければ雇用市場は回復したとの認識で相場を進めていくことになるでしょうが、実は中身も吟味される、マイノリティの人々の雇用という視点も持っておくと、相場の行き過ぎ、織り込み過ぎな値動きに対応できるでしょう。

強気な見通しは変わらない。ネガティブサプライズに注意

今月は先行して発表された民間の雇用者数(公務員を含まない)であるADP雇用報告が予想を大きく下回ったことで、一部懸念の声も上がっています。

それでは関連指標と雇用統計の事前予想値を確認していきましょう。

雇用指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)

ご覧のようにADP雇用報告は予想の+69.5万人増、さらに前月と比較しても半分程度の伸びにとどまっています。失業保険の申請件数も横ばいか、調査週においては前月を上回るなど、なかなか失業者が減少していないという現状があります。

非農業部門雇用者数の事前予想値も日を追うごとに下がっており、とりわけADPの数字を受けて先週までは+90万人台の増加が予想されていましたが、現在は+87.0万人増まで下がっています。

とはいえ、ISM(全米供給管理協会)の企業アンケートを元に算出された指数においては、人手不足感が鮮明となっているほか、旅行やレストランなどの支出が増加していることから、前月に続いてレジャー・サービス業の雇用が堅調に推移して、比較的大きな伸びになることが想定されています。

また、一部の州で失業保険の特別給付の減額を開始したことが雇用増につながるという期待もあるようです。

いずれにせよ、今のところは比較的強めの数字が予想されていますから、ネガティブサプライズに注意したいイベントになるでしょう。

Next: 「ショートで攻めたい」今夜のトレード戦略



今夜はショートで攻めたい!

ウォーラーFRB理事やブラード・セントルイス連銀総裁は、ここ2ヶ月の雇用統計がテーパリング議論の条件として重要になってくるとしています。

ですから、やはり今回の7月分の予想をしっかり上回って非農業部門雇用者数が+100万人増を超える数字となると、8月末のジャクソン・ホールでテーパーの地ならし、最短で10月に示唆という織り込みでドル高になりそうです。

一方、予想並の+80〜90万人増、あるいはこれ以下の数字が出てくるようだと、最短で10月のテーパリング示唆がやや後退することになりますが、ドルの値動きを見る限り、これは想定内でしょう。

そして、+40〜50万人増を下回るようなネガティブサプライズになった場合には、やはりドル安、さらに景気回復の後退を意識しての株安からの円高になりますから、これは下値試しでしょう。

ドル円チャート(日足)

ドル円は安値圏から切り返し、一段高となって21日移動平均線のある109.90円に迫っています。

すぐ上には110.00円という大台の節目もあるので、まずはここをしっかり上回っていけるかどうかでしょう。雇用統計前に上値をブレイクしていくなら、やや行き過ぎ感を感じます。

安値圏から切り返した理由として、冒頭に書いたようにウォーラー理事らがテーパーに前向きな見解を示したことがあります。観測気球的な発言ではありますが、パウエル議長も表向きは慎重姿勢を示しているものの、内心ではテーパーへ向けて準備をしておきたい意向と、市場からは受け取られているようです。

市場はやや期待感先行ですし、ADPの下振れにも関わらず強気ですから、トレード戦略としては戻り売り・ショートが良いでしょう。仮に強めの数字となったとしても、瞬間的に110.00円台に乗せるでしょうが、一足飛びで110.50円を超えていくのは難しそう。

それならば、現状の水準から軽く売りつつ、雇用統計前に110円台前半ぐらいまで乗せているのであれば、売り追加で結果を待ちたいところでしょう。

Next: 今夜の想定レートは1ドル109.00〜110.50円。下振れはチャンスか



今夜の想定レートは1ドル109.00〜110.50円

ネガティブサプライズとなれば、109.00〜109.20円レベルまであっさり下げてもおかしくないですからね。逆に+100万人増を超えるポジティブサプライズでも110.50円を瞬間的に超えるのは厳しそう。

このように、今夜はショートポジションを持ってネガティブサプライズを期待したいところです。もちろん、予想並かそれ以上の数字が出るのであれば、即損切り。

また、+40~50万人増を下回るような、かなり弱めの数字でもない限りは、引っ張らないで決済した方が良いでしょう。

なんだかんだ、ドルに次ぐボリュームを持つユーロが買えない現状では、極端なドル安を見込むことはできませんので。

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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2021年8月6日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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