日米金利差によって円安になると喧伝されていますが、日銀が指値オペを通知したとたんに円高に振れました。客観的な事実として、ドル円は金利差では動いていません。(『角野實のファンダメンタルズのススメ』)
※本記事は有料メルマガ『角野實のファンダメンタルズのススメ』2022年4月21日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:角野實(かどの みのる)
大学卒業後、金融機関に10年ほど勤務。独立して投資家の道へ。現在は企業経営者として活動、FX関連の執筆を多数行っている。
誤った円安理論
「金利差によってドル円の円安が進行している」とご唱和されているみなさんが多いのですが、先日の日銀指値オペの通知を見てみましょう。
米金利は高騰していて、日本の金利は0.25の金融政策決定会合から上限ということが決まっています。米金利が今後も高騰することを前提に考えれば、ドル円の金利差は拡大すると仮定すれば、円安がさらに進行をするのでしょう。
しかし、日銀が指値オペを通知したとたんに、ドル円は円高方向に(笑)。
日銀から専門家から金利差によって円安が進行しているという嘘八百が白日の下に晒されているのですが、これでも「金利差、金利差」とシャウトする人々。事実を客観的に分析する力がないようですね……と私は思います。わからないなら語るなよ、ということです。報道も、金利差で円安になっているなんて言うなよ、と思います。
端的な事実は、私が、4月20日のメルマガで人民元安になっているから円高に転換する可能性が高いよ、と記したことだけです。
この円安と金利差は関係ない
4月20日の円高は、日銀の指値オペなんて関係ありません。21日から26日まで指値オペを継続することが、円高の材料としてマーケットは取り上げるのでしょうが、関係ないでしょ、というのが私の見解です。
金利の上限を設けるのは企業のためでもありますが、政府の債務のためでもあります。こうやって金利上昇すれば、国の利払いは天文学的に増えるのに、政府は一所懸命、参議院選挙に備えてバラマキを喧伝する滑稽さ、と思います。お金をばらまかなければ政権を維持できないという情けない政治家ばかり、ということをもっとみなさん認識すべきだと思います。
いずれにせよ、金利差での円安理論というのは破綻しているのは目に見えているのに、なぜ、その間違った理論を進めるのか、わかりません。
指値オペというのは金利高騰防衛のためであって、円安対策ではないことを黒田や日銀幹部はわかっているでしょう。4月20日に円高になったのは人民元安と推測され、日銀オペとは関係ありません。
皆さんにお伝えしたいのは、端的な事実をきちんと整合させることが大事だ、と言っているのです。日銀オペなど関係がないし、金利差が拡大する可能性の方が高いのですから、円安がさらに進行するのでしょう。しかし、現実は円高に行きました。この事実が大事だ、と言っているのです。
Next: なぜ人民元安に?前年度比を見ればわかる、本当は好調な中国経済
本当は好調な中国経済
上記は中国のGDPにドル人民元のレートは張り付けたものです。
すごく、わかりにくいのですが、まず、中国の成長がコロナやウクライナで減速していると専門家は騒ぎますが、実態は非常に良い、というのが事実です。
なぜならば、今回18日に発表されたGDPは1-3月ですが、この比較対象は2021年1-3月です。この間の成長は18.3%です。これに対して4.8%も伸びたというのは好調そのもの。それなのに「悪い、悪い」と騒ぐ専門家。統計の基本的な見方も知らないのではないか、と思います。
この18日のGDPによって、中国経済の完全なる再開がスタートをした、と論じることもできるのですが、世間のコンセンサスは中国のGDPは悪い、という摩訶不思議さです(笑)。
もちろん、コロナで外出禁止や工場閉鎖など、目先の悪材料に左右されているのはわかります。しかしGDPの3か月スパンでみれば、おそらく中国はものすごくよくなるでしょう。細かい説明もGDPに関してはしなくてはいけませんが、ここでは割愛をします。
人民元安は継続する
4月20日に円高に振れた原因が人民元安なのであれば、この人民元安の継続具合がみなさんの関心事になると思います。結論からいえば、人民元安は継続をします。
理由は、ドル人民元のレートがヒントです。ドル人民元の計算式は、メルマガでは何度も言っていますが「ドル ÷ 人民元」です。
アメリカのGDPは年間で10-12月で5.5%、中国は今回の1-3月で4.8%です。分母が人民元4.8、分子がアメリカの5.5です。これを受けて、人民元安がスタートをしているのです。
もちろん、アメリカの1-3月期も注目されますが、これは月末の木曜日に発表をされます。今月の場合は28日で、この数字が中国が上回るのか、アメリカが上回るのかの問題です。
おそらくアメリカの成長は3%程度、5.5を超える可能性は限りなく少ないと思います。となると28日以降に人民元がまた人民元高になる可能性があります。
その辺の日程とドル円を整合させるべきでしょう。
根本的に中国と日本経済の為替構造は同じで、円安になると日本経済が好調になるように、中国も経済が好調になります。ロジック的にはこの論は非常におかしな話になるのですが、ここ最近、日本も中国もそれが常態化をしています。
本来なら日本・中国経済が好調であれば、円高・人民元高が正常な形です。
Next: 黒田日銀総裁が悪い?この円安は典型的な政策の失敗
この円安は典型的な政策の失敗
参考までに日本の10-12月の成長率は、0.7です。アメリカは5.5です。円安基調は分母の円が小さいので理解できると思いますが、成長率の差が4.8で、20%近く円安になるのは、異常です。
つまり、あまりにも政府、日銀が金利差を喧伝した結果がこれなのです。みなそれに同意し、過剰なポジションを構築した。そこにファンドという投機がトレンドに乗った……ということが今回の円安だと思います。
典型的な政策の失敗ですが、相も変わらず、言語不明瞭で聞く気も起きない会見を行う黒田さん。早々にお引き取り願った方がよい、と思います。アジア通貨危機の反省(当時の国際局長は黒田氏)がまったく活きていません。
黒田さんは国際的に有名な金融理論家ですが、やっていることは根性とか気合とかセンチメントの類が多すぎるように思います。パウエル氏と比較すると、手腕の巧拙の差がありすぎるように思います。
どちらにしてもドル円はアメリカGDPまでは円高方向に動くように思います。その後、5月中旬の日本GDPと続きます。全体的な流れとしては中国の好調は続くと思いますので、全体的には人民元安、円高となるのでしょう、と予測をしています。
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- 客観的な事実としてドル円は金利差では動いていない(4/21)
- 資源急落の可能性有。円安も終焉の可能性(4/20)
- 経済ブロック化への危惧(4/19)
- 日銀金融政策決定会合に注意(4/18)
- 自然利子率とマーケット(4/17)
- 円高になると思う(4/15)
- プーチンがいうことが絶対のロシア(4/14)
- インフレはまだまだ進行すると思います(4/13)
- 今年のパフォーマンスは資源になるだろう、大商品の時代がやってくる(4/12)
- 現金の価値が高まる社会(4/11)
- どうやれば侵攻が収まるのか?(4/10)
- なんかおかしいと感じませんか?(4/8)
- バイデンはぼろ負けプーチン勝利(4/7)
- ISM非製造業について(4/6)
- ドル円のおさらい(4/5)
- マーケットはある程度見えている、とは思います(4/4)
- ロシアが西側同盟に楔を打つ、予定通りの行動(4/3)
- やはり転換してきたマーケット(4/1)
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- ドル買いが終わった今後はどうなるのか?(3/31)
- 元に戻ったのだろうか?(3/30)
- 日銀は円安容認なのか?(3/29)
- 円安が支配するマーケット(3/28)
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『角野實のファンダメンタルズのススメ』(2022年4月21日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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