アメリカ株は元気がいいのに、日本株の元気のなさが際立つと考えている人は多いと思います。その理由には根本的な問題があります。この原因をきちんと精査していくと、結局、結論は金融緩和のやりすぎということになります。今、アメリカは巨額の金融緩和を行っているから元気がいいだけであり、いずれは日本のようになるよね、と私は考えています。(『角野實のファンダメンタルズのススメ』)
※本記事は有料メルマガ『角野實のファンダメンタルズのススメ』2021年12月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:角野實(かどの みのる)
大学卒業後、金融機関に10年ほど勤務。独立して投資家の道へ。現在は企業経営者として活動、FX関連の執筆を多数行っている。
出荷価格が上昇しても、小売価格が上昇しない日本経済
日本経済が低迷する原因は何でしょうか。これは非常に簡単なことで、以下のグラフを見ることによって誰でも容易に理解できます。
・日本企業物価推移(年率)
メルマガ資料1 pic.twitter.com/6xkv1RrMs2
— 角野實 (@ytk172jp) December 13, 2021
・日本消費者物価推移(年率)
メルマガ資料2 pic.twitter.com/DQQUrg9QWe
— 角野實 (@ytk172jp) December 13, 2021
まともな経済では、企業物価(卸売り物価、企業が工場などから出荷する価格)が上昇すれば、通常、3か月遅れで消費者物価(小売店価格、スーパーやコンビニでの価格)は上昇します。
これが自由主義経済です。
つまり出荷価格が上昇すれば小売価格が上昇するのですが、日本は、出荷価格が上昇しても、ちっとも小売価格が上昇しない。
それはなぜでしょうか?
高いなら買わない私たち。コスト増対策で企業の内部留保が積み上がる
答えは非常に明快で、日本経済はデフレが長引いているので価格を引き上げると、すぐさま売上が落ちるのです。
つまり、過剰供給状態が何十年も続いているので、高ければ買わないという選択を消費者がするだけの話なのです。
だからこそ、企業は出荷価格の値上がり分を企業努力で回避をするのです。
つまり、据え置き価格で販売する。だから、企業の社内留保が過去最高なのです。つまり、値上がりのコスト負担をするために、社内留保をしてそれに備える。
そのための資金ですので、研究開発費などのための社内留保ではないのです。
Next: 「企業努力」という美名の裏で行われる人件費カット
人件費が真っ先にコストカットの対象になる
もっといえば、岸田さんがいくら「お給料を上げろ」とシャウトしても、上がるわけないでしょ…ということです。
調達費のコストを負担しているのに、人件費のコストまで負担しようとは企業は考えません。税金が軽くなるのであれば考えるでしょうが、今回のは時限立法ですので、税金負担がもとに戻れば人件費など真っ先にカットの対象になるのです。
政府はこの先、賃上げがあまり進まないので、この政策をもう少し続けよう…という「安易」な決断するでしょう。おそらく、賃上げ税制の恒久化を図るのでしょうね。
結果、財政赤字が膨らむということになる。これがいつものパターンです(笑)。
こういうことをやっていれば、日大や籠池のような、ロクでもない連中たちがその制度を悪用して私腹を肥やします。恒久化しているものを廃止するのには、なんだかんだと理由をつけて反対し、中には税金で肥やした私腹を政治資金と献金して、その制度の存続を訴える連中が出てくるという、アホなパターンです(笑)。
周囲から見ていると、やってられない!と思うのがオチです。
最初から破綻している「賃上げ税制」
つまり、最初から、岸田さんの賃上げ税制など破綻をしているのです。その化けの皮がはがれるのは早いよ、ということです。
次の内閣ができたとしても、税金ジゴロがこの税制廃止にこぞって反対するでしょう。税金にたかる連中が多すぎるのです。結局、また無駄なことを存続させるということです。
要は、企業が人件費や出荷価格負担をなくすような社会にしなければいけないのに、安易な賃上げ税制でお茶を濁しているだけの話。そのメッキがはがれるのは早いと思います。
なぜなら、こんなことを続け、インフレが長期化すれば、日経は下がり続けるからです。
で、また金融緩和を行い、また税金に群がる連中が増える……ということだけの話です。
いい加減に、この連鎖を断ち切らないといけません。しかし、岸田さんを筆頭に、このことをまず理解している人が政治の世界にはいない。原因がわかっていても、周囲との軋轢を避けるためにそんなことができる人が、政治家の中にいるとは思えません。
Next: 米国にもデフレの兆候?コスト増を企業が負担している
米国にもデフレの兆候?
参考までにアメリカの企業物価と消費者物価の関係を掲載します。
・アメリカ卸売り物価推移(年率)
メルマガ資料3 pic.twitter.com/6RW9Y8M7LO
— 角野實 (@ytk172jp) December 13, 2021
・アメリカ消費者物価推移(年率)
メルマガ資料4 pic.twitter.com/lOihMtkCV6
— 角野實 (@ytk172jp) December 13, 2021
アメリカは「出荷価格が上昇すれば、消費者物価が上昇する」という健全な形になっています。
しかし、その数字をみてください。「卸売り物価 > 消費者物価」になっていますよね。つまり、日本と同じように、企業が値上げコストを負担している兆候が出ています。
なぜなら、値上げすると経営に打撃を与えるくらい売上が落ちるからです。いずれ、供給過剰からデフレ経済になれば、コスト負担の割合はもっと大きくなるでしょう。
つまり、日本人もアメリカ人も、自由主義や民主主義社会が大事だとバイデンを筆頭に言っていますが、価格統制をされている社会主義経済と同じ方向に向かっているということです。
中国やその賛同者は貧者や差別をなくそうとせず、富めるものをますます富ませ、それを全体にトリクルダウンさせようという政策で、よほど自由・資本主義に近いような気がします。
長い目、中期的、短期的に見て、どちらが勝つかの回答は違いますが、同じ方向を目指していることは変わりがなく、なぜ、そんなもので対立を煽るのか、不思議に思います。対立を煽る政治指導者は、間抜け…と思っています。
どちらにしても、日本の企業が自由に値上げできる権利を奪われていることが、デフレや長年の停滞の原因だと私は考えています。
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『角野實のファンダメンタルズのススメ』(2021年12月14日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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