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どこにでも現れる転売ヤー。高所作業におけるフルハーネス着用「完全義務化」も商品は品薄状態。“盗難騒ぎ”や“高値出品”も横行する異常事態に

高所作業に従事する方々にとっては必須アイテムと言っても過言ではない「安全帯」だが、今年に入り、それを巡って現場では“品薄”や“盗難”といった、ある種の混乱が起きているとSNS上で話題となっている。

ことのきっかけは、2019年に行われた労働安全衛生法の改正。これによって、従来からの「安全帯」の名称は「墜落制止用器具」に改められ、さらにその墜落制止用器具は、一本つりの「胴ベルト型」ではなく、胴部だけではなく腿や肩などにもベルトを通して全身を保持できる「フルハーネス型」の使用が原則に。さらにフルハーネス型でも、新規格に適合したものでないと使用できなくなった。

2019年2月に施行されたこの改正労働安全衛生法だが、現場レベルではそれまでの安全帯が引き続き着用できる猶予期間が設けられて来た。しかしそれも2021年いっぱいで終わりとなり、2022年の1月2日からは従来規格の製品の販売や現場での着用が全面禁止となったのだ。

現場から不評続出のフルハーネス

高所作業においての安全性のさらなる確保、さらに従来までの胴ベルト型の安全帯は、墜落した際に内臓の損傷や胸部等が圧迫される危険性が指摘されていることから、実施に至った今回の改正。

ただフルハーネス型の墜落制止用器具は、その価格が1万円以上かかるなど決して安価なものではないのが実情。さらに新規格のフルハーネス型の使用にあたっては、事前に 「安全衛生特別教育」と呼ばれる学科4.5時間・実技1.5時間からなる特別教育の受講が必要とされており、これにも1万円ほどの費用がかかるなど、移行にはある程度の負担が必要となる。

また、従来の安全帯とは異なり身体全体をホールドするフルハーネス型は、装着するのも外すのも面倒なうえに重く、さらに作業の際に邪魔になるケースも多々あったりと、実際に使用する側からは不評の嵐のようだ。

メルカリなどネットでの購入は注意が必要か

とはいえ、これからはフルハーネス型の墜落制止用器具が無いと、高所作業の現場には入れなくなるといった事態を受けて、昨年の半ばあたりからすでにフルハーネスの駆け込み需要が激増していた模様。「品薄」という声がSNS上では多く聞かれ、場合によっては注文しても手に入るのは半年後といった状況も発生しているようだ。またそれが高じて、現場などではフルハーネスの盗難被害も発生しているという。

さらに「品薄」ということになれば、どんな分野にでも暗躍してくるのが“転売ヤー”たち。彼らのいわば巣窟であるメルカリをはじめとしたオークションサイトには、さっそくフルハーネスの中古品が大量に出品されており、なかには相場よりもかなり高値で出品されているものもあるようだ。

ただ、新たにフルハーネスの墜落制止用器具を購入する際には、新規格に準拠したものかどうかをしっかりと確認する必要があり、ネットで買う場合はよほど信頼のできるショップの方がいいとの意見も。ましてやメルカリなどで出回っている中古品は、このタイミングで手を出すのは危ないとの声もあり、よくよく注意が必要のようだ。

そもそも、3年ほどの猶予期間があったのにも関わらず、この土壇場を過ぎたタイミングでどうしてこのような騒ぎになっているのか……といった声も聞こえてくる今回の件。転売ヤーの格好のカモとなっているのも致し方なしといったところだが、とはいえ安全な作業のためにも、早く供給体制が安定し、必要としている人間にフルハーネスが届くことを願うばかりである。

Next: 「今頃焦って買ってるところは…」



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