コロナ禍による失業・賃金減・ボーナスカットなどで、住宅ローンの支払いが困難になった人が急増しています。返済が難しくなったらどうしたらいいのか。最悪の結果を避ける方法を解説します。(『教育貧困にならないために』川畑明美)
ファイナンシャルプランナー。2人の子どもと夫婦の4人暮らし。子育てをしながらフルタイムで働く傍ら、投資信託の積立投資で2,000万円の資産を構築。2013年にファイナンシャルプランナー資格を取得。雑誌を中心に執筆活動を行う一方、積立投資の選び方と積立設定までをマンツーマンで教える家計のコーチング・サービスを展開している。
住宅ローンを滞納したら何が起きる?
コロナ禍で給与が減少してしまったり、失業によって、住宅ローンの支払いが困難になっている方が急増しています。
2021年の平均年収は403万円。コロナの影響で前年から6万円も減少しました。
※参考:平均年収ランキング(平均年収/生涯賃金)【最新版】- doda(デューダ)(2021年12月13日配信)
住宅ローンの支払いは厳しいけれど、できるだけマイホームを手放したくない時はどうしたらいいのか?
まず、もしも滞納してしまったらどうなるのかを知っておきましょう。
住宅ローンの滞納が続けばマイホームは「競売」にかけられます。
競売とは、住宅ローンの借入れ先の銀行などの金融機関が最終的な手段として裁判所を通じて不動産を売り、その売却代金から優先的にローン残高を回収することです。
ただし滞納したらすぐに競売になるのかというと、そうではありません。
滞納1ヶ月目は、普通郵便で督促通知が届きます。
そして2~3ヶ月経過すると、電話や自宅に訪問などの督促になります。加えて個人信用情報に金融事故情報として掲載されてしまいます。配達記録や内容証明郵便などで、滞納分の一括返済を求められます。
その後4~6ヶ月滞納を続けると「期限の利益」を失います。期限の利益とは、分割での返済が認められていることです。つまり、住宅ローンを分割で返済する権利を失うということになります。
「競売」が始まるのは滞納7ヶ月目くらいから
その後は「代位弁済」が行われます。
代位弁済とは、保証会社が本来の債務者に代わって全額を返済することです。
代位弁済が行われると保証会社から一括弁済の請求にかわります。ですが、銀行に返済できない方が保証会社に返済できるわけがありません。
そのため保証会社は「法的手続きに移る」という手紙を郵送してきます。
この時に任意売却を勧められることもあります。任意売却をしないと、その後、いよいよ競売が始まります。
Next: 競売まで行くと大損?任意売却を選ぶべき理由
任意売却と競売の違いとは?
まず、任意売却と競売の違いを説明しましょう。
まず任意という言葉は、強制的に売却される競売(強制競売)と比較した場合、自らの意思で売ること(任意)という意味のため、「任意売却」と呼ばれています。
任意売却とは、金融機関が競売にかける前に自分でマイホームを売却する方法です。
通常、抵当権を抹消するためには融資額の返済の残りである「残債」を返済する必要があります。
ですがローンの残高よりも売却額が低い場合、不足額分は自己資金を当てないと抵当権を抹消できません。任意売却ならば、金融機関からの同意を得られれば、売却することが可能になります。
競売になってしまうと普通に売却するよりもはるかに安い金額で売却することになってしまいます。
競売で安くなるというこは、住宅ローンの残債が多くなるということですから、金融機関の回収金額が少なくなってしまいます。
競売の方がデメリットが多いため、任意売却を勧めるケースが多いのです。
競売よりも任意売却を選択すること
ただし、マイホームの売却価格を決めるのは売り主ではなく、金融機関となります。契約・引き渡しや売却後のローン残債についても、金融機関との連携が大切になりますので注意してください。
任意売却後に残った住宅ローンの残債は話し合いをして、無理なく分割して支払うことになります。
競売は、金融機関が裁判所に競売を申し立てます。入札方式で一番高い金額で入札した人が落札するシステムです。一般的な落札価格は、市場価格の70%ほどといわれています。
任意売却は、金融機関の了承のもとに行われ売却代金から諸費用の配分が認められています。なので引越し費用を認められるケースも多いのです。
ところが競売の場合、売却代金は返済に充てられ、資金は一切受け取ることができません。また競売となるとインターネットや新聞に情報が掲載されるため、プライバシーは守られません。また、売却しても残ってしまうローンの残債の返済計画についての交渉もできません。
住宅ローンを滞納する前に、早めに気付けば打つ手はあります。
Next: 最悪のケースは避けられる。滞納する前に金融機関に相談を
まずは金融機関に相談すること
ここまで解説したように、住宅ローンを滞納してしまうと、競売に至ってしまうまでには、約半年しか猶予はありません。
もしも返済が苦しくなりそうだとわかった場合、早めに手を打てば、打開策はあります。
まず、住宅ローンを借りている金融機関に相談することです。例えば、返済期間を延ばして毎月の返済額を減らすことを相談してみましょう。
他にもコロナ禍でボーナスが減給になっているようでしたら、ボーナス返済を減額する相談をしてください。
ただし、月々の返済額は増加してしまいますので、返済期間の延長も同時に申請する必要があります。また、一時的に返済が困難な場合は、一定期間の返済を減額するという相談も可能です。
金融機関と不動産会社には同時に相談を
また、リバースモーゲージに借り換えができるケースもあります。リバースモーゲージとは、マイホームを担保にして、お金を借りる方法です。契約者が生存している間は利息のみの返済となります。そのため住宅ローンをリバースモーゲージに借り換えできれば、住宅ローン返済負担を大幅に軽減できます。
ただし、すべての方が利用できるわけではありません。リバースモーゲージは、金融機関によりますが年齢制限があります。55歳もしくは60歳以上になっているケースが多いのです。
またリバースモーゲージで借りられる金額は、担保不動産の評価額の50%程度が融資の上限となっていて、担保評価額以上の住宅ローンの残高がある場合は、借り換えが難しいのです。
金融機関に相談しても厳しい場合は、マイホームを手放す方向も考えてみましょう。
滞納を重ねると任意売却か競売という選択肢しか取れなくなります。早い段階で不動産会社に相談をしましょう。通常の方法で売却して、住宅ローンが返済できるのならば、その方が良いからです。
金融機関に相談するのと同時に、不動産会社にも相談しましょう。
『教育貧困にならないために』(2022年2月24日・25日・26日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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