マネーボイス メニュー

今夜の米雇用統計でさらに円安加速か。円売り「3つの要因」と有効なトレード戦略=ゆきママ

先月も「円安が止まらない。10円近く円安が進んだ」と書きましたが、今月もここ1ヶ月で10円近い円安・ドル高となっており、流れは継続しています。それでは、改めて円安の背景と現状、そして雇用統計の展望・トレード戦略について解説していきたいと思います。(ゆきママ)

【関連】米国株式市場は“異常な金融引き締め”に耐えうるか?「先行銘柄」とインフレ・ウクライナ・半導体で読み解く22年後半相場の行方=新天地

日本と海外の金融政策スタンスの差が明確に

前回の記事で、円売りについては以下の3つの理由が大きいとしましたが、最近は特に(3)が材料として目立っています。

1. 平時の円売りがなくなったことで、リスクオフ時に巻き戻しの円買いがなくなった
2. 原油価格高騰による資源国通貨高、日本に資源はないので自ずと円売りになる
3. 中央銀行の政策スタンスの違いにより金利差が拡大、円売り外貨買いの流れが加速

ウクライナ情勢によるリスク懸念は一巡、原油は高止まりですが一旦はピークアウトの兆しもあり、日本と海外の金融政策スタンスの違い、日本と海外の金利差からの円売りというのが強く意識されています。

ちなみに、昨日未明にはFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果が発表され、0.50%の金利引き上げが発表されましたが、パウエルFRB議長が0.75%の利上げを否定したことや、中立金利が2〜3%であるとしたことでドルが急激に売られる場面がありました。

市場が織り込んでいた金利見通しより低いことが示されたことにより、短期金利(2年債利回り)を中心に米国の金利が急低下し、ドル安につながりました。

もっとも、一夜明けると今後もしつこいインフレが続くとの見通しから、再び一段の金利高が織り込まれることとなり、ドル買いが強まる流れとなっています。

やはり世界的には金利を引き上げ、バランスシート縮小といったQT(量的縮小)で金融政策を正常化し、パウエルFRB議長も「必要なら中立金利を上回る水準への利上げを排除しない」としています。

一方、日銀は引き続き粘り強く金融緩和を行い、黒田日銀総裁は「必要があれば躊躇なく追加金融緩和を行う」としていますから、金融政策の方向性は一目瞭然です。

このように、しばらくは日本と海外の政策スタンスが意識され、円安が続きやすいでしょう。

とりわけ、米国のインフレが継続する限り、FRB(米連邦準備制度理事会)によるさらなる利上げも意識されますから、米国のインフレ指標の結果なども頭に入れながらトレードを考えていきましょう。

Next: 気になる先行指標は?再びインフレと利上げを織り込み始めた市場



再びインフレと利上げを織り込み始めた市場

昨日未明の記者会見で、パウエルFRB議長は0.75%の利上げを明確に否定しましたが、市場では再び織り込む動きが強まっており、この背景にはしつこいインフレ見通しがあるとされています。

したがって、本日発表の雇用統計においても、賃金インフレの最も重要な指標となる平均時給が注目されることになりますので、まずはそこをしっかり確認しましょう。これがさらなるドル高、ドル円上昇の鍵を握ることになります。

雇用指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)

先行指標を見ると、民間のADP社が算出している雇用者数が前月から大きく減少しています。この背景には人手不足があるとされ、米企業は思うように採用できていない現状があります。

しかし、雇用者は思うように増えていないにも関わらず、失業率は減少傾向を続けています。これは新規失業保険申請件数が歴史的低水準になっていることからも分かるとおり、失業する人そのものが減少しています。

つまり、企業は新規雇用の困難さから、労働者を温存しておくようになったことを示唆しています。新たに人を雇うコストよりも、たとえ仕事がなくとも給料を払って手元に置いておくコストの方が安いということですね。

なので、非農業部門雇用者数のコンセンサス予想は+39.1万人となっていますが、結果が+20万人といった水準でも全く問題ないでしょう。

これよりも、やはり平均時給、雇用のハードルが上がる中で引き続き賃金インフレが加速しているのかどうかが問われる雇用統計ということになりそうです。

ここ2〜3ヶ月はひたすらドル円の「ロング・押し目買い」戦略が吉

FOMCにおけるパウエルFRB議長がハト派的だったので、ドル円は決定打に欠ける値動きとはなっているものの、底固めを進めてジワジワ上昇しています。したがって、よほど悪い数字が出ない限り、下値は限られるでしょう。

非農業部門雇用者数は事前予想値が+39.1万人とかなり強めな印象。+20万人前後といった下振れとなった場合は、初動こそ押し下げられそうですが、平均時給が前月比で+0.3〜0.4%と予想並の数字なら、普通に押し目として買って良いでしょう。もちろん、予想を上回る+0.5%以上なら上昇が期待できます。

ドル円チャート(日足)

米国経済が停滞、インフレが後退しない限り、金融政策スタンスの差や日米金利差はテーマとなり続けるわけですから、大きな方向性というのは変わりません。ここ2〜3ヶ月はひたすらドル円のロング・押し目買いをしていくことになります。

Next: 今夜の想定レートは1ドル=129.50〜131.20円



今夜の想定レートは1ドル=129.50〜131.20円

再び130.00円の大台節目にからみつく値動きとなっていますので、129.70〜129.80円で押し目買い、129.30〜129.50円で追加といったイメージです。損切りは128.90円でしょう。

上値は130.50円前後が重たくなっていますので、目先の目標はこのレベル。抜けると131.00〜131.20円の高値トライということになります。抜けると135.00円まで見えることになりますから、130.50円を抜けるような値動きになればホールドで。

今回の雇用統計に関しては、非農業部門雇用者数が予想を下回り、平均時給が予想並かそれ以上というのが理想の展開ですね。これで下がるなら喜んで買いたい。

また、平均時給が予想を上回ってくるのであれば、上がっていても上値ブレイク期待で追っかけ買いも可能でしょう。ただ、この場合は130.50円前後で停滞した場合は、さっさと逃げることをオススメします。

いずれにせよ、基本の押し目買い・ロングという戦略は変わりませんので、押し目があればすかさず買いの気持ちで結果を待ちましょうということで。

【関連】米国株式市場は“異常な金融引き締め”に耐えうるか?「先行銘柄」とインフレ・ウクライナ・半導体で読み解く22年後半相場の行方=新天地

【関連】富士通の9割「ジョブ型雇用」転換がもたらす大格差社会。特技を持たない平凡な社員が低賃金に落ちていく=鈴木傾城

【関連】GAFAを超える最新Techをどう見つけるか。「Windows95の父」中島聡 ×「manablog」マナブ 特別対談

image by:Federalreserve at Wikimedia Commons [Public Domain], via Wikimedia Commons

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2022年5月6日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。