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ドル円ピークアウトは近い?米利上げ加速も「日米金利差で円安」が“通用しない”可能性=脇田栄一

ドル円ピークアウトはいつ訪れるのか。5月FOMCでは利上げ加速の方向性が示されたが、「日米金利差で円安」という単調な論理が通じないといった視点も必要になってくる。

プロフィール:脇田栄一(わきた えいいち)
FRBウォッチャー、レポートストラテジスト。1973年生、福岡県出身。個人投資家を経て東京都内の大手株式ファンドでトレードを指南。本来は企業業績を中心とした分析を行っていたが、08年のリーマンショックを経験し、マクロ経済、先進国中央銀行の金融政策の影響力を痛感。その後、FRBやECBの金融政策を先読み・分析し、マーケット情報をレポートで提供するといった業態を確立。2011年にeリサーチ&コンサルティング(現eリサーチ&インベストメント)を起業。顧客は機関、個人投資家、輸出入企業と幅広い。

織り込み済みの米利上げ加速

5月3日・4日のFOMC会合の結果、声明文には事前予想通りに50bpの上乗せが記載された。

議長会見では次回会合(6月会合)での連続50bp引き上げを仄めかし、75bp引き上げを実質上、打ち消した。これはすべて予想通り。

しかし、ここで言いたいのは「6月50bp引き上げに関し仄めかしたものの、明言したわけではない」ということ。「連続50bp引き上げが判明したときピークアウト」とお伝えしたが、事実上明言したという解釈も、たしかに否定はできない。

パウエル議長も半信半疑?利上げは本当に高インフレに効くのか

が、パウエルが6月50bp引き上げに関し、若干の躊躇(検討余地という言葉にとどめている)がみられるのは、繰り返しお伝えしてきたように「政策金利の引き上げが現行の高インフレに本当に効果があるのか否か」という不明があるから。

「連続利上げ・その利上げ幅」と「月々公表されるインフレ率」を照合させることで、効果の程を確かめる。

それが先決。というか、その作業が最重要課題だからである。

個人的にも4月29日のPCEインフレに注目していたが、前月比で緩和どころか1.1%の急騰が公表された。これによって引き締め観測とともに株式は急落した。直近のインフレを観察するときには、前年ではなく前月である。

短期金融市場では現時点で、パウエルの言葉を連続50bp引き上げ、と高い確率で受け止めている。

しかし「検討余地」があるだけで、まずは4月CPIを確認しなくてはいけない。つまり今月公表の4月CPIインフレや4月PCEインフレが大幅軟化すれば、連続50bp引き上げの確率は下がることになる。

Next: 今がドル円ピークになる可能性も



今がドル円ピークになる可能性も

そういう意味で、今がドル円ピークになる可能性はあるし、今後公表されるインフレ率が市場予想に反してさらに上昇していれば、50bp引き上げとともにピークアウトはさらに先……ということになる。

少なくとも、理論的にはそういうことになる。

「日米金利差で円安」を盲信すると危険

ただ、自分が考えているのは政策金利の引き上げだけではなく、バランスシート縮小の問題がある。

これについてもリリースされていたが、償還分の再投資の調整によって縮小していくという。過剰流動性が吸収されていけばリスクオフの円転・円高、つまり金利引き上げで金利差による円安論と、流動性が急ピッチで吸収された場合の円高論の混在で、日米金利差で円安……という単調な論理が通じないといった視点も必要になるということ。

これについては公式リポートでたびたび言及してきたが、この論調は残念ながら目にしたことはない。流動性・巻き戻しのチェックも欠かせない視点だといえる。

債券市場の各年限利回りの考え方など細かいことを言いだせばキリがないわけだが、大まかには上記のような背景が存在する。取り急ぎご報告まで。

image by:Federalreserve at Wikimedia Commons [Public Domain], via Wikimedia Commons

本記事は脇田栄一氏のブログ「ニューノーマルの理(ことわり)」からの提供記事です。
※タイトル・リード・見出しはMONEY VOICE編集部による

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