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キャッシュレスで詰む高齢者たち。上級国民以外はクレジットカードを作れない…どう対処する?=岩田昭男

日本もキャッシュレス社会に入りましたが、高齢者はなかなかついていくことができません。さらに定年を迎えると、クレジットカードが作れなくなる人が多くいます。そんなクレジットカード難民を救う手はないのか、考えてみます。(『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』岩田昭男)

※本記事は有料メルマガ『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』2021年11月15日の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:岩田昭男(いわたあきお)
消費生活評論家。1952年生まれ。早稲田大学卒業。月刊誌記者などを経て独立。クレジットカード研究歴30年。電子マネー、デビットカード、共通ポイントなどにも詳しい。著書に「Suica一人勝ちの秘密」「信用力格差社会」「O2Oの衝撃」など。

定年後はクレジットカードが作れなくなる

2021年6月総務省が発表した『令和3年版高齢社会白書』によると、65歳以上人口は「3,619万人」(2020年10月1日時点)、総人口に占める割合(高齢化率)は「28.8%」となり、本格的な超高齢化社会をむかえている。

キャシュレス決済も年々普及が進み、すでに生活に欠かせない決済手段となった。

その中心になるクレジットカードの普及率も年々伸びているが、定年退職後、新たなクレジットカードを作ろうとすると、その人の生活状況によって「作れる人・作れない人」の格差が生まれているのも事実。

そんなクレジットカード難民を救う手はないのか、考えてみたい。

現在のシニアの多くは、デジタル弱者と呼ばれ、クレジットカードだけでなく、電子マネーやスマホ決済など、急速に進むキャッシュレス時代に取り残され始めている。

さらにクレジットカード会社がターゲットとする顧客年齢は、20~40代。契約後も長くカードを使ってくれる人を中心に動いているといっても過言ではない。

今回、話の中心となるのは、50代後半から60代前半の人。良くも悪くも定年退職が見えている、もしくは定年退職したシニアの人たちが対象となる。

クレジットカードの発行審査は「年金」が尺度になっている

例えば、65歳を過ぎた人が新しくクレジットカードを申し込んだら、審査に落ちたという話をよく聞くようになった。

今の60歳代はバブル期を経て貯蓄も多い世代というイメージがあるが、なぜクレジットカードが作れなくなるのか。

それは貯蓄の有無ではなく、現在の収入が影響している。

例えば、年金受給者となった場合、年収500万円の平均値だと、「厚生年金」は年間約192万円になり、クレジットカードの審査をクリアできる可能が高い。しかし「国民年金」を受給している人は、年間約78万円の収入となるので、審査が通らないという結果が多くなるという。

さらに、今の40代・50代の人たちも非正規社員では国民年金なので、年収によっては現在も将来もクレジットカードを持てない人が増える可能性がある。

今の60代、そして非正規やアルバイトで働く予備軍の人たちにとっては、厳しい現実が見えてきてしまっているようだ。これは強く叫ばれている格差社会問題にもつながる。

Next: クレジットカードでも格差。シニア世代は上級・下級で完全分断



シニアは上級国民と下級国民にはっきり分かれてしまった

一方で、シニアになってもたくさんの家族に囲まれ、リタイア後も不労所得や投資、社外役員などで高収入を得ている人がいるのも事実。

高級官僚や国会議員の多くが、そうした上級国民の地位に就いており、多くの家族に囲まれてコネと忖度に守られ、甘い汁を吸っている。

その人たちは難なく新しいクレジットカードを作ることもできれば、カード会社からの招待制カードを何枚も持っているケースもある。

反面、60歳を過ぎても毎日バイトをしてお金を稼ぎ続けないと、その日が暮らせない人たちもいる。

キャッシュレス時代と言われながら、同時に格差の二極化が進行しているのだ。

一般シニアはキャッシュレス時代をどう生きればいいのか?

では、クレジットカードを作れなくなったシニアは、今のキャッシュレス時代にどう対応していけばいいのか。

審査のないスマホ決済アプリを使うために、まずはスマートフォンを使いこなせるようにしなければいけないのだろうか。

デジタルに長けていれば、スマートフォンアプリを活用すれば良いだけだから問題はないが、多くのシニアはデジタルに弱いし、年々衰える視力はスマホの小さな文字についていけなくなっている。

やはり、持つなら使い慣れたクレジットカードが欲しいと思うだろう。

そういう人におすすめしたいのが「デビットカード」である。

Next: デビットカードに脚光。死亡時にも家族に負担がかかりにくい?



クレジットカードが作れなかったら、デビットカードの選択を

デビットカードなら、自分の銀行口座と紐づけての即時決済なので、クレジットカードのような厳しい審査がない。

しかも、クレジットカードと同じように端末読み取り・タッチ決済が使えるので便利だ。さらに自分の銀行口座と紐づくので、いわゆる借金にならないのもよい。

意外と知られていないが、じつは2000年からデビットカードは発行されていた。その先駆けとなったのは「スルガ銀行」のVisaデビット。その後、三菱UFJ銀行や三井住友銀行など都市銀も国際ブランドのデビットカードを発行しだした。

しかし注目が集まったのは、2019年以降となる。

デビュー当時はクレジットカード全盛の時代で、口座から即時に引き落としされるメリットや使い方が顧客に響かなかったのかもしれない。

それが最近になって、デビットカードの持ちやすさが再認識され始めた。

銀行のキャッシュカードを作る感覚で、クレジットカードと同じ使い勝手のカードが手に入る。さらに借金にならない。審査もほとんどない。VisaやJCBブランドが使えるショップやレストランも多いので、支払い時に困ることもない。

デジタル遺品で迷惑をかけない

もう1つシニアにとって嬉しいのは、デジタル遺品への対応だ。

クレジットカードを使っていると、期せずして死んでしまった場合など、デジタル遺品の処分が気になってくる。

クレジットカードでは、利用金額がそのまま借金になって残ってしまうから、気を付けねばならない。それが後で相続人が苦労する原因になったりする。死んでから迷惑をかけてしまうのだ。

その点、デビットカードは、即時引き落としだから負債になることはなく、後始末が楽である。相続人を悩ますことは絶対にない。

この有利なデビットカードは、都市銀行だけでなく全国の地方銀行でも盛んに発行しているので、一度行きつけの銀行で聞いてみるといいだろう。自分のメインバンクで作るのもいいし、普通口座を作れば新しい銀行でも作ることができる。

それでもクレジットカードが欲しい人は、家族カードを検討する方法がある。

また、消費者金融が発行しているクレジットカードならば、審査が簡単だから挑戦するのもいい。ただし、どちらも条件がその人の環境によって大きく違うため、あまりおすすめはできないが……。

Next: クレジットカードを複数同時に申し込むのは年齢に関係なくNG



クレジットカードを複数申し込むのはNG

最後に、年齢に関係なく、クレジットカードを作るときに気をつけておきたいことがある。

それは「5枚以上のクレジットカードを同時に申し込む」こと。”ポイ活”が人気になっていることもあって、年会費無料のカードを何枚も同時に申し込む人が増えているが、これをすると審査会社に目をつけられてしまい、マイナス要素になることがある。

自分に使う気がなくても、まとめてキャッシングするのではないかと判断されるわけである。5枚分のキャッシング限度額が年収をオーバーする可能性があり、そのため審査NGとなるケースがあるのだ。

ただ、5枚を同時に申し込んでも、処理タイミングやその人の年収によっては審査を通るケースもあるという。しかし、多くの場合、信用情報に黄色信号が灯り、その後、審査が通りづらくなるのは事実らしい。

そうした弊害を防ぐにはどうすればいいかというと、1週間ごとに申し込むとリスクがあるが、半年に1枚申し込むくらいなら問題はないという。

快適なキャシュレス生活&ポイ活のために、デビットカードへの切り換えを検討してみるといいだろう。あと、年齢に関係なく、複数枚の同時申し込みはNGということを頭に入れておこう。

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image by:Ned Snowman / Shutterstock.com

達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』(2021年11月15日号)より一部抜粋・再構成
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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世の中すっかりカード社会になりましたが、知っているようで知らないのがクレジットカードの世界。とくにゴールドカードやプラチナカードなどの情報はベールに包まれたままですから、なかなかリーチできません。また、最近は電子マネーや共通ポイントも勢いがあり、それらが複雑に絡み合いますから、こちらの知識も必要になってきました。私は30年にわたってクレジットカードの動向をウォッチしてきました。その体験と知識を総動員して、このメルマガで読者の疑問、質問に答えていこうと思います。ポイントの三重取り、プラチナカード入会の近道、いま一番旬のカードを教えて、などカードに関する疑問にできるだけお答えします。

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