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「高いほど売れる」原価10円の化粧品を3万円で買わせる“共同幻想”の恐ろしさ。巨額宣伝費をかけた新ブランドが次々と生まれて消えるワケ=神岡真司

化粧品やサプリメントを買うときに「高い!」と感じたことはないですか?もし感じたとしても、「これぐらいの価格が普通」と思い込んで買ってはいないでしょうか。そんなあなたは、日本社会にはびこる“共同幻想”に縛られています。(『神岡真司の人生逆転の心理術』)

※本記事は有料メルマガ『神岡真司の人生逆転の心理術』2022年2月7日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:神岡真司(かみおか しんじ)
ビジネス心理研究家。日本心理パワー研究所主宰。法人対象のモチベーショントレーニング、組織活性コンサルティング、心のパワーアップセミナーなどで活躍。著書に『思い通りに人をあやつる 101の心理テクニック』(フォレスト出版)、『苦手な相手に勝つ実践切り返し術』、『必ず黙らせる「クレーム」切り返し術』(日本文芸社)、『効きすぎて中毒になる 最強の心理学』(すばる舎)など多数。

なぜ原価激安なのに高い金額で商品を買わされているのか?

日本では、ラーメンの価格はおおむね1,000円以下です。680円とか880円といった価格帯が多いことにお気づきでしょう。

ところが日本に来た外国人は、日本のラーメン店の価格を見て「安い!」と驚きます。欧米ではラーメンは2,000円前後の価格帯であるのが普通だからです。

ただし、日本の飲食店業界では、高級な具材を入れても、ラーメンの価格帯を1,000円以上にすると、とたんに「売れなくなる」というのが常識だそうです。いかにもデフレの日本らしい話です。

ここにも、人々の頭の中に、長い年月で刷り込まれた「アンカーリング効果」が働いているのです。

アンカーとは、船の錨(いかり)のことです。

船は錨を降ろすと、その位置からほぼ動けなくなって、係留されます。それが相場や値ごろ感をつくっています。私たちの日常生活の中では、いろいろな商品における価格帯で、「アンカーリング効果」が働いているのです。

生命保険も「アンカーリング効果」で欧米の2~3倍の価格帯

昨年11月のメルマガでも詳しくお伝えしたように、日本の大手生命保険会社の保険商品は、欧米の2~3倍もします。

【関連】無駄の塊「生命保険」なぜ欧米より3倍も高い?保険会社のボッタクリと偽りの“相互扶助”に気づけ=神岡真司

そのうえ、肝心の「もしもの時の保障部分」すなわち原価に相当する部分は、35%程度しかありません(純保険料)。

毎日、生命保険会社が広告を垂れ流せるのは、これだけ原価率が低いからです。残りの65%程度(付加保険料)が、保険会社の利益とコストになっているのです。

そして、横並びの保険各社の相場料金にみんなが共同幻想を抱き、「生命保険商品の価格はこんなもの」と思わされているのです。

こうした無駄の塊にお金を支払い続けていては、貯蓄もままなりません。「医療保険」などは健保組合の「高額療養費制度」がある限り、まったく必要性もないでしょう。

商品内容は少し違いますが、都道府県民共済に加入すれば、月々の掛け金は激安です。共済というのは、加入者の「利益相反」になっている生命保険商品と違って、加入者の「相互扶助」になっているため、よほどコスパがよいのです。

Next: 原価激安の代表格「化粧品」になぜ高いお金を支払ってしまうのか?



世の中には原価激安なのに高額商品がまかり通っている

ところで、世の中では、原価よりもはるかに高い価格で買わされているものが多くありますが、健康食品のサプリメントなどもそうです。

また、ブランド品も原価激安なので、アウトレットモールで5割引き、7割引きで販売してもメーカーは利益が出ています。

「ウェブレン効果の消費」といって、高額のブランド品であるほど、見せびらかしたい……といった顕示意欲が喚起され、セレブ気分が味わえる(自己拡張効果)から、ファンがつくのです。

しかし、原価激安なのに非常に高額で、日用品として当たり前のように高額販売されているのは、何といっても「化粧品」でしょう。化粧品ほどのボッタクリ商品は、ちょっと際立っているのです。

ところで、読者の皆さまは、化粧品のそれぞれの原料や容器などを含めた「原価」について、調べられたり、考えられたことはあるでしょうか。

今回は、その驚くべき価格の内容について紹介していきましょう。

原価激安なのに高額販売。最もひどいのが「化粧品」

なぜ原価激安なのに、化粧品は高額で販売されているのでしょうか。

それは「高いほど美肌効果がある」と思う共同幻想に支配されているからです。

化粧品の原価は激安です。これは業界のマル秘常識です。たった500円の肌クリームも、3万円もする高級美肌クリームも、中身に大した違いはありません。

原材料費は、驚くべきことに、いずれも10数円に過ぎません。おしゃれな容器代や箱代のほうが100円以上したりします。

けれども、500円のクリームよりも、3万円のクリームのほうをありがたがって「こっちのほうが絶対に効果がある」と信じて買う人が大勢いる商品なのです。

化粧品は、医薬品とは異なり「効能効果が謳えない」のに、消費者のほうが勝手に高額な商品のほうが「お肌にいいから」と信じてくれる人が絶えないのです。

Next: 中身はただの水と油。“オイシイ”商売に次々とブランドが立ち上がる



“オイシイ”商売に次々とブランドが立ち上がる

業界が長年広告や美装のパッケージで培ってきた「幻想」が、これほどまでに消費者に浸透している商品はないでしょう。

たとえば、スキンケアのための基礎化粧品の原料は大半が、ただの水と油です。

水と油を混ぜ合わせるための合成界面活性剤のほか、色素・香料・防腐剤が入り、さらに特殊成分をほんのわずかに入れたとしても、十数円で完成してしまいます。

代表的な例が、しっとり効果満点のヒアルロン酸です。美容整形外科などでは、シワやたるみの解消にヒアルロン酸注射1cc(1g)を「5万円」などと称してボロ儲けしていますが、ヒアルロン酸は、1ccで6リットルもの保水効果があり、1ccでも「50円程度」の価格にすぎません。0.1ccを化粧品に加えただけでもしっとり感が抜群になり、原料費はたったの5円なのです。

基礎化粧品の原料費は、化粧水が1~2円、乳液が2~3円、クリームが5~10円ぐらいです。メイクアップ化粧品も口紅が5~10円、ファンデーションが15~20円程度です。いずれも激安でできてしまうのです。

それが数千円や数万円で売れてしまうのですから、ものすごくオイシイ業界といえるのです。

ゆえに参入企業が後を絶ちません。しかしながら、そこに激甚な競争が繰り広げられているのが化粧品業界なのです。

上位5社がシェア8割を独占

2020年の化粧品業界の市場規模は約2兆6,000億円ですが、資生堂、花王、コーセー、ポーラ・オルビス、ファンケルの上位5社で、何と8割近いシェアを占めています。

残りを中小・零細の数百社が競い合う構造です。

化粧品販売の業態としては、美容スタッフがカウンセリング販売を行う「制度品メーカー」。ドラッグストアや薬店などで卸問屋経由によって仕入れて販売する「一般品メーカー」。通信販売による「通販メーカー」。訪問販売で売る「訪販メーカー」があります。さらに100円ショップで売る「100円ショップ専業メーカー」などがひしめき合っています。

参入障壁の低い「化粧品業界」

ところで、化粧品の原価は激安ですが、莫大な広告宣伝費を注ぎ込まないと売れない商品です。つまり「売るためのコスト」が宣伝費以外にも多くかかります。

ただし、化粧品業界では、大手以外はファブレス化(工場を持たずに外部に製造委託)が進んでいます。外注で原材料仕入れ、乳化、練り加工、香料付け、容器、パッケージ作りまでやってくれる専業メーカーが数百社以上ひしめいているからです。

そのため、化粧品の「メーカー」といっても、製造設備が要らないために、参入障壁は非常に低いのです。

販売ルートさえ確立できれば、零細・中小メーカーでもなんとか成り立ちます。

ゆえに、ほんのちょっぴりしか配合していなくても、独自の特殊成分配合を謳ったり、商品の由来をストーリー仕立てで宣伝していきます。

そこに一定数のファンが付いてくれさえすれば、零細・中小企業でも生き残れる業界だからなのです。

Next: 多くの女性が化粧品を使って「肌トラブル」を起こしている



多くの女性が化粧品を使って「肌トラブル」を起こしている

メイクアップなどの化粧をするのは、女性が大半です。

ところで、なぜ女性は化粧をするのでしょうか。それには諸説あります。

動物界では、メスを引き寄せるためにオスのほうの外見が派手ですが、人間界ではメスがオスを引き寄せるために、化粧で外見を磨くようになったという説があります。

また、江戸時代までは、男性でも眉黒にしたり白粉を施す化粧が見られたものの、明治に入っての富国強兵策で、男性は兵役などの社会的強さを示す価値観が重視されるようになり、男性の化粧が自然に廃れたという説もあります。

さらには、欧米女性は自然体重視ゆえに化粧をしない人も多いものの、日本女性は身だしなみを整えるのが社交儀礼になってしまっているという説などもあります。

いろいろありますが、日本では「すっぴんで人前に出るのは恥ずかしい」という女性が多いのは確かでしょう。それゆえ、国民生活センターに寄せられるスキントラブルに悩む女性の数は年々増えています。

コロナ禍でマスクを装着するようになってからは、肌トラブルも深刻です。

内容物については、2001年の薬事法改正で「該当指定成分表示」から「全成分表示」に変わっていますが、ラベルの表示成分を見ても、素人にはどれが化学物質で、どれが天然成分かもわかりません。

しかし、今ではネットで検索すれば、危ないと思われる成分には、ある程度の見当もつきます。できるだけ安全といわれる成分の入った化粧品を使うのが、安心の元でしょう。

高い化粧品を使うほど、美肌になれる……といった思い込みは、共同幻想です。安いモノでも、内容成分にさほどの違いはありません。

早くこんな共同幻想から卒業して、貯蓄のほうにお金を回し、貯まったら投資にも乗り出すことが大事でしょう。

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  • なぜ原価激安なのに高い金額の商品を買わされているのか――共同幻想の不思議(2/7)

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※本記事は、神岡真司氏のルマガ『神岡真司の人生逆転の心理術』2022年2月7日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。配信済みバックナンバーもすぐ読めます。

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神岡真司の人生逆転の心理術』(2022年2月7日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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「人生逆転の心理術」をお届けする神岡真司です。これまで心理学関連書籍70数点を著してきましたが、紙だけでなく、もっと多くの皆様に、人間関係向上に役立つ心理学の知見をタイムリーにお届けしたいとメルマガを始めることにしました。家庭や学校、ビジネスなど、効果的なコミュニケーション手法や心理スキルを知れば、「悩み」も解消でき、人生のステップアップも図れます。毎月、人生逆転に繋がっていく心理術を皆さまにお届けします。

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