日経新聞に消費増税延期の記事が掲載されましたが、「将来的に消費税が増税される」という予想の下では、消費が拡大することはありません。何よりも重要なのは、安倍総理が「デフレ下の緊縮財政の間違い」を認め、国民に説明することです。そもそも、総理は2012年6月のご自身のメールマガジンで、「デフレ状況が続けば、消費税は上げない」と書いているのです。
記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年5月15,16日号より
※本記事のタイトル・リード・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです
安倍総理、最悪なのは「間違いを間違いとして認めない」ことです
「消費増税延期」報道のポイント
昨日(編注:5/14付)の日本経済新聞に、「消費増税再び延期 首相、サミット後に表明 地震・景気に配慮」という記事が掲載されました。
ポイントを幾つか取り上げると、まずは「消費増税再び延期」 の具体的な中身です。一年延期か、数年延期か、あるいは「凍結」「減税」にまで踏み込めるか。
ただの「延期」では、現在の停滞状況が続くことになってしまい、消費が回復することはないでしょう。結局、我々日本国民は、
「将来的に消費税が増税される」
という予想の下では、消費を拡大することはなく、むしろ「増税に備えて」預金を増やすのです。(無論、増税直前の駆け込み消費「のみ」はあるのですが)
実際、2014年の消費税増税後、日本国民の消費性向(所得から消費に回す割合)は、75%から72%に下がりました。増税で実質賃金を引き下げられ、かつ「将来、またもや増税」という話では、国民が預金の割合を増やすのも無理もありません。
現在の日本経済は、消費税の増税延期ではなく「減税」最低でも「凍結」が必要な状況です。何しろ、消費税率を5%に戻したとして、それでようやく2013年度と同じ環境になったという話に過ぎません。
また、安倍総理が消費税増税を再び見送った場合、完璧な公約違反になります。当然ながら、総理は説明責任を果たさなければなりませんが、
「2014年度の消費増税が失敗であった」
ことを、明確に認めることができるかどうかがポイントになります。「デフレ下の消費税増税は間違い」を政府が認め、国民に共有されない限り、結局は将来的に「また増税」という話になってしまい、我が国の経済低迷は継続することになります。
政策的な失敗は、もちろん責められるべきですが、それ以上に最悪なのは「間違いを間違いとして認めない」ことだと思うのですよ、安倍総理。
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消費税増税の「延期」では不十分
17年4月の消費税増税は、どうやら最低でも「延期」という話になりそうです。とはいえ、単純に延期するだけでは、「現在の停滞」が延々と続くというわけで、我が国のデフレ脱却への道は見えてきません。
消費税は最低でも「凍結」。その上で、需要を創出する大々的な財政出動を実施する。しかも、単年度ではダメです。藤井先生が書かれている通り、最低でも三年間は積極財政を継続しなければなりません。
加えて、プライマリーバランス黒字化などというナンセンスな目標の破棄。「グローバル」な財政健全化の定義である、政府の負債対名目GDP比率の引き下げに目標を変更する必要があります。
「デフレ下で消費税は上げない」と表明していた安倍総理
そして、何よりも重要なのは、安倍総理が「デフレ下の緊縮財政の間違い」を認め、国民に説明することです。そもそも、総理は2012年6月のご自身のメールマガジンで、
昨日、社会保障・税一体改革関連法案が衆院を通過しました。
3党合意についての私の考え方は、すでにメールマガジンでご説明した通りです。
報道等ではあまり触れていませんが、現在のデフレ下では消費税を引き上げず、法案には引き上げの条件として名目経済成長率3%、実質成長率2%を目指すという経済弾力条項が盛り込まれています。
つまり現在のデフレ状況が続けば、消費税は上げないということです。
しかし、野田総理のこれまでの委員会答弁は、この点があいまいであると言わざるを得ません。
要は民主党政権を倒し、デフレからの脱却を果たし、経済成長戦略を実施して条件を整えることが大切です。
そして、「その条件が満たされなければ消費税の引き上げは行わないこと」が重要です。
出典:安倍晋三メールマガジン(2012年6月27日号)
と、書いているわけです。すなわち、2014年度の消費税増税は、自身の持論(しかも、正しい持論)までをも裏切ったという話なのでございます。
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財政出動では「何」に支出すべきか?
ところで、政府が消費税増税を見送り、財政を拡大するとして、果たして「何」に支出をするべきなのでしょうか。もちろん、ジョセフ・スティグリッツ教授の提言通り、「インフラと技術」に投資するべきです。
あるいは、アイケングリーン教授の言う、
「G7各国政府が真剣に需要を下支えしたいなら、財政出動を考えなければなるまい。財政余地のある国はそれを使うべきだ。金利が歴史的低水準まで下がり、建設的なインフラ投資をするまたとないチャンスを今使わないとしたら、一体いつ使うというのか。(日経のインタビューから引用)」
こそが、まさに正解なのでございます。
というわけで、「建設的なインフラ投資」について、具体的な提案を致したく、三橋は日本文芸社から『最強の地方創生 交通インフラの整備で日本は爆発的に成長する!』を刊行いたします。
ご期待くださいませ。
『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016/5/15,16号より
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