ロシアへの制裁では「SWIFT排除」が大きく取り上げられていますが、もっと驚いたのはロシアが用意していた「外貨準備の凍結」です。そこでプーチンが取った対応は、紙くず同然となったルーブルを使って、他国からの借金を返済しようというもの。この暴挙によって、ロシアが仮にデフォルト危機を乗り切ったとしても、国際金融界からは完全に締め出しを喰らうでしょう。(『海外移住から帰国した50歳男子の北海道くらし日記』栗原将)
プーチンにとっても想定外?ロシアの外貨準備を「凍結」
ロシアによるウクライナ侵攻に対し、西側各国が経済制裁に踏み切りました。
一般向けのニュースで取り上げられるのは、SWIFT排除がほとんどです。しかし、個人的にもっともインパクトが強かったのは、欧米や日本などに置いてあった「ロシアの外貨準備を凍結」するという制裁です。
これについては、意外なほど取り上げられていません。
ロシア側からの声明が聞こえてこないことから、プーチンにとっても想定外だったものと判断しています。
凍結を想定していたなら、まさか、各国で外貨準備を増やしてはいなかったでしょうから。
プーチンとしては、経済制裁されても、増やしてきた外貨準備を使えば、ルーブルはある程度は守れる……そう目論んでいたのでしょう。
しかし、もはやルーブルは完全に「紙くず」の方向に突き進んでいます。
まだ紙くずになっていないのは、取引がほとんどできなくなっているから。ということは、流動性がない通貨であり、もはや価値はありません。
「紙くず」となったルーブルで対外債務を返済
そんななか、週末にもっと驚くニュースが流れてきました。
ブルームバーグによると、プーチン大統領は5日、対外債務をルーブルで返済することを認める大統領令に署名したとのことです。
※参考:プーチン氏、ルーブルでの対外債務返済容認-デフォルト回避探る – Bloomberg(2022年3月6日配信)
あっさり読んだら、「ああ、ちゃんと借金返すのね」くらいに流されてしまいそうですが、個人的には椅子からずり落ちそうなほどビックリしたニュースです。
この記事では明確に書いていませんが、要は、ドルやユーロなど外貨建ての債務をルーブルで返済してチャラにできるということなのです。
加えて、記事には、「大統領令によれば、ルーブルをロシア中央銀行の公定レートで支払えば、債務履行と見なされる」と書かれています。
これ、極端に解釈すれば、公定レートをロシアが恣意的に設定して、ルーブル暴落前の水準のルーブルを渡してチャラにした場合には、債権者からすれば3〜4割ほど目減りした返済にしかならないのです。
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「悪徳両替商」ロシアと世界はビジネスをしなくなる
ロシアが仮にデフォルトを乗り切ったとしても、国際金融界からは完全に締め出しを喰らいます。
過去のクリミア侵攻以来、クレディ・スイスなど一部の金融機関を除いてロシアへのエクスポージャー(与信額)は減少していましたから、今回の債権が焦げ付いても、過去のLCTM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)破綻のようにはならないと言われています。
ですが、ロシアが今回のような、いわば“悪徳両替商”みたいな振る舞いを行えばどうなるでしょう。加えて、別の記事では、経済制裁をしている国の債権について「報復的な意味合い」でルーブル建て返済をするとも報道されていました。このような国に対して、世界はもう投資もビジネスでの進出も二度としようとは考えないでしょう。
せめて、ロシア側から、「外国に置いてある我が国の外貨準備で返済させてください」くらいの交渉を持ちかけるような文明的な対応を期待したいところでしたが、到底、無理なようです。
ということで、ロシアは現在、デフォルトは何とか避けようとなりふり構わずやっているのですが、現実にデフォルトとなる可能性は高くなっています。
仮に逃れても、国際金融からの締め出しも決定的と見てよいかと思います。
『海外移住から帰国した50歳男子の北海道くらし日記』(2022年3月7日号)より
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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9年間のタイ、フィリピンでの海外移住生活から帰国し、北海道暮らしをはじめた50歳男子が、久々の日本生活から感じることや、海外生活のメリット・デメリット、そして、地方暮らしの実際について独自目線で語っていきます。