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川勝知事の女性蔑視で台無しになる静岡県「リニア反対」の民意。辞任を迫る自民党の狙いとは=原彰宏

「リニア新幹線」反対派の静岡県・川勝知事が女性蔑視発言で批判を受け、その後に撤回しています。以前にも御殿場市を「コシヒカリしかない」と揶揄する演説を行ったことで辞職勧告決議案が出されて11月末に可決も、本人は辞職の意向はないとしています。もし辞職となった場合、参院補選の投票によってリニア建設「反対」の意思を示した静岡県の民意はどうなるのでしょうか?(『らぽーる・マガジン』原彰宏)

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※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2021年12月6日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

失言で辞職勧告「リニア反対派」の静岡県知事

静岡県の川勝平太知事が「女性蔑視発言」を行ったとして、自民党・公明党の女性県議らが抗議文を手渡し、辞職を求めています。

川勝知事に対しては、10月の参院静岡選挙区補欠選挙の応援演説で、相手候補をおとしめる目的で「(御殿場市には)コシヒカリしかない」などと発言し、その後、撤回と謝罪をしたことで、先月24日の県議会臨時会では、発言の責任を問われ、県政史上初となる知事辞職勧告決議案が可決されました。

女性蔑視発言はよくないことですが、自公政権側には、どんな形でも川勝知事を辞めさせたいという強い思いがあるのでしょう。

川勝知事は、リニア中央新幹線の建設には断固反対をしていて、反対を唱える議員を積極的に応援してきました。

女性蔑視発言に関しては、きっちりと問題として取り扱わなければなりませんが、リニア新幹線の建設における問題が、これでうやむやにされないかが心配になります。

女性蔑視発言の内容とは

まずは、女性蔑視発言を拾ってみましょう。「あなたの静岡新聞」サイトに、川勝知事の発言が載っています。

報道が問題視している部分を抜粋します。

私が学長になった時です。この現場を学生に見せようと思った。静岡文化芸術大です。公設民営で8割は私立大。倍率11倍。8割くらい女の子。11倍の倍率を通ってくるんですから、みんなきれいです。めちゃくちゃ顔のきれいな子はあまり賢いことを言わないとですね、なんとなく、もうきれいになる、きれいに見えないでしょ。ところが全部きれいに見える。

※出典:川勝平太知事 女性蔑視発言全容 – あなたの静岡新聞(2021年12月2日配信)

この発言を捉えて、自公県議を中心に、議会は参院補選時の発言も含め、徹底して川勝知事の首を取りに来ました。

Next: 静岡県「命の水」の危機!? 岸田内閣 vs. 川勝知事のバトルが勃発



静岡県水源の危機!? 世間の関心が薄れたリニア新幹線「反対」論

この女性蔑視発言で世間の関心が薄れそうになっているリニア中央新幹線建設に関して、川勝知事が指摘している問題点について言及していきます。

静岡県最大の危機だ。命の水が失われるのか、岐路に立っている……これが、川勝知事の選挙において終始訴えていたことです。つまり、川勝知事が当選したことが、民意は「リニア建設反対」ということだと主張しています。

水資源や生態系への影響を懸念……と言っています。流域の62万人の暮らしを支え、地元では「命の水」とも呼ばれる大井川の水への影響を心配しているのです。リニアのトンネルが、南アルプスの地下深くで、この大井川の源流の下を貫くように計画されているからです。

去年10月には、静岡県特産の「茶」の生産者など、流域のおよそ100人が原告となり、県内工事の差し止めを求める訴えを裁判所に起こしています。

山の表面から最大で1,400メートルもの深さの場所で掘り進められるのですが、たしかに地中には、大井川の水源となる大量の地下水がため込まれているとみられています。

JR東海によれば、何も対策をとらなかった場合、工事によってトンネル内に地下水が湧き出すことによって、大井川の水は最大で毎秒約2トン減るという試算を出しています。

これは60万人分の生活用水に匹敵する量だ……JR東海は、水を通すための導水路をつくり、トンネル内に湧き出た地下水を集めて大井川に戻す対策を取るとしています。

ところが、トンネルの一部は山梨県側から掘り進める計画で、地質状況の把握などのために、本体のトンネルより先に掘られる「先進坑(せんしんこう)」が貫通するまでの間、山梨県内へ水が流出するそうで、静岡市の推計では、何も対策がとられなければ、その量は、最大で500万トンになると指摘しています。

静岡県としては、この山梨県側に流出した分も、大井川に戻して欲しいと要望しています。

岸田内閣 vs 川勝静岡知事

このやり取りがあった上で、岸田内閣発足後の、斉藤鉄夫国土交通大臣と川勝知事のやり取りを見てみましょう。

10月8日に開かれた定例会見で、リニア中央新幹線の静岡工区問題について記者の質問に、斉藤鉄夫国土交通大臣がこう答えました。

10月6日に開かれた川勝平太静岡県知事の会見によると、有識者会議の中間報告素案では、地元から求められている大井川の全量戻しについて、トンネル掘削時に流出する水を戻す方法ではなく、掘削後に水をプールに貯め、そこから数十年かけて戻す方法が提案されているという。<中略>

また、川勝知事が静岡工区の南アルプストンネル工事をJR東海へ中止するよう求めていることについてどう考えているのかという質問に対しては「川勝知事の要請は、時間的に、知事の要請があって私の発言があったのではなく、私が発言したときは要請について存じ上げていませんでした」とした上で、要請を踏まえて、国交省として検討していきたいと述べた。

※参考:岸田首相のリニア推進指示に静岡県知事が反発…斉藤国交相「県民の意思をないがしろにすることはあり得ない」 – レスポンス(2021年10月11日配信)

川勝知事は、斎藤大臣の提案に対して「到底、承服できない」と反発しているのです。

Next: 静岡県にとってはデメリットしかない。知事辞任で民意はどこへ?



川勝知事の辞任で「リニア建設反対」の民意はどこに行く

川勝知事が当選したことで、民意は「リニア建設反対」の意思表示をしたと言えますが、その川勝知事が「コシヒカリしかない」発言と女性蔑視で辞任に追いやられることになれば、果たして民意はどうなるのでしょうか。

また、川勝知事のリニア建設反対を「エゴだ」「パフォーマンスだ」と捉える論調もあります。

静岡県内には、リニアの駅の設置は計画されていないというのも事実で、新幹線事業などに見られるように「駅ができるから地域経済が活性する」という見方もあり、単なる「通過」だけだと、たしかに静岡県にはメリットがないというのは、まあそのとおりでしょう。

水資源や南アルプスの生態系への影響を及ぼすだけで、デメリットは数えられても、メリットがないリニア新幹線計画には、前向きになれないのもわかります。

あれだけの大規模工事なら、本社・東京の建築会社が工事全般を仕切るでしょうからね。

そもそも日本経済にとってリニアは必要なのか?

そもそも、日本の地下深くを走るリニアモーターカーは、今の日本経済にとって本当に必要なのでしょうか。東京・名古屋間をそんなに早く結ぶことに、どれだけの経済効果があるのでしょうか。

地下深くで事故が起きたら、乗客の安全は保たれるのでしょうか。結論ありきの計画…でしょうか。

それに、コロナ禍で経営が大変になったJR東海の懐具合はどうなのでしょう。どれだけの税金が必要とされるのでしょうか。

とにかくリニア新幹線事業は、本当に必要なのかを立ち止まって見直していただきたいところ。しかしながら、もう走り出している事業を止めるのは無理なのでしょうね。

そんなことも思いながら、川勝知事の女性蔑視発言問題の行方を、見守りたいと思います。

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